第17話 悪夢の再来
まだ朝の日差しが上らない頃に一つの机を挟んで松村と齋が座っていた。
松村は齋から渡された紙を読んでいる。
片手にはコーヒー豆から作られた松村特製のコーヒーを一口飲む。
そして、突飛なアイデアが松村に現れた。
「こいつにゲクトをぶち込もう。
俺の特訓の成果が顕著に見れる。」
「しかしこの邪人は・・・。」
松村は齋の言葉を遮り、鬱陶しく言った。
「わかっている。
だからこそだ。今この機会が必要だと。」
今朝のニュースは不穏だった。
広島市での死者数が300人以上に上り、それが邪気によって引き起こされた事件だった。
日本のSNSの話題を占めているのはアイドルの記事の次に次ぐ話題となっている。
それを引き起こしたのは邪人だった。
それは邪気課の間で大きな影響を与えた。
その邪人はとあるデパートに立て籠っており、警察が周囲を囲っている、という情報が届いている。
そこに派出されたのは16組 咲野玲、ゲクト、黒性。
12組 足の邪人 足利、骨の邪人 古川。2組 松村、原井。
14組 イカの邪人 十賀、鎌の邪人 屋頭。
計9人がそのデパートに突入することになった。
デパートには立て籠っている邪人、更に邪人の仲間とデパートの大部分を占拠している執着の邪気。
執着の邪気はデパート内の人間を操り、脳を奪い、ゾンビのように無差別に人を執着の邪気の支配下にする。
二人を除いた7人執着の邪気の殲滅。邪人とその仲間の確保。
松村、原井は警察と共にデパートから漏れ出る執着の邪気の殲滅。
執着の邪気人間を殺しながら、奥へと進む。
足の邪人 足利は契約時に右腕を代償に莫大な脚力を得た。
骨の邪人 古川は自身の骨を一時的に武器に変えることができる。
主に肋骨、左腕の骨を使用している。
イカの邪人 十賀は邪気人間でイカ人間になることができる。
鎌の邪人 屋頭は誰かの首を切ることで鎌を召喚することができる。
首は誰でもよく、死人や執着の邪気人間などにも対応している。
今回は執着の邪気人間の首をはねて、鎌を召喚した。
「ゲクト!ここからは先輩の俺達が倒す。
引き立て役足利開始ー!」
と、足利は意気揚々と執着の邪気人間の集団の中に飛び込んでいった。
足利に次いで、古川も骨武器を持って飛び込む。
次に道を切り開くのが、十賀と屋頭。
「もし死んだら、お前の首を利用する。」
「グチョ、ニョニョ。」
失敗はさせまいと強めの口調で後押しをする屋頭。
一方でイカになった十賀は真剣そうに話しかけてきたが、肝心の言葉が水中でぶくぶくと泡立てるように聞き取りにくい。
デパートの上へと中央にあるエスカレーターを駆け上り、3階までを先頭を走ってもらった。
しかし4階までのエスカレーターは商品や棚が乱雑に積み上げられていて、上がれる様子ではなかった。
中央の間空から腸を伸ばして、登ることにした。
咲野玲は鳥となった黒性に咥えられて登る。
屋頭は見送りに言葉を残した。
「どういうわけか。お前らが邪人を捕まえるようだな。
松村は何を信頼しているのか知らんが、実力はあるんだろう。
邪気課を舐めている奴らに天誅を。」
そして4階に辿り着いたゲクト達。
執着の邪気の姿はなく、人気もない。
至る場所で綺麗に反射する床のタイルに血痕が付着している。
しかし死体は一切ない。
奇妙な現状に戸惑っていた。
明らかな雰囲気が一際漂う。
すると遥か上から何かがフロアを貫きながら落ちてくる。
それはまさに真上だった。
天井を貫いて現れたのは電車だった。
3人はその電車の下敷きになる、その直前。
黒性はゲクトと咲野玲を翼で吹き飛ばした。
黒性の咄嗟の判断で無傷で回避することができた。
が、黒性は身を挺して庇ってしまったせいで、列車と一緒に下層へ落下していった。
咲野玲は貫かれた床を覗いて、黒性の安否を確認する。
下層では列車は止まっていたが、辺りは血塗れだった。
黒性の毛は微動だにしない。
咲野玲は黒性が再生するための血が足りていないと察知し、賭博の邪気に言った。
「血を与えろ。」
黒性に指を差し、対象を指名すると契約が発動した。
賭博の邪気は「半年消費」と咲野玲に告げると、黒性は血がみなぎる様子になった。
「あとは大丈夫だろう。」
「どっから降ってきたんだ?
電車は嫌いなんだけどなぁ。」
俺は穴から見える空っぽの空を見上げていた。
2度目はないだろうと予測を否定していた時、次に降ってきたのは人型のモノだった。
着地と同時に鋭い刃物が辺りを壊す。
咲野玲を腸で引っ張り、その場から離れる。
姿を現したのは列車の邪気の姿に似た人だった。
「無傷・・・か・・・。」
その男は首を鳴らしながら、ポケットから紐の付いた小さな四角い物を口元に当てた。
「まもなく、電車が4両で参ります。」
車掌のように前方へ指を伸ばすと、列車の邪気が以前使用したワープから同じように走行中の電車が4方向からゲクトと咲野玲を囲むように飛び出してきた。
逃げる場所も猶予もない。
潰されてしまうと覚悟を決めた。
その時、咲野玲は賭博の邪気に言った。
「位置を入れ替えろ!」
列車の邪人と俺達の場所を入れ替えて、反撃する作戦だと俺は思っていたが・・・。
入れ替わったのは咲野玲と列車の邪人で、俺はそのままだった。
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