表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

エピローグ

#ホラー小説 #口裂け女 #90年代アニメ風 #創作

 半年が経過した。


 雛影ひのかげ高校には、表向きの平穏が戻っていた。マスクを着けた女の噂は瞬く間に薄れ、代わりに大学入試にまつわるありふれた若者たちの話題が教室を占めるようになっていく。


 罪付つみつきくるみは、もはや学園の「女王」ではなかった。彼女は今、静かな図書室で過ごす時間が多くなり、常に首元から顎の下までを隠す淡いスカーフを纏っていた。肉体的な裂傷は完全に癒えたものの、鏡の前を通るたびに、彼女は今でも反射的に視線を落とす。彼女は深く学んだのだ。真の美しさは他人の承認など必要とせず、ただ自身の魂の平穏こそがすべてであるということを。


校舎の屋上では、獄門ごくもんエドがフェンスに身を預けて立っていた。彼はもう、あのシルバーフレームの眼鏡をかけていない。その剥き出しの瞳には以前とは異なる鋭い光が宿り、まるで現実の裏側にある「闇」までも見通しているかのようだった。


 一人の一年生が、緊張した面持ちで彼に近づいてきた。


「獄門先輩……生徒会室の下駄箱に、先輩宛の手紙が入っていました。差出人の名前はありません」


エドは無地の白い封筒を受け取った。封を開けると、小さな金属の物体が彼の掌に転がり落ちた。


 それは、錆びついた古い制服のボタンだった。1978年度モデルの、雛影高校の制服のボタン。


 封筒の中には、整った筆致でこう記された一枚の紙切れだけが入っていた。


『門は開かれたわ、エドくん。私は、君たちの世界に負債を立て替えにやって来る多くの「真実」の、最初の一人に過ぎない。……この美しき地獄で、また会いましょう』


エドがその紙を握りつぶすと、それは彼の手の中で静かに黄金の塵となって消え去った。彼はそのまま、遠く校門の方へと目を向ける。そこには、葉の落ちかけた沈丁花じんちょうげの木の下で、白いマスクを着けた一人の少女が、風に消える直前に彼に向かって小さく手を振っている――そんな影が見えた気がした。


 エドは微かに口角を上げた。それは恐怖からくるものではなく、次の獲物を待ち構える冷徹な狩人の笑みだった。


「……この世界は、やはり血を流し続けることを止めないらしい」


 エドが静かに呟く。


 彼は背を向け、歩き出した。コンクリートの床に長く伸びる彼の影は、本体よりも遥かに巨大で、より深い暗黒を湛えている。――それは、罪を犯す者すべてを永遠に飲み込もうと待ち構える、巨大な『獄門』の影だった。


【 完 】


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


1998年の宮崎県を舞台に、都市伝説「口裂け女」と、過去の因縁を背負った少年・獄門エドの戦いを描いてきましたが、いかがでしたでしょうか?

冷徹なエド、狂気に呑まれたくるみ、そして悲しい過去を持つ朱音など、それぞれのキャラクターに愛着を持っていただけたら幸いです。


エドのポケットに残された「金の糸」や、ラストのメッセージが意味するものとは……?


少しでも「面白い」「ゾクッとした」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【評価(★★★★★)】、感想などをいただけると執筆の励みになります!


それでは、また次の「美しい地獄」でお会いしましょう。

本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