Scene1-12
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「町の様子、ですか?」
食事も終わり、明日の行動を決める為に僕とジョーはルミーレさんに町の様子について尋ねることにした。昨日は森の中で一泊したし、ログアウト中に何かあったかもしれないし。
「はい、噂話とかでも良いんですけど。何か耳に入ってきませんか?」
しばらくん~と目を閉じて考えているのは、何か思い出しているのかな?でも目を閉じたままお皿を洗うのは止めて欲しい。
「今この町で良く聞くのは宿がパンクしそうなのと薬の品薄位ですかね。宿の方はどうにもなりませんし、3人に関係ありそうなのは薬の方でしょうねー。」
ちなみにリィーナはこの場にはいない。
ご飯を食べた後直ぐにお風呂に入ると言って走っていってしまった。しばらくジョーは動きたくないと言っていたのに、同じくらい食べてたリィーナは何であんなに動けるんだろう。
と、今は薬の話だっけ。
「ここに来た時も同じ話を聞きましたね。場所は訓練施設でしたけど、値段が上がっているとか。」
「今まであなた達みたいな人って少なかったんですよ、だから怪我の薬ってほとんど兵隊さん用で、お店にはそんなに置いてなかったんですよねー。」
「それじゃあ、ルミーレさんとか町の人が怪我した時に大変なんじゃ?」
「そんな大怪我はしませんから。擦り傷とかならペーストにした薬草を塗っておけば治りますし。」
軟膏みたいなものかな?良い事聞いたかも、一回作って見るのもいいかもしれない。
「だからお店の在庫って多くないんですよ。でも兵隊さんには備蓄として数が必要なのでー。」
「ある程度数は作るけど、俺達にまで流れる量はそんなに無い、と。」
そりゃ僕達みたいなぽっと出の旅人よりは、この町の為に働いている人たちにそう言うものは優先するよね。ある程度配慮はしてくれてるみたいだけど、いきなり数万人も来たらそりゃ足りないよ。
「量を増やそうにも作り手が少ないし、買うと高くつくそうですよ?作り手以外にも材料が足りないんじゃないかって話も出ているそうでー。」
話しながらカウンター裏でごそごそと何かをしている。引き出しから何かを取り出して――紙?
「薬の材料を納品して貰えるようにと、町長から各宿屋に依頼を手配したそうです。これがその依頼書ですねー。」
はいどーぞ、とカウンターに依頼書を置いてくれた。普通こういうのって掲示板みたいなのに貼って置くんじゃないの?
「うちには貴方方しか来ていませんから。居ないのに貼っても誰も見ないでしょ?」
当然のように寂しい現実を言わないでください!と言うか何でお客さん増えないの?呼び込みとか宣伝とかしてないんですか!?
「薬草10個からで1束納品で200bel、ポーションなら1個からで80belで買取か。」
意外と薬草の買取価格が高い。普通にお店の買取だと1個10belだったから、単純に2倍で買い取ってもらえるみたい。ポーションは店売り100belだから損に見えるけど、そもそもポーションを作る人たちって材料も自分で揃える人だと思う。そう考えるとお小遣い稼ぎにはなるんじゃないかな?
「どうする?」とジョーが目でこっちに聞いてくるけど、僕らがやる意味無いよね、これ。それに初日は絶対に大勢が押し寄せそうだし。って待てよ、これってどこで依頼の報告するんだろう?
