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5/5

5話/平気だよ

「まあ、私はいつでも平気だよ~。だから一緒に帰ってあげな~太陽センパイ~」


 にへらと笑ってその言葉を言うと、「うへー」って叫びながら豪雨の外を走り去っていきました。多分この雨をみてのことだと思います。でもそれよりも、私は朝日さんが言った言葉に動揺してました。なぜだか胸が縛り付けられたような、そんな初めての痛みにびっくりしたんです。


「こ、古伊崎君、古伊崎君にとうとう彼女さんが出来たんですか!?」


「ばっか!どうやったらそう捉えれるんだよ!」


「だって、でーと、って」


「あーそんなん気にしてんのか。あいつの()()()ってのは、単なる買い物だ。第一あいつとはそんな関係じゃねぇよ。気にすんな」


 痛みに耐えながら聞いたら、意外な返事がきました。言葉でしかないですが、古伊崎君の表情を見るに嘘は言っていないようでしたので、信じることにします。いや、私が無意識に胸の痛みを和らげるために、その言葉を信じたのかもしれません。


「とりあえず、だ。今日は帰るか」


「え、でも、帰りたくないのでは」


「あーもう!相合傘は流石に恥ずかしいんだよっ!」


 急に大声を出すからびっくりしましたが、相合傘ではなくシェアなのですが……同じ意味なんですね。でもそうだとしても私は何とも思いません。今まで一緒に帰っていた仲なのですから、急にそれを変えてしまうのは嫌なのです。


 ですが。


「な、なるほど……私は構わないのですが、その、えっと、本当に嫌なら私だけで帰りますが……」


「嫌とは言ってないから。まあ、なるようになれだ!ささっと帰るぞシュー!」


 さっきの嫌々な感じとは裏腹に、二人で一つの傘に入って帰ることになりました。


 その後もいつものように話が弾みましたが、やっぱり家に付いた時には、胸の痛みがぶり返しました。今まで感じたことのない痛み。実際にはしてませんが、紙をぐちゃぐちゃにしてるような気分。一体なんなんでしょうか……


 そう考えながらお布団の中でくるまって、静かに一人、一日が終わりました。


 でも次の日も、その次の日も。胸の痛みは消えませんでした。朝、古伊崎君にあっても、朝日さんと一緒なことが増えていましたし、なんだか目も合わせてくれていないような。多分自意識過剰気味になってると思うので、古伊崎君の言う通り、頑張って気にしないようにして見ることにしました。


 でもやっぱり、古伊崎君を見てしまいますし、そのたび身体に痛みが走ります。


 私って、何かの病気なんですかね。


 なんて考えてると。


「シュウっち、最近やつれた?なんか今にも倒れそうな気迫が溢れてるぞい?」


「柿崎さん……だ、大丈夫です。平気です。平気なので平気です」


「めっちゃ意味不明なこと言ってる時点で怖いんだぞい」


 思いつめすぎていたのでしょうか、私自身やつれたとか、わからないのですが、柿崎さんに心配の声をかけられました。いつもなら古伊崎君が真っ先にきて声をかけてくるのですが……


「あれ。そういえば古伊崎君は……」


「そういえば見とらんなって、おうおうおう、マジでぶっ倒れ……というか真面目に帰って休め。流石のウチでもこれは心配だわ」


 朝から古伊崎君の姿を全く見てない気がして、立ち上がると突然雲の上にでも立たされたかのような感覚に、思わず座ってしまいます。下を見ると確かに床は存在しているのに、ぐわんと床が揺らいで、身体が沈んだのかと思ったんです。


 何が起きたか自分自身でもわかりませんが、私のこの行動を間近で見ていた柿崎さんは、いつもの変な口調から一変して、滅多に心配しない柿崎さんの口から素の口調で「心配」の言葉が出ていました。


 ただ、その変化と言葉で柿崎さんがどれだけ心配してるのか、私が今ものすごく危なっかしいのか、よく伝わりました。しかしかといって早退するわけにもいかないのですが。


「その、なんどか倒れて迷惑とかかけてますし……」


「なに今更。帰るの嫌なら保健室に直行!真面目にやばいって、顔色悪いし、立った瞬間倒れそうになったじゃん」


 と、柿崎さんに引っ張られて保健室へと歩みを進めます。でも足に伝わる感覚は全くなくて、本当に空中にでも浮いているような気分でした。


 それに倒れそうになったのは確かですが、自分の顔色なんて全くわかるわけがありません。でも考えてみると、以上に寒く感じるときもありましたし、頭も酷くはないですが痛いですし……って、紛れもなく風邪ですね。


 なんて考えてたら私の身体が宙を舞いました。あ、いえ、本当に宙に浮いたわけじゃあないですが身体がふわって浮いたのは確かです。というのも柿崎さんは、女生徒なのですが、何を隠そう怪力の持ち主だったりします。あ、いえ悪口じゃあないんです。柔道部入ったら自然と力がついてしまっただとかで。


 で、その力を使って、自覚できるくらい覚束ない足取りな私を、軽々とお姫様抱っこしたのです。本当、へんてこな口調をわざと使ってるくらいにはおかしな人だと思ってましたが、それでもこういうカッコいいところがあるのは反則だと思います。

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