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優しい世界じゃなくたって  作者: 家具付
アイーダ 十六歳
30/33

違うという努力

王様は小さい頃からいつだって私に優しいけれども、それがただ小さな子供を相手にしているからだけじゃなかったのを、私はもう知っている。

神のいとし子の顔を知っている年代の、神殿の関係者の人達が、お城の人達が、私に聞こえないと思って言っていた事実を聞いたからだ。

六歳の私は、いとし子にそっくりだったのだという。髪の毛の色から、目の色から、顔立ちから、何から何まで。そう、性別と性格以外の何もかもが、本当に小さい頃のいとし子様と同じにしか見えないくらいに、私は彼と瓜二つだったのだとか。


「陛下はいとし子様と兄弟のように育った身の上、故にあの少女が懐くのを止められないでいらっしゃるのだろう」


「あの少女の方は銀の目の兄妹、いとし子様と似ているのも仕方がない事だが、とても皮肉な話だ。あの方と同じ顔の人間が、あの方が捨てた場所に戻ってきて、あの方のせいであらゆるものを失った陛下のもとにいたいと願うなど」


「あの少女がいっそ銀の女と瓜二つだったほうがまだ酷くない」


色んな人が、お城でおばあさんにいろいろな教育をしてもらっている子供達と同じように、面倒を見てもらっている私の事をそう噂した。

これに対して何も思わなかったわけじゃない。逆に色々思うところはあった。

しかし、だ。


「世界にはそっくりさんが三人はいるってよく言う。バロに似た赤毛で、バロに似た顔の私なんだから、他の誰か、赤の他人に似てても驚く意味がきっとない」


そう私は割り切った。だって私が水の神様を裏切ったり侮辱したわけじゃない。

それに水のフィブラは私がつついたら、一度だけ雨を降らす奇跡を行ってくれた。

私がいとし子様の関係者だったら、水の神様はそんな優しい奇跡を行ってくれなかっただろう。

坊主憎けりゃじゃないけれど、いとし子様の関係者だったら、一緒になにかの罰を下しただろうし、そもそもフィブラも音を立てなかっただろう。

そんなふうに私は思っている。

しかし、だ。

王様が、私を見る時の目のどこかに、痛ましいなにかが宿っていたのも、私はちゃんと知っている。

私の顔やその他が、彼の思い出したくない過去を思い出すものだったと、私はこれでも知っている。


なんでそれで離れてあげないんだ、というかもしれない。相手が辛い思い出を思い出すと分かっているなら、離れるのも愛ではないか、と。


そんなの私だって分かっている。でも。

あの人を支えたい、あの人の痛みを分かち合いたい、あの人の側に誰も近寄れないというのならば、その目を見ても怖くない私が一番そばに居たい、という気持ちがあるから、私は私の王様のそばにずっといるわけだった。





悲惨な過去の王様はゆっくりと時間をかけて、心の傷を癒している。それは、どんどん生物的に女になっていって、いとし子様とあちこちが変わりだした私を見る瞳が、痛みを覚えた色を薄めていっている事からも真実だと思いたい。

私と王様の出会いは六歳、六歳の子供に生物的な性差が明確であるとは言い難い。

まして私は髪の毛を肩のあたりで切りそろえて、男の子でも女の子でも通る髪型をしていたのだから。

だが私は女の子だから、どんどん成長して女になっていくにつれて、いとし子様と違ってきていてるはずなのだ。

髪の毛に至っては、いとし子様が髪の毛を長く伸ばしていたなんて言う情報を手に入れた時から、私は髪の毛を肩より若干短くまっすぐに切りそろえて、雰囲気がまるで違うようにしているのだ。

いとし子様の真っ赤な長髪は、いとし子様の目印みたいなものだったという。それとまるで違う髪型だから、小さい頃はそっくりだ、そっくりだ、と陰で色々言っていた人達が、最近になってはあまりそういった話題をしない様になったのも知っている。

それに加えて、私はいとし子様と違うように見てもらうために、色々考えながら衣装を選んだり、見た目の印象を変えたりしているわけだった。


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