たかしちゃんとバドミントン部
……あ、こんにちは。どうもです。たかしです。ついに今、ホームルームが終わって放課後になってしまいました。今から運動部の部活体験です……。で、でも、昨日も頑張れたんだから、今日だって……はーー。っふうーー。
「たかしちゃーん、どこからいこっか! 楽しみだねえ運動部!」
「あう、そ、そうかな…私運動得意じゃないから……」
「まあまあ、私がついてるからさ! それよりどこからいこっかなあ。バスケ部も良いしー、バレー部も良いしー、ドッジボール部でもラクロス部でも良いなあ。ここはまず柔道部ってのも良いねえ。あ、そうか、弓道部もあるのか、薙刀部もかっこいいしなあ。あえての枕投げ部も悪くないねえ」
うううう、多い、きらなちゃん多いよう。えっと、その部活を全部体験するのかな……体力的にも無理だよきらなちゃん。あ、でも枕投げ部はちょっと楽しそうかな。
「きらなちゃん……」
「ん? あー、まってまって?今行くとこ考えてるから!早く行きたいよね!」
「うう、そうじゃなくって」
「なに?」
「枕投げ部って、何するのかなーと思って…」
「枕投げ部? 枕投げ部はねえ、みんなでパジャマを着て、布団に入っておしゃべりするの。授業のこととか、先生のこととか、好きな人のこととか、家でのこととかね。そんで、顧問の先生が手を叩いたら枕投げが始まるの。いつ、どのタイミングで叩かれるかわかんないからちゃーんと気を配っとかないと出遅れちゃうよ」
「そ、そうなんだ…」
思ったよりもハードそうでした。
どうしよう。今日私体が動かなくなってお家帰れないかもしれないよう。
「まあ、枕投げ部は珍しいか。うちの学校は体育祭であるよ、枕投げ。体育祭は一日がかりなの、枕投げは夜にするんだよ」
あうう、体育祭……。今日が終わってもまた次がありました……。
「でも体育祭は九月だからね、今日はまず枕投げ部行っとく? 体育祭で勝つために!」
うう、やだなあ、枕投げに勝ち負けがあるのかな…やだなあ……。こ、断っちゃダメかな…。
「枕投げ部は、いい、かな…」
「えー? そう? んー……。あ、そっか!一発勝負がいいんだね!じゃあ枕投げ部はやめにしよう!」
にゃ、あ、あれ?断れました!
このままもしかしたら全部断れるかもしれないです!よーし!
「じゃあとりあえずバドミントン部行こっかなー、バレーボールかバドミントンどっちが良い?」
「えっと、どっちもあんまり…かな」
「えー! どっちかだよ! もー、じゃあバドミントンね。まったくたかしちゃんはー」
うう、ダメでした……。で、でもバドミントンはバレーボールよりも怖くないかな。羽に当たったことはないけど、ゆっくりだし。がんばれ私!
「ちょっとちょっと、ハンドボール部は? 昨日来るって言ってたでしょ!?」
あ、ここちゃん。こ…。
「ちゃんと行くって! 準備もあるでしょ? ゲーム始まった頃に行くからさ!」
「ここちゃ…」
「そっか、じゃあまってるね!」
ん。あう、行っちゃった。あいさつ出来なかった。ハンドボール部も行くのかあ。大丈夫かなあ私の体…。
「さーて、今日は歩いて行こうね、昨日こけちゃったから」
「う、うん…」
きらなちゃんは優しいなあ。くすん。頑張ります。
----------
「じゃあ、そっちに女子の更衣室があるから、そこで体操服に着替えてきてね」
「はーい」
あれれ。
「着替え終わったらそこのラケット使って良いから」
「はーい。よし、たかしちゃん、着替えにいこっか。 ……あれ? たかしちゃんどうしたの?」
「速い」
「バドミントンだしねえ、こんなもんじゃない?」
速いー!速いよう!
私の知らないバドミントンです!
バシンバシンビュンビュンって鳴ってるよう。私の知ってるバドミントンはもっとふんわりふんわりしてるもん!
ううう、どうしよう、こんなのもし当たったら死んじゃうよう。
絶対できないよう、無理だよう、きらなちゃーん!
「きらなちゃん、私ちょっと見てるね。流石にいきなり入ってもできないと思うし」
「そ? じゃあ先に着替えとくね?」
よーし、こうなったらしっかり見て目をならそう。どうやって動いてるのかもちゃんと見れば私にだってできるもん!
ビュンって、速いなあ。
うーん。
そこはキュキュキュって動くのかあ。
うんうん。
初めはふんわりなんだ。
うう、速いなあ。
「さってと、私もやろうかな! お願いしまーす!」
「お願いしまーす」
あ、きらなちゃんだ。スポーツ用の髪型にしてる、可愛いなあ。きらなちゃんはポニーテールにしたら大人っぽくなるのいいなあ。
わあ!すごい!きらなちゃん打ち返してる!
