表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/31

黒猫の正体

 

「にゃお~~ん」


 黒猫はご機嫌な様子で尻尾を立て、甘い声で鳴く。

 その黄金色の真ん丸な瞳には、酷く見覚えがあった。


「あなた、もしかして……さっきの黒猫ちゃん!?」


 庭先と、それからこの部屋の前で見かけた一匹の黒猫。

 神出鬼没な猫の正体は、まさかのまさかで人間の少女が化けた姿だった——ってこと?


「クロ。あなたという人は……」


 と、今度はルナさんが溜め息まじりの疲れた声を漏らす。

 見ると、彼女は心底困った様子で額に手を当てていた。


 その両脇で、コハクとおじいさんもやれやれという風に肩をすくめている。


「ど、どうなってるんですか? クロが猫になっちゃうなんて……これも魔法なんですか?」


 もはや魔法という存在を認めざるを得ない状況だった。

 人が猫に変身するなんて、魔法以外にはあり得ない。


「見られてしまったのなら、仕方ありませんね」


 ルナさんはそう言うと、いつにも増して厳しい眼光をこちらに向け、つかつかと歩み寄ってくる。


「え……あ、あの?」


 もしかして私、消される? なんて不穏な予感が脳裏を過ぎる。


 ルナさんは私の目の前で立ち止まると、そのままゆっくりと腰を下ろし、絨毯の上に膝と手をついて頭を下げた。


「叶さん。どうか、ここで目にしたことは全て秘密にしておいてください。この通りです」


 頭を床につけるその姿勢は、土下座だった。

 ルナさんが、私に向かって土下座をしている。


「ちょっ、えええ!? ルナさん、やめてください! どうか頭を上げてください!」


 慌てて私もその場に膝をつき、ルナさんの肩を抱き起こす。

 人に土下座をされる経験なんて生まれて初めてだった。


「ルナさん、一体どうしちゃったんですか!? 土下座なんて、そんな……」


「この屋敷に魔法が存在することは、誰にも知られてはいけないのです。だからお願いです、叶さん。ここで見たことは、他の誰にも話さないでください」


 お願いです、と何度も頭を下げる彼女の後ろで、コハクとおじいさんも同じように膝をつく。


「わ、わかりました! わかりましたから、どうか土下座だけはやめてください! 私の心臓が持ちません……!」


 人に頭を下げさせるなんて、気持ちの良いものではなかった。なんだか自分が意地悪なことをしているような、罪悪感のようなものが込み上げてくる。


 私の必死の説得により、ルナさんはようやく顔を上げてその場に正座した。


「……ご覧になった通り、この世には魔法というものが存在します。それは誰にでも使えるものではなく、古くは『魔女』と呼ばれる者たちだけが持つ特別な力でした。ここから遠く海を越えた国からやってきた魔女の一族——その末裔が、そこにいるオーナーなのです」


 彼女は首だけを動かして、ソファの方へ目を向ける。

 私も釣られてそちらを見ると、そこに座っている青年は未だ深い眠りについていた。


 遠く海を越えた国からやってきた、魔女の末裔。

 彼の容姿がどこか日本人離れしているのも、外国の血が混ざっているからだろうか。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