たかしちゃんと遊戯部
「んーーあーーー! できないいー!!」
「違う、そこはこう」
「あーもううるさい!知広は取材するんでしょ!?取材はどうしたのさ!?」
「もうメモ取りましたよ、きらな先輩はパズルが苦手。パズルをすると半狂乱になる。と」
「なによ!こんなのちょちょいってできるわよ!こうやってこうやってこうやって、ああーー!!なんでいつもここはこうなのさ!!」
「ふ、二人とも、ちょっと、喧嘩、二人とも……」
あう、たかしです。今は、えっと、遊戯部の扉のおっきなスライドパズルを二人が解いている所を後ろから見ているところです。
「だから、こっちを移動させてですね」
「ほら、それだと絵がそろってないじゃないの!こっちがこうでしょ」
「きらな先輩こそできてないじゃないですか! あれ? そういえばたかしちゃん先輩は?」
「そうか、ふふふふふ……」
あわわ…。きらなちゃんがじりじりこっちに来るよう…。
「みつけたわよたかしちゃん……」
あわわわわ……。か、隠れてないよう。
「さっ!」
「うにゃっ!」
「わっ、肩に手を置いただけでしょ。びっくりした」
「だってきらなちゃん目が……。叩かれちゃうかと……」
「なんでたかしちゃん叩くのさ!違うよ、隠れてないでパズル手伝って!って言いに来たの」
「うにいい」
とっても怖かったです。だって目が、目がギロリって……うにい。
「あのパズル全然出来ないのよ、知広は役に立たないし…」
「きらな先輩だって全然出来ないじゃないですか!」
「ほら、すぐ人のせいにするしさー、たかしちゃん助けてー」
めずらしくきらなちゃんに頼られてます……!なんだか元気が出てきました。
よーし!
「うん! 頑張る!」
「やったあ! ありがとう!」
それにしてもおっきなスライドパズルです。
「えーっと。ここはーこうでー」
うんうん、これなら出来そうです。
「こっちがこうで、こっちがこっちで……」
だんだん出来てきました。なんの絵だろ……男の人?
「それで、ここがこうでー、これをこう!」
「おおー」
「おおー」
『ガチャン』
「できた! きらなちゃんできたよ!! ……だれ?」
「すごーい!! たかしちゃんすごーい!!知広とは違うねえ!! やったやった!」
「おお! たかしちゃん先輩やりましたね!!きらな先輩とは違いますね!!」
「なによ知広、私に何か文句でもあるの!?」
「きらな先輩こそわざわざ自分の名前出すのやめてください」
「わー、きらなちゃんも知広くんも、やっと開いたんだから喧嘩しちゃダメです!ていてい」
「あたっ」
「いてっ」
「仲直りしてください」
「ご、ごめん…」
「も、申し訳ありません…」
「よろしい」
えへん。またお姉ちゃんになれました。
それで、このスライドパズルに描いてある男の人は誰なのかな。
「きらなちゃん、この人は誰?」
「ん? あー、こいつは遊戯部の顧問の先生。まーたこんなに自分を美化したイラスト使っちゃってさ、たかしちゃん、期待しちゃダメだよ? こいつこんなにかっこ良くないから。こんなに髪さらさらじゃないし、だいたいこんなに目デカくないし。…まあいいや、じゃあパズルも解けたことだし入ろっか。」
「う、うん」
えっと、どんな先生なんだろう……。
「あ、忘れないうちにメモを取っておかないと…たかしちゃん先輩はパズルが得意……っと」
「たかしちゃんの良い所ちゃんと書いたわね?? じゃ。」
『ガラリ』
「おーい!部活体験させろー!!」
「わあ!きらなちゃん、そんな言い方先生に失礼だよ」
「…………」
あれれ?返事がありません。お部屋も暗いし、誰もいないのかな……。あ、でも奥の方でぼさぼさ頭の先生?がぼんやり光っています。
「おい勝博ー!!部活体験させろー!」
やっぱり先生だったみたいです。光ってたのはパソコンの画面でした。それにしても、きらなちゃんがこんなに近くで呼んでるのになんで聞こえないんだろ?
「……あ、お前、そこじゃないだろ、なんで今、おい」
「くおら!!部活体験だって言ってるでしょ!!」
ああ、そんなに勢いよく椅子引っ張ったら……。
『ガッシャーン!』
「いってえ!!誰だ?瞳か?」
「違うわよ!きらな!」
「なんだ、きらなか…じゃねえよ、なにするんだよ急に」
わあ、背が高いなあ、きらなちゃんの言う通り、パズルの人とは全然違いました。
髪はぼさぼさでお目々細いです。というよりもメガネかけてます!あ、でも鼻は同じ……なのかな?
「……あー!!」
わわっ!
「なによ!たかしちゃんがびっくりするでしょ!?」
あう、びっくりしました……。はずかしい……。
「お前、三日も寝ずにやって手に入れた鍵だったんだぞ! 見ろ、死んで復活もし損ねてるじゃねえか…うおお、またやり直しかよ……」
「いいでしょ、どうせ仕事しないんだし。そんなことより部活体験したいんだけど」
「体験ったって、お前一年の時は部員でもないのにたまにいただろ。今更入る気になったのか?」
「ちがうちがう、私じゃなくてたかしちゃん! 今部活何にするか決めてるところなの」
「あー、男児から聞いたわ、転校生だって? ゲーム好きなの?」
「あう、えっと、その……」
「扉のパズルはたかしちゃんが解いたのよ!」
「まあ、お前じゃあ無理だろうな。いっつも誰かが入ってくるときについてきてたし」
ふふふ、きらなちゃんかわいい。
「で、ゲーム好きなの?」
「う、えっと…パズル……とかなら」
「よし、合格。入部して良いよ。それにしても今年は多いな…」
えっと、許可もらっちゃいました。
「違うって!! 体験しに来たの! たかしちゃんは天文学部に入るんだから!」
あれ?きらなちゃん?
