第36話 かみだから!
※21/12/19 名前修正
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
二人だけでの食事、至福のひと時でした。ウェディングランチは私の大好きなピザだったよ。チーズドバドバ、鳥モモ肉なんかもゴロゴロ入って、そこにトマトソースのいい塩梅。
ウェディングケーキとかは無いよ。花より団子、団子より飯。飯よりえーな。
「・・・んふぅ、えへへ~」
「あ゛~なでなでしちゃうわ」
いつも通り膝上で食事を済ませ、さっきまでの事を思い出しつつえーなに甘えていた。
んふふ、突然だったし私自身も気づかない間に用意されていて、とても嬉しいサプライズだったなぁ。
思い出すだけで気持ちがふにゃふにゃになるよ。余韻と言うか、その場より後で思い出す方がじわじわ実感するね。
ってコートは仕舞ってドレス状態だから、生地が少し薄目な感じがしてえーなとの触れ合ってる感じが――
「んひゃ!?」
「本当音亜ちゃんはふにふにしてるわね~それでいて、ぽっちゃりじゃなくて妖美な雰囲気を醸し出すのはそうね・・・とてもえっちだわ」
「おなかつままないでー」
「ふふっごめんなさい」
んもぅ、えーなの好みだから! 体の肉付きはこのままにしたいって決めたのは私だけどもさ、気にするものは気にするんだよぅ。
チリンチリン
家の中で食後のイチャイチャをしていた時、来客が来たようだ。
この鈴の音は魔道具で、宮殿になった家で来客を知らせる音になっている。
そういえば咲さんは旅館が出来たタイミングでお引越しし始めた様なので、もうこの家には住んでいないよ。
「んむ~邪魔されちゃったわね。まぁ時間は沢山あるし、イチャイチャするのはまた後でになるわね」
「ん、しょうがない」
会話しながら応接室へと向かい到着した。
ガチャ
「「・・・」」
「え、ええと、どうしたのかしら?」
「え、あぁ申し訳ございません! ネア様のお召し物が変わり、印象も変わって美しく可愛らしかったので見惚れてしまいました・・・ ん゛ん゛っ! 伺った理由はネア様、エイナ様。帝国への密偵が帰還しました。その報告を会議場でして、そこから行動について会議を行う予定なのでぜひお越しいただきたいと・・・」
「ふむ、わかったわ。話はそこで聞くことにするわね」
ふむふむ、王国帝国間がバチバチしてたからね。帝国がついに直接的に行動を始めたか・・・
アイリスさんから話を聞いて会議場へと移動した。
まだ建築が完了していない建物達を見まわしながら、会議をする天幕までやってきた。
天幕に入ってみると数人の亜人族幹部が座っており、奥の方には恐らく密偵の人であろう亜人が居る。
「こちらへ座って頂ければ」
「えぇ」
会議場の机は森から取った木で急造された長机で、私達に用意された椅子は上座だね。まぁ二つの席を用意されても私はえーなの上に座るけれど。
入って椅子の方へと進むと、初対面の頃に向けられた畏怖の視線と違ってこの人達も見惚れてる感じ。服装変えるだけでもだいぶ変わるからね。
まぁえーな以外に惚れられても何も思わないし、褒められてもね。私は私とえーなの為だけに着てるのだ。
なんてことを思いながら、椅子に座ったえーなの上に座った。
椅子が余ったことに困ったような顔をアイリスさんがしたけどすぐに持ち直して座った。
「それではもう一度帝国で得た情報の共有をお願いします」
「はっ了解しました! では報告します」
現在も帝国国内に密偵が居て、ここに居るのは伝令役みたいだね。
因みに密偵と伝令役の人は吸血鬼で、一番潜伏しやすいからだそうだ。確かに亜人的特徴は少ないもんね。
報告された内容は、帝国が軍を王国国境線上に集めた事が分かったのと、奴隷の大半が生産労働へと駆り出され、戦奴隷は前線へ連れて行かれ、一部の奴隷は駐屯地へと送られた。現実は厳しいようだ。
そして国内な駐屯している兵士の数が少ないらしく、その伝令としてこの場所に戻ってきたようだ。
もう十中八九戦争起きるよね。と言うかもしかしたら伝令がこっちへ来るまでに起きてるかもしれないしね。
すでにここに居る人達には伝令役によって連絡済みで、その後の行動について会議をしていたようだ。この会議で出した答えを私達へ伝え、最終的な決定をするのを想定していたらしく、今後もこのような流れが基本になるみたい。
まぁ無駄に二人の時間を侵害されるのも嫌だしね。
「私達としては帝国国内に潜入して国内の奴隷を順次解放し、生産力の減った帝国軍を正式に国として、亜人族として戦いたく思います」
「う~んそうねぇ・・・そもそも帝国国内の奴隷解放を目的にしてるのだろうけど、そもそも駐屯兵が少ないとはいえ国防の為にかなり数を残してるはずじゃない? 勝算はあるのかしら? 戦力は少ないでしょう?」
確かに、そもそもここに居る亜人達の人数が戦争なんて言えるような人数じゃないし、女子供全員含めて1軍ぐらい用意できるかもしれないって感じの人数だものね。
ちなみにこの大陸では1軍につき、最小で1000人ぐらいみたいだよ。
「作戦は考えてあります。・・・厳しい面もありますが、事前に破壊工作や妨害工作をして戦闘を最小限に済ませようと考えています。後は解放した奴隷の中に戦える者を護衛にここまで来てもらえるようにと・・・」
