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4話

 お母様が「まぁ」しか言わなくなって2日経った。言語も取り戻し始めてからは愛でて愛でて愛でまくってもらいました。流石にあんな笑顔の手前義理とかお世辞とは思えなくなってきた。もしかして本当に私の事娘と思ってくれているのだろうか…?

 さて、一昨日お母様の言っていた通り商人さんとお針子さんがやってきた。どちらもお抱えらしく結構フレンドリーな様子である。



「まぁまぁエレオノーラ様。そちらが例の…?」


「えぇそうよ。メアリージュン、ご挨拶なさい」


「あ…め、メアリージュン・アルディアーナです。その、ドレス…楽しみにしています」



 なんとなく恥ずかしくてはにかむと商人さんとお針子さんがでれっと破顔した。



「まぁまぁ…!ロゼリアお嬢様とはまた違った可愛さがありますわぁ。わたくし、エレーヌ・ブラムと申しますわ、メアリージュンお嬢様。どうかエレーヌとお呼びくださいな」


「まるで孫が増えたようじゃのぅ…儂はガスパール・ブラムですじゃ、メアリージュンお嬢様。ご自由に呼んでくだされ」


「…エレーヌ、と、ガスパール…お爺様?」


「ふふふふ、なんて可愛らしい…」


「ふおおおお…」



 ころころ笑うエレーヌにガスパールお爺様が奇声を漏らしている。そのガスパールお爺様の裾をちょんちょんとお姉様が引いた。



「私も可愛いわよね、ガスパール?」


「もちろんですともロゼリアお嬢様!ふほほほ、どちらもとてもとても可愛らしい!」


「ふふ、それじゃあそろそろメアのドレスの話をしましょう?」


「あぁ、そうだな。ではまずエレーヌ」



 お父様がエレーヌに声をかけるとにやりと笑みを浮かべた。



「ふふふ…さぁ、こちらの布からお選びくださいな。ご要望が白い布とのことでしたので、こちらを」



 どさりと置かれたのは様々な質感の布。光沢を放っていたり、うっすらと模様が入っていたりと様々。お母様はそれを見てほぅ、と息を漏らして楽しそうに呟いた。



「ふふ、選び放題ね」


「これ素敵ね!」


「ふむ…」


「これなんてどうでしょう?」



 お母様、お姉様、お父様、エレーヌが私抜きできゃいきゃいとはしゃいでいる。どうやらガスパールお爺様はそれを眺めているだけで口は出さなかった。私は特にセンスに自信もないので口を出す気は無い。



「……ガスパールお爺様、ガスパールお爺様はドレスのお話しないの?」


「メアリージュンお嬢様こそご自分のドレスじゃろう?」


「…センスに自信がないの。だからお姉様達にお任せするわ。ガスパールお爺様は?」


「…ドレスにはどうも疎くてのぅ。服飾品はエレーヌに任せ切りじゃ」


「…私も、お姉様に任せきり」


「お揃いじゃのぅ…」


「うん…」



 2人でなんとなくしょぼんとしながらお菓子をかじっているとぁあっ!とお母様とお姉様が叫んだ。どうやらざっくりと決まったらしく、エレーヌがデザイン案を何枚か描き始めていた。



「メアリージュンお嬢様は確か鈴蘭だったかのぅ?」


「うん、お姉様を助けるの」


「………ほぉう、それはそれは…楽しみじゃのぅ」



 ガスパールお爺様は顎を撫でながら、それを聞いた瞬間おっとりとしていた金色の瞳をにぃ、と歪めた。楽しそうで何よりである。



「陰ながら応援させてもらおうかの」


「ありがとう、ガスパールお爺様」



 ふたりでにっこりと微笑み、ふとお姉様の方を向くとお姉様がこちらに駆けて来た。どうやら決まったようで羊皮紙と布を持っていた。



「メア、決まったわよっ!生地はね、このシルクっていうつやつやの布を使ってね、ベルラインで…ここのね、胸元に鈴蘭の花飾りをつけるの。」



 お姉様の小さな指が私の左胸を指さす。そのまま下まで指を滑らせた。



「それでね、ここに鈴蘭の茎に見立てたリボンを垂らすんですって。きっととっても可愛くて綺麗よ」



 そう言って差し出された羊皮紙を見るととても可愛らしいドレスがそこには描かれていた。スカートが大きく膨らんで裾は少し沿った鈴蘭の花のような形になっていた。ぱっと見た感じ鈴蘭の妖精の様で、私がこれを着てはたして似合うのかとなんとなく恥ずかしい気がした。お姉様がそれに気がついたのかきゅっと私の手を握った。



「大丈夫よ、必ず似合うわ。だって私の妹だもの」


「…そうですわね、お姉様」



 ふ、と胸が温まって安心した。改めて絵を見るとお姉様とそっくりな見た目なんだから似合うんじゃないかと思えた。羊皮紙と傍にあった鏡を見つめ、服のデザインと自分を合体させるとなかなかいいのではないかと思うとへらと頬が緩んだ。



「それでは仕立ててまいりますわ。2、3週間ほどお待ちください」


「楽しみにしているわ」


「御期待以上のものをお作りするとお約束します」



 エレーヌが自分のスカートをつまみ軽くお辞儀をする。ガスパールお爺様も隣で頭を下げると部屋を出ていった。



「3週間後が楽しみね」


「はい」



 3週間後までに作法やなんか、覚えなくちゃだ。きっと大変だろうけど、なんだか楽しみでしょうがなくて自然と笑顔になった。

ベルラインとかのふっくらしたドレスの形がとてもすきです。あとエンパイアドレスも好きです。

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