「部活するために体験しに来たんだろ?」
「そうよ! でももう部活は決まってるの!」
「……よくわからん。じゃあなんで体験してるんだ? てっきり、ここの入部を迷ってるから体験しに来たんだと思ったんだが」
確かに、なんで体験なんてしてるんでしょう……。
「そりゃあ、楽しいからでしょ!たかしちゃんといろんなことしたいの! だいたい先輩卒業したから今部員ゼロでしょ。そんな所にたかしちゃんはあげられません!」
「まあいいや、部員いるぞ? 今年一人入ったんだよ。一年の網牙瞳。このネットゲームも瞳に進められたんだよ」
「網牙なら同じクラスですよ、いつもひっそりしてて女子からは結構いろいろ言われてるみたいですけど、男子からは密かに人気みたいです。可愛い上に、む、えっと、発育がよくて。まさか遊戯部に在籍していたとは。これは良い記事が書けそう…」
「そうだろうそうだろう、うちの瞳はその上声も可愛いときた。たぶんほとんど聞いたことないだろ、お前新聞部か? それならそれも書いてやってくれ。あとあいつの作る菓子はうまい。これも重要」
「わかりました」
「っていうかえっと、だれだ?」
「新巣知広です」
「知広、たまには瞳と喋ってやってくれよ。あいつ人見知りだからなかなか友達できないって。まあ、そんなことは言ってなかったけど、そうなんじゃないかと思うから、頼んだぞ」
「え、え、は、はい」
瞳さんどんな人だろう。ちょっと見てみたいな。お話は、どうでしょう。
「わたしも話しかけてみるよ!! たかしちゃんも一緒に行こうね!」
「あう」
が、がんばります。
「よし、じゃあなんかするか?」
「んーん、私たちはここのお菓子食べてるから勝博は勝手にゲームしてて」
「ああ?またかお前、久しぶりに来たと思ったら…ったく。じゃあ食べたら帰れよ、さ、俺はゲームの続きを……鍵……くそ」
あ、もうヘッドホンをつけてゲームを始めました。本当に食べて行って良いんだ。えっと、勝博先生?優しいです。勝博って苗字かな?
「きらなちゃん、勝博って苗字?」
「ううん、勝博は名前、苗字は鳥羽。鳥羽勝博。実はね、あいつここの顧問しかしてないの。というよりも、ここに住んでるんだよ」
「えええ!?」
「ほんとですか??」
「ほんとよ、ほら、そっちのドアがお風呂、こっちのドアがトイレ、あっちのドアがキッチンになってるの」
よく見るとドアがいっぱいありました。お部屋が暗くて気付きませんでした。
「わ。本当です!ここお風呂です! あ、こっちはトイレ! ここはキッチン! すごい、これは今日一番のニュースです」
「たかしちゃんはどうしたの!」
「二番目です」
「一番にしなさい!」
「き、きらなちゃん、わざわざ一番じゃなくても、恥ずかしいよう」
「そ、じゃあ二番でも良いわ。あ、あとね、勝博はね、働いてないけど、大金持ちよ」
「えええ!」
「ほんとですか??」
「あいつずっと賭け事でお金稼いでてね、そんで理事長先生にそんなにゲームが好きなら顧問やってくれないかって誘われて遊戯部の顧問やってるの。理事長先生とは昔からの友達なんだって、こんなにかっこよくないのになんであんなにかっこいい理事長先生と友達なんだろう」
あ、きらなちゃんの天然攻撃です。でももう鳥羽先生には聞こえてないみたい。
「遊戯部……まだまだ色々ありそうですね……これは取材を続けないと」
「ふーう、食べた食べた。もう今日は良いかなー疲れちゃったし。理科部はもう良いや。たかしちゃんお疲れ様!」
あれ?気がつけば部活体験ももう終わりみたいです。ふう、色々あって疲れました。でも終わってみると楽しかったなあ。
「じゃ、次は明日の運動部ね!!」
ふにい、忘れてました、終わったのに、やっと終わったのに。
「本当に明日も?」
「そうよ、明日は体育もあるしちょうど良いわ!」
「ふにい」
『キーンコーンカーンコーン』
「あれ? もうそんな時間? じゃあ結局理科部は無理だったね」
長老さんが下校時刻を教えてくれました。
「じゃ、勝博、私帰るね」
「…………」
鳥羽先生には聞こえてないみたいです。
「かーつひろー!かえるねー!!」
「うわっ!耳元で叫ぶな! 今度はなんだ?」
どうやら聞こえない原因はあのヘッドフォンみたいです。
「帰るの! また来るからね!」
「おお、そうか、気をつけてな」
ふふ、すぐゲームに戻っちゃいました。
「あ、お前らも気をつけて帰れよ」
こっちは見ないけど優しいです。
「たかしちゃん、知広、バイバイ!また明日ね!!」
「きらなちゃんバイバイ! えへへ」
「じゃあ自分も。たかしちゃん先輩、今日はありがとうございました。記事楽しみにしていてください。ちゃんと書きますから」
ふにい、はずかしい…。
「それでは」
「ばいばい……」
ふう、さて…と。早く帰らないと先生に怒られちゃいます。
うう、明日は運動部か……考えない。考えない。ううう。