「戦力が少ないとはいえ中々厳しそうね?」
「現状私達だけで出来るのはこれ以上ありません。それに勝算が無いわけではないです。事前工作で敵の戦力も抑えられますし、そのまま私達が解放へ向かえば意識もそちらに向き、解放した同胞達も比較的安全に逃がせるはずです」
うーんまぁ、確かに自前の戦力のみでこなす、となると現実は厳しいよね。甚大な被害は避けられない。
でも、それでも、亜人種としての戦いに望む覚悟はしてるみたいだ。歴史の転換期と言うか何というか。
う~ん、きっと私達が手を貸してもね、亜人としての戦いじゃなくなるし・・・
・・・見えない所で支援してあげるのはありかな。
奴隷とか見ていて気持ちのいい物じゃないしね。それこそ戦場に近い慰安奴隷なんて存在してる事だけでも不快。
これは善意ではなくて、私が見る可能性がある事こそ不快になるから、私の心の保全の為に支援をする。いくらえーな至上とはいえ、イチャイチャしてる傍でゲロ吐いたりしてる人が居たら不快じゃん? そんな感じ。
「音亜ちゃん?」
「ん、武器、道具供与、都市戦術演習」
「え? で、でもそれでは・・・」
「前線に近い都市でオートマタの都市戦術演習、被害者、人質の救出演習になる。武器道具程度手を貸すにならない」
「それなら少数の亜人達でも出来そうね? まぁ並々の物を用意しておけばいいわね」
帝国は首都も含めこの大陸内に、3つの大都市に2つの都市を持っていて、その内前線へ近い都市をオートマタで攻撃する。
国民になる人が減るのも困るしね。国って言うのは国民が居ないと成り立たないし。
「それに、戦争をして、国が知れ渡った時、結局私達が居る事が知られる。だから表には出ないぐらいでいい。戦後考察されて神が居たから、なんて言われても表に出て決定的証拠を作らなければいい。後の事は亜人達が頑張る所」
私達が戦場に表立って出てしまえば、なるほど確かに私達が居なければ亜人は奴隷のままだったと思われるだろう。
でも彼らは、ここまで逃げて来た亜人達は、未来で確実に帝国に殴りに行っただろう。結果はどうあれ私達はそこまで重要じゃないと思う。
「失礼します! 会議中に申し訳ございません! 隣国である王国から来客が来ていらっしゃいます!」
会議をしていたら来客らしい。伝えてくれた人が私達の横に片膝をついて報告してくれた。
要するに私達に用がある人達・・・まぁ大体予想は着くけどね。
「アイリス。武器や道具を供与するから頑張って。後、山とか越える予定ならALICEのイージスを連れて行って、黒竜で運んでもらうといい」
「何から何まで、ありがとうございます・・・!」
「ん、戦い自体はアイリス達の努力次第、翌日に物資を渡す。私達はこれから来客に対応するから、物資を受け取ったら作戦に修正を入れて出立するといい。黒竜を使えば輸送速度が上がるから物資への理解も深めておくといい」
「はい、わかりました」
さて、それじゃお客様ってのに会いに行ってみるか。
えーなと共に会議場から出て家へと向かった。どうやら応接室に通してあるみたいなのだ。
宮殿になってから来客対応が楽になったかな? 前の家だと勝手に入られないようになってたしね。今の宮殿はALICE直属が警備してるから良いし、私達のプライベート空間は別にあるしね。
それから門を潜り宮殿に入り、応接室まで来た。
ガチャッ
「来たわよ~どなたかしら?」
「ん、ナタリーちゃん。それに他の子は・・・ふむ、このセットはあれだね。亡命しなきゃ行けないほどか」
扉を潜ったらナタリーちゃんや護衛の騎士やら大臣やらなんやら。あと子供が二人いるけどこれは多分・・・
「お初にお目にかかります。私はレタリス王国で第二王子をさせて頂いております、クルーグ・フォン・レタリスと申します。こちらは第一王女で妹のニーナと申します」
うんやっぱりね。こりゃ王国国内でも何かあったかな。
この場に居る人達はみんな焦った顔をしてるしね。
「あ、あのっ! お母様を助けてください! お願いします、”神様でしょ”・・・?」
「お、おいニーナ!」
「っ! そうです”神とあらば”奴隷を扱うような国など許されるはずありません!」
「”神なら”きっと手を貸してくれるでしょう! あのような国許されるわけが!」
「お前らっ」
ニーナと言う少女の発現を皮切りに大臣も喚き始めた。それを収める少年クルーグ君。この子はきっと状況と私達の本質を理解していそうだね。
「私達にそれをする道理なんてないでしょう? 押し付けるのはやめてくれるかしら」
「そ、そんな!? ”神ならば”許し難いはず! あのような国ですぞ!?」
「”神ともあろうお方”が、まさか帝国なんぞに臆病風を吹かれていらっしゃると」
「そ、そうだ! そもそもこんな子供、”神になんぞ”見えぬ! 神ならば相応の威厳を感じ取れるものであろうに!」
「お前ら、はぁ。なぜ・・・」
クルーグ君が頭を抱え始めた。
王族とはいえ少年レベルの子供には荷が重そうだね。切羽詰まった人間は救いを求め恐れを一時的に忘れる事が出来て、行動力が良くなり集団で動くと集団心理で行動力がもっと過激になる。これがその例かな。
パキパキ......
「私達を神と言うのであれば、その様にする? まだ特別に知的生命体として扱っているうちに説明して上げる。私達からしたら生命なんて等しいの。魔物も、動物も、森を歩くときに見る蟻や虫の類も、お前らも」
私が発言すると周りは狼狽えた。
今神威を出しても恐らくもっと縋るだけだろう。失うものが無いような人間は死すら恐れない。
だから意図して魔力のみで冷気を出し、一部を凍結させる。冷えた空気と私の大きめの声にジト目で底冷えの気分だろう。
ちなみにえーなは殺人欲求を我慢してる。じゃないとレッドカーペットが出来ちゃうからね。
「子供はまだわかる。自分で解決する能力が乏しいから助けを求めるという道理がある。だがお前ら大人、大臣を預かる立場の人間は? 浅ましい人間らしく金をやるから戦ってくれ、それすらいえない愚物になっている」
子供は助けを求めて良いんだ。大人になるまでは救われて、守られるべきなんだ。
だが大人は違う。自分で行動しなければならないし、助けを求めるなら無償の奉仕を期待してはいけない。もう守られる立場ではないのだ。
それに金持ち特有の「金をやるからやれ」も言えないとは・・・そのセリフならギリギリ交渉という枠に入ったけれどね。
それに・・・
「神の役目はこの世界の保全であって、人間の保全ではない。ならば世界保全以外の時は何なのか? それは私達は私達。知的生命体のような物。故に神だからと救う訳もなく、寧ろギャーギャー喚く一般生物が私達の生活を邪魔するならそれらを排除する選択肢がある」
本当に、まだ交渉とかさ、誠実な感じに来てくれたらよかったけど、神だからとかいう理由で来られちゃね。富裕税みたいな事言われても困るよ。
まぁ正直面倒だから私も殺してしまおうかと考えたけれど、国が存在してないと面白くないしなぁ。既存の物が成長していく様とかがいいんだよね。自分で作る物の成長を見たいなら作ればいいもん。
地球でも研究の被検体行きにしたり、海外旅行時は容姿のせいで何人殺したかもわからないから、神の仕事の外で人間的に生きるとなると目の前のこの人達は普通に抹殺対象なんだよね。
まぁどこかで幕引きしないと・・・こういう時穏便に治めるのわかんないから殺しちゃうんだけど。
「クルーグ君。そこの人達は使えないから部屋に送らせる。ニーナちゃんは残っていいよ。グナーデ、あの人達を部屋に連れて行って」
「はいっマスター! では皆様、お部屋へご案内しますので、死にたくなければこちらへ」
とはいえ殺せないし、ここから平和な雰囲気に出来る気しないし、そんなときはALICE統括兼宮殿管理部門(仮称)のグナーデに任せてしまおう。
一部始終話を聞いていたからグナーデも怒っているようだね。因みにえーなは頑張って耐えてた。私が関わってなければ超ハイスペック女社長って感じなんだけど、私に関わったり単純に私と一緒だとね。動揺しがち。
グナーデが丁寧にご案内しに部屋を出た後、応接室に残ったのは空気になって端の方に避難していたナタリーちゃんにクルーグ君とニーナちゃんと寡黙な護衛の騎士さん。
他の侍女とかも全部お部屋行。喚いた人は漏れなく視界から消えて欲しかったからね。
というかナタリーちゃん7歳なのに聡明だなぁ・・・
「もうだいじょうぶですね。ネアさま、えいなさま! おひさしぶりです!」
「ん、ナタリーちゃん久しぶり。元気にしてた?」
「いろいろ、おきるまえは、げんきに、すごしてました!」
「ん、察するに国内で何かあった?」
「はい、じつはこくないにくすぶっていたひが、かいせんとともに、もえあがりまして――――」
避難していたナタリーちゃんが声をかけてきてくれて、舌足らずで一生懸命の発音に場の空気がちょっと和んだね。クルーグ君とニーナちゃんを放置してるけど、事情も聴きたいから早速お話を聞いてみよう。
フィリア帝国万歳!エイネア万歳!今回は今節イチャイチャ収め回
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