あんなに速いのに、すごいなあ!
可愛くてスポーツもできて、なんだかずるいなあ…。
「たかしちゃん! 着替えてきなよ! 楽しいよ!」
「う、うん」
うう、よ、よーし。たくさん見たからもう大丈夫だもん。
きっときらなちゃんみたいに出来るもん!
あ、私運動部の更衣室って初めて入ったなあ。なんだかいいなあ。
天文学部には更衣室ってあるのかなあ。
お星さま見たいなあ。もう少しで七夕だけど見れるのかなあ。曇らないといいなあ。
ああ、やっぱり速いなあ。大丈夫。私にだって。
「よーし、じゃあたかしちゃん交代ね」
「お、お願いします」
「じゃ、いきまーす」
ふんわり!よーし!
「えいっ!」
あれ?あれれ?
羽どこいったんだろ。あれれ?
「えっと……高橋さん……」
「たかしちゃん後ろ後ろ、空ぶってるよ」
あ、ありました。私の二歩後ろあたりに……。
「えっと、じゃ、じゃあ高橋さんからサーブお願い」
えっと…サーブ……?
「あ、え」
「最初に打つってことだよたかしちゃん」
あ、ふんわり!
さっきは急に来たからあわてちゃっただけだもん。
今度は自分で打つんだから大丈夫だもん!
「えいっ!」
あれれ?
今度は私の足元に。
「えいっ! えいっ!」
にゃううう、一回も当たりません。うう、出来ないよう。
「高橋さん、ちゃんと羽を見ながら打って見て?」
「そうそう、たかしちゃん打つ時目をつむっちゃってるよ。ちゃんと見て、こう」
くすん。見る…。
「ここから、こう、おっけー?」
「う、うん」
きらなちゃんが手取り足取り丁寧に教えてくれました。
「ていうかたかしちゃん、たかしちゃんが転校してきて初めての体育の時から気になってたんだけど、リボン外した方がいいんじゃない?。そんなおっきいリボン頭についてたら動きにくくない?」
確かに、走ったら揺れちゃうし落っことさないか心配になります。
「で、でも、なんだか外すのはずかしいから……」
「大丈夫、シュートいないから気にしなくて良いって」
なんで阿瀬くんがいないと大丈夫なんでしょう。
「今くらいは外しても良いんじゃない? 動きづらいんだしさ」
うう、どうしよっかなあ。でもせめて一回くらいは打ちたいし……。
「よ、よーし。じゃ、じゃあ、はずそっかな」
はうう、はずかしいよう。
「はーーー! かわいい!! リボンなしのポニテたかしちゃんもかわいいい!!」
ふにゃあ。
「き、きらなちゃん、今はなでなで禁止です!」
「ちぇー」
きらなちゃん、今はです、今は。
「じゃあ、このリボン落っことしたらダメだから私がつけとくね。よいしょ、えー、ここに通して、ここで留めて……どう?」
「にゃああ、可愛い! きらなちゃんが私のリボンを、ていてい、せっかくの入れた気合いが抜けちゃうでしょ! ていてい」
「あはは、ごめんごめん」
「ちょっと二人とも、いつまでイチャイチャしてるの? はいはい、きらなコートから出て!」
「あはは、たかしちゃんが可愛くってつい。じゃあたかしちゃん。がんばれ!」
う、こ、今度こそ。
「こうだからね!」
「うん」
こうやってこう。よし、大丈夫。気合いも入れたもん。出来る。きらなちゃんにも教えてもらったし。
きらなちゃん可愛いなあ。
だめだめ、集中して、羽を見るの。
ずっと羽を見て目を離さないで。こうやって…こう!
「わっ」
あ…。
「当たったー!!」
わあ、当たった!打てた!やったあ!!
えへへ、きらなちゃんが喜んでくれてる。それにバドミントン部の部員さんもみんな拍手してくれて…。
にゃう、なんだかはずかしいです。
「すごいね高橋さん!」
「よーしよしよし、やればできるじゃないかね!」
「えへへ、当たったよきらなちゃん!」
「よしよし、もう一回やってみる?」
「うん!」
よーし、もう一回。
羽を、みて、こうやって…。
「えいっ!」
あれ?今打った羽が足元に……。
「えいっ! えいっ!」
うええ、当たらないよう。さっき当たったのに!
「当たってないけどかわいいからゆるす!」
「うう、きらなちゃん……」
ううう、可愛くもなくて、スポーツもできません。きらなちゃんはそう言ってくれるけど、きらなちゃんは優しいから…ううう。
「まあまあ、そんなにすぐ出来るようになるものでもないしさ、たかしちゃんは見学してて」
「うん……」
嫌だった部活体験が、なぜか今出来なくて悲しいです。
「ちゃんと見て勉強するんだよ!見学なんだから!」
うう、ようし、ちゃんと見て、可愛いは無理だけど、スポーツのできる人になります!
がんばれ!がんばれ私!!