「基本的に、この町では依頼を受けた宿で報告になりますねー。西にあるここより大きな町ですと、組合があるのでそちらで手続きになると思いますけど。」
あ、ここだと宿屋で報告できるんだ。手間がかからないからありがたいけど。
「で、します?このお仕事。」
遠慮させていただきます。
「まあ強制じゃないのでかまいませんけどね。その関係で、しばらくの間ポーションは購入制限があるそうなので注意してくださいね?一日にお一人様10個まで、それでも足りないと思いますけどー。」
この状況は何とかしたいけど、現品を買い付けするだけじゃ駄目だと思う。でも人手も材料もないならそれも仕方ないか。まあ、ポーションの購入制限は関係ないのでスルーで。
「明日は一日使ってのんびりと準備でどうかな?」
採ってきた薬草はある程度ポーションにしておきたいし、武器だって修理するなら時間が必要だ。リィーナの武器もどうするか聞かないと。ただ服だけは買い替えか誰か修理できる人を捜さないと駄目かな、材料が無いので僕じゃどうしようもない。
「急いで生きても良い事有りませんよ?一冒険終えたのなら、お休みしては?」
「つまりお金を寄越せと。」
「いえいえ、続けてうちをご利用してもらえればなぁ、と言う独り言です。」
あんな出会いでも店主、ちゃっかりしてるなあ。
まだこの辺に居るのは確定なので、延長で1週間分の560belを払っておいた。うーん、お金稼ぎも考えないと駄目だね。このままじゃ収入が無いから手持ちがなくなっちゃう。
「はふぅ~。気持ち良いぃ・・・・・・。」
リィーナがお風呂から上がってもジョーはまだ掲示板を調べると言ったので、僕は先にお風呂をいただいている。宿屋のお風呂は内側から施錠が出来るので、僕は全部脱いでお風呂に浸かることにした。大浴場とは決していえないけど、それでも4~5人位は一緒に入れる広さはあるみたい。まあお客さんは他に居ないけど。利用料は10belで良いといわれたけど、この世界でのお風呂の相場が良くわからない。パン1個の値段から考えると安そうだけど。本当にこの宿採算取れてるのだろうか、お店を続ける気が無いの?
「はぁ~、コレが一日に何回も味わえるって言うのは、良い点だねえ。」
身体を洗おうとして気付いたのだが、普通にシャンプーが置いてあった。しかも現実でも良く見るメーカーのものを。ヘルプを読んでみるとタイアップ広告として導入していると言う。石鹸で髪は洗いたくないし、洗わないのも落ち着かないから良いんだけどさ。色々な種類が選べてちょっとテンション上がったのは内緒。
リラックスした気持ちのまま、頭の中では明日の予定を組み立ててみる。
「リィーナの剣は修理だから、鍛冶工房で僕の短剣と一緒に修理。軽鎧はまだ大丈夫と。ジョーの杖も問題ないし、剣の修理だけして錬金工房かな?」
剣の修理は破損具合で変わってくる。研磨機で研ぎなおす位で済むのが大半だけど、今僕が装備している短剣みたいに耐久が少ない場合は一度熱し直す必要が出てくる。この段階になってしまうと、修理する際に同じ素材のインゴットが一つ必要となってくるので、ギリギリを見極めて研磨だけで済ませるのが良い。と言うのがβテスター共通の意見だったりする。
「他にはえっと、露店を見てみるのも良いかな?今の売れ筋と出店具合も知りたいし、衣服を置いてる露店なら修理も頼めるかも。あ、僕も明日露店用のアイテムを買い直さないと。」
βテスト時は露店を出していたけど、露店を開くのに必要なアイテムは町で買えるけどレア4のアイテム。その為アイテム引継ぎを選んでも駄目なので、そのうち買おうと思っていてすっかり忘れていた。
「ちょっと高いけど、その後を考えれば安い投資だしね。」
ユニークウェポンと、それに関する情報は3人だけの秘密にしておく事に満場一致で決定した。話すにも情報が少なすぎるし、武器の方も修理しないと使い勝手がわからない。それに注目されるのは好きじゃないし。ああそうだ、今日見つけた本も近いうちに<解読>しないと。
それと、早めに防具もなんとかしたいなあ。と、気付けばお風呂に入る時に設定したタイマーが鳴っている。
「むー、時間が経つのが早いなあ。でもずっとお風呂に入っていてもしかたないし、今日はもう寝よう。」
お風呂から出て脱衣所で身体と髪をタオルで拭う。この辺は気分とゲームシステムの関係で、タオルで拭いてしばらくすれば乾いた状態に早変わり。髪のケアは必要ないから女性プレイヤーにはありがたいかも。僕も僕で長い髪を乾かさないで済むのはちょっと楽だったり。
「お風呂あがりました・・・リィーナは?」
「疲れたから寝るとさ。俺も一区切り付いたし、あとは風呂入って寝ることにするよ。」
「じゃあ明日の予定は朝食の時にでも。」
「りょーかい。今日は柔らかいベッドで眠れるなー、地面のあの硬さはちょっときついぜ。」
そっか、寝袋みたいなのも必要かな。もしくはちょっと厚めの毛布とか。雑貨屋にそう言うの売ってたかなあ、明日露店でも探しておこう。




