家族の愛
「祖母が魔法で、ルナを人間にしたんだ。きっと、泣いてばかりいた僕の話し相手になってもらおうと思ったんじゃないかな。ルナも僕のことをずっと心配してくれていたみたいだし。祖母の願いと、ルナの願いとが合致して、魔法が発動したんだ」
魔法は、誰かの願いを叶えるもの。
ルナさんとおばあ様からの愛情に包まれたオーナーは、こうして新しい家族を得たのだ。
「その後もシロ、コハク、クロ……うちに来た猫はみんな祖母の魔法によって人間になった。今思えば、祖母がいなくなった後も僕が寂しくならないようにって、祖母は考えてくれていたのかもしれない」
「優しいおばあ様ですね」
彼らがいてくれたおかげで、今までオーナーは独りぼっちにならずに済んだ。
それに魔法の代償からも、ルナさんはずっと守ってくれていた。
「祖母の魔法は、みんなを幸せにする。だから僕も、祖母のような優しい魔法使いになりたかった。でも僕は……」
そこで彼は口を噤む。
彼はまだ、自分の理想とする魔法使いにはなれていない。
「オーナー……。私からすれば、あなたはもうとっくに優しい魔法使いですよ」
彼にとっては気休めの言葉かもしれない。
けれど、これが私の本心だった。
「ありがとう、絵馬。でも祖母は言ってたんだ。魔法は、魔法使いが意図して使うものじゃない。みんなで起こす奇跡のようなものなんだって。……僕にはまだ、その感覚がうまく掴めない」
そう話しているうちに、私たちは高台にある神社の前までやってきた。
ここ北野の地名の由来にもなっている北野天満神社だ。
境内も探していこうか、あるいは手前の道を曲がろうかと悩んでいると、そこへ幼い子どもたちの笑い声が届く。
見ると、道の角を曲がった所に小学生の集団がいた。おそらくは三年生か四年生くらいの男の子が五人、一台のスマホに群がって騒いでいる。
その中に、一人だけ犬を連れた男の子がいた。リードの先に繋がれているのは、クリーム色の毛を持つチワワだ。
(あれ。あの子は確か……)
チワワと、それから男の子の顔には見覚えがあった。
記憶違いでなければその子は、先日この近くの道で車に轢かれそうになっていた男の子だ。
今日は学校が休みなのか、友達同士で集まっている雰囲気だった。
件の男の子だけは犬の散歩中だったのか、片手でリードを持ったまま会話に夢中になっている。
散歩を中断されたチワワは待ちくたびれた様子で、動ける範囲だけをウロウロとして落ち着かなかった。そのうち、男の子の手からリードがするりと滑り落ちるのを、私は目撃してしまった。
「あっ」
そう反応した時には、チワワは駆け出していた。
飼い主の男の子は未だ気づかない様子で談笑にふけっている。




