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【連載版】ダンジョン最深部の黒猫様は極上のカリカリをご所望です  作者: あずきまんま


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第3話:敗残の魔導将軍と、熟成スモーキーカリカリ

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一章:ブラック魔王軍の闇と、見捨てられた将軍

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禍々しい紫色の雷鳴が外で轟く、魔界の象徴——魔王城の謁見の間。


「……申し訳ございません、魔王様……! 勇者パーティの奇襲を受け……我が部隊は……っ!」


大理石の床に血の海を作りながら、片膝をつく巨漢の男がいた。


魔王軍四天王の一人にして、魔導騎士団を率いる『黒炎のヴァルザック』。

かつては千の軍勢を一人で薙ぎ払うと恐れられた猛将であったが、今の彼の姿はあまりにも痛々しかった。


右腕は肘から先が無く、左脚も膝から下が断たれ、ボロボロの漆黒の鎧からどくどくと不吉な紫色の血が溢れ出している。


しかし、玉座に深々と腰掛けた魔王——『狂乱の魔王バアル』の瞳に浮かんでいたのは、労いや慈悲の色など微塵もなかった。あるのは、冷酷な蔑みと苛立ちだけである。


「……ハッ、反吐が出るわ、ヴァルザック」


魔王バアルは、豪華な装飾が施されたグラスのワインを煽ると、それをヴァルザックの足元へ投げ捨てた。

ガッシャン、と甲高い音を立ててグラスが砕け散る。


「我が魔王軍の予算をどれだけ注ぎ込んでやったと思っている? それなのに勇者一人討ち取れず、部隊を全滅させて自分だけ無様に這い戻ってくるとはな!」


「ち、違います魔王様……! 予算と言われましても、我が部隊に割り当てられた予算は申請額のわずか一割……! 兵たちの装備は錆びつき、回復薬すら支給されぬまま『根性と気合で勝て』と命じられたのです……! 兵たちは不眠不休で三日三晩戦い——」


「うるさい!! 理由など聞いておらん!」


魔王バアルの咆哮が謁見の間を揺らした。


「勝てば余の威光! 負ければ貴様ら現場の責任! それが我が魔王軍の絶対のルールだ! 前回、第三部隊が勇者の砦を落とした時は、余の完璧な采配の賜物として手柄にしてやっただろうが!」


「……っ! あの時は、私が命がけで殿しんがりを務めたからこそ……!」


「黙れ無能が!」


謁見の間の左右に並ぶ他の幹部たち——魔族の将軍や参謀たちも、青ざめた顔で伏し目になっていた。

彼らもまた知っているのだ。この魔王バアルが、どれほど理不尽で無能なブラック上司であるかを。


気に入らない幹部は即座に減給。

成果を出せば「余の指導が良いからだ」と手柄を独占し、失敗すれば「貴様らの努力が足りない」と全責任を押し付けて処分する。

手当なしの深夜残業は当たり前。休日など百年に一日も存在しない。


幹部たちの間では「もう辞めたい」「勇者に討ち取られた方がマシだった」という溜め息が日常茶飯事となっていた。


「片腕と片脚を失った出来損ないなど、我が魔王軍には不要だ」


魔王バアルは冷ややかに手を挙げ、親衛隊の処刑兵へ命じた。


「ヴァルザックを地下牢へぶち込め。明日、見せしめとして全軍の前で処刑する。貴様の見苦しい死に様で、他の兵たちの士気を高めてやろう」


「な……っ!? 魔王様! 私は三百年もの間、あなた様に忠誠を誓い、魔界のために尽くしてきたのですよ!?」


「うるさいと言っているだろうが! 替わりの幹部などいくらでもいるわ! 引きずり出せ!」


処刑兵たちに乱暴に拘束され、ヴァルザックは絶望とともに地下牢へと叩き落とされた。



冷たく湿った地下牢の闇の中。


「……くっ、ふ……っ……!」


ヴァルザックは欠損した腕と脚の激痛に耐えながら、血の滲む拳で壁を殴りつけた。


(……阿呆らしい。本当に阿呆らしい……! 我ら魔族が命を賭して戦ってきた相手が、あのような度し難い小者だったとは……!)


忠誠心など、完全に粉砕していた。

残されたのは、理不尽に使い捨てられる己への惨めさと、深い絶望。


このまま明日の朝になれば、見せしめとして殺される。

片腕と片脚を失った今の状態では、逃げ出したところで勇者にも、魔王の刺客にも殺されるだけだ。


(……だが、このまま犬死になど……できるか……っ!)


その時、ヴァルザックの脳裏に、先日魔界の密偵が報告してきた『あり得ない噂』が蘇った。


『……人間どもの間で、奇妙な噂が流れております。人間界の大穴——地下100階層【奈落の淵】に、あのSSSランク魔獣『深淵の暗黒竜』を従える……伝説の『黒き神』が降臨したと』


『……傷ついたSSランクの人間や、絶望の不治の呪いにかかった聖女が、その『黒き神』にお気に入りのカリカリを捧げたところ……一瞬で欠損した身体が完全再生し、神聖進化を遂げて生還したそうです』


密偵の報告を聞いた時、魔王バアルは「ハッ、人間どもの下らんデマだ」と笑い飛ばしていた。

だが——ヴァルザックの直感が叫んでいた。


(……あの暗黒竜を屈服させるほどの存在……! もし、もしもその噂が真実だとするならば……!)


ヴァルザックは傷口を魔法の麻酔布で強引に縛り上げると、最後の力を振り絞って地下牢の鉄格子を破壊した。


header:宝物庫への潜入

向かったのは、魔王城の奥深くに隠された『開かずの宝物庫』。

そこには、歴代の魔王すら手を出すことを許されなかった、魔界最古の至宝が眠っていた。


ヴァルザックは厳重な結界を破り、重厚な装飾が施された黒檀の箱を奪い取った。


箱を開けると——ふわりと。


何百年もの年月をかけて魔界の特殊なスモーク木で燻製され、芳醇で香ばしい香りを放つ『極上スモーキー熟成厚切りカリカリ(肉)』が、重厚な輝きを放っていた。


「魔界最高の珍味……『熟成魔獣のスモークジャーキー』。……これこそが、我が持てる最後の命……!」


ヴァルザックはスモーク肉を大切に懐に抱くと、残された右脚で床を強く蹴り、漆黒の夜空へと飛び立った。


「待っておれ……最下層の『黒き神』よ……! 我が命と引き換えに……我が魂のお供え物を受け取りたまえ……!」



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第二章:至高の燻製肉と、決死の100階層参拝

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夜嵐が吹き荒れる中、片腕と片脚を失ったヴァルザックは、魔界から人間界のダンジョンへと向けて飛翔を続けていた。


「ハぁ……ハぁ……っ!」


口から紫色の血がボタボタと垂れ落ちる。

魔力は底を突きかけており、視界は激痛と貧血で二重三重にブレていた。

追手の親衛隊を振り払うため、禁術の自傷魔法まで使って無理やり速度を上げた代償だ。


だが、懐に抱いた黒檀の箱だけは、傷一つつけさせなかった。


(倒れるな……まだだ! 黒猫様のもとへ辿り着くまでは……っ!)


ついに見えてきた、地球の割れ目のように巨大な開口部——【奈落の洞窟】。


ヴァルザックは落下の勢いそのままにダンジョンの大穴へと飛び込んだ。


地下10階層、30階層、50階層——。

恐ろしい速度で最深部へと降りていく。道中の凶悪なモンスターたちがヴァルザックの殺気に怯えて逃げ惑う。


地下80階層を越えたあたりで、もはやヴァルザックの肉体は限界を超えていた。

右脚の骨は悲鳴を上げ、切断された腕の傷口から残存魔力が霧のように霧散していく。


「ぐ、おぁぁぁあッ!!」


そして——ついに辿り着いた、地下100階層【奈落の淵】。


マグマが沸き立ち、硫黄の匂いと灼熱の気が満ちる広大な空間。

その中央に、岩山と見紛うばかりの巨体が鎮座していた。


SSSランク魔獣『深淵の暗黒竜』。


「……不躾な侵入者が、我が領域を汚すか……」


暗黒竜が低く重厚な声を響かせ、黄金の瞳でヴァルザックを睨みつける。

世界を滅ぼす竜の圧迫感は、魔王バアルの比ではない。かつて魔族の猛将と呼ばれたヴァルザックでさえ、その咆哮一つで魂が砕けそうになった。


だが、ヴァルザックの目は暗黒竜ではなく、その巨大な頭頂部へと向けられていた。


そこに、いた。


暗黒竜の巨大な頭の上、目と目の間の平らなスペースで、一匹の『黒猫』が丸くなっていた。

漆黒の毛並み、しっぽの先だけがぽつんと白い。


黒猫は「ふぁあ……」と小さなあくびをすると、片手で顔を毛繕いしている。


(あ、あのお方が……無双の竜をも座布団のごとく従える……伝説の『黒き神』……っ!!)


噂は本物だった。

暗黒竜の頭上で一切の気負いもなくリラックスするその姿こそ、圧倒的な強者の証。


ヴァルザックは崩れ落ちるように床に伏し、壊れた右腕を庇いながら、黒檀の箱を両手で前に押し出した。


「お初にお目にかかります……黒き神様……ッ!」


ヴァルザックの声が最下層に響き渡る。


「我が名はヴァルザック! 愚かな魔王に見捨てられ、すべてを失った哀れな敗残兵にございます!……これが我が持てる最後の至高のお供え物! 魔界が誇る『熟成厚切りスモーキー肉』にございます……ッ! どうか……どうか我が魂の叫びをお受け取りください……っ!」


パカッ、と黒檀の箱の蓋が開け放たれた。


その瞬間——何百年もの時間をかけて燻製された、スモーキーで香ばしい、濃厚なお肉の旨味の香りが、広間に一気に広がった。


第三章:香ばしい食感と、衝撃のアフターサービス


最下層の硫黄の匂いを一瞬でかき消す、あまりにも香ばしい薫製の香り。


暗黒竜の頭上で欠伸をしていた黒猫のクロは、ぴくんと耳をピンと立たせた。


(にゃ……っ!? なんかすげー良い匂いがするニャ……!)


クロはパチッと目を開けると、暗黒竜の鼻先へトコトコと歩み寄った。


見下ろすと、片腕と片脚を無くしたゴツい大男が、床に頭を擦り付けながら黒い箱を差し出している。

だが、クロの視線は大男の傷など一切目に入っておらず、箱の中に収められた厚切りの肉に釘付けだった。


(なにこれ!? いつもの干し肉よりぶ厚くて、燻製の香りがめちゃくちゃ美味そうじゃないかニャ!!)


トントンと前足で暗黒竜の鼻を叩き、地面へ飛び降りるクロ。


(うひょー! いただきまーすニャ!)


クロは一直線に箱へダッシュすると、厚切りのスモーキー肉にガブリと噛み付いた。


「カリッ……サクッ……モグモグ……!!」


一噛みごとに、濃厚な薫製の香りと燻された肉の旨味が、お口いっぱいに弾け飛ぶ。

厚切りならではの「カリカリ・サクサク」とした最高の歯ごたえ。噛めば噛むほど肉汁と香ばしさが溢れ出てくる。


(う……美味い……!! 歯ごたえがあって、スモーキーで最高に美味いニャ〜〜ッ!!)


クロはシッポをピーンと立ててフリフリさせながら、夢中で厚切り肉を平らげていった。


一方、それを見つめる暗黒竜とヴァルザック。


(む、むむ……っ!? 黒猫様が、あれほどまでに夢中で食しておられる……! この魔族、恐ろしいほどの逸品を持参したな……! 我が黒猫様のブレスで灰にならずに済んだのは、お前の献上品のおかげだぞ……!)


暗黒竜が安堵の息を吐く横で、ヴァルザックは目を見開いて震えていた。


(召し上がられた……! 魔界の至宝『熟成スモーク肉』を……! ああ、神よ……伝説の黒き神様が、我が献上品をお受け取りになられた……っ!)


「モグモグ……ぷはぁ〜〜!」


あっという間に厚切りスモーキー肉を完食したクロは、大満足でお腹をペロリと舐めた。


(ふぅ〜美味しかったニャ! この歯ごたえと香ばしさは癖になるニャ〜)


大満足でご機嫌のクロ。

ふと見ると、目の前で片腕と片脚を失った大男が、感涙にむせびながら自分を見上げている。


スモーキー肉の香ばしい匂いが自分の口の周りについていたので、クロは「美味しかったニャ」のごちそうさまの挨拶代わりに、大男の手元へひょいと顔を近づけた。


(美味しいお肉をありがとうニャ。ちょっと舐めてあげるニャ)


ペロ……ペロリ……。


ざらりとした猫の舌が、ヴァルザックの切断された右腕の傷口を優しく舐め上げた。


——その瞬間。


ズドォォォンッ!!


ヴァルザックの全身を、地鳴りのような凄まじい衝撃が突き抜けた!


「が……っ!? あ、足が……腕が……あつ、い……ッ!?」


クロの舌が触れた右腕の傷口から、禍々しくも神々しい紫黒の魔光が爆発的に溢れ出す!


切断されていた右腕の肉と骨が、まるで時間を巻き戻すかのように凄まじい勢いで盛り上がり、完全再生していく。

続いて、左脚の傷口からも光が噴き出し、一瞬で元通りの強靭な脚が生え揃った!


それだけではない。

ヴァルザックの体内に眠っていた魔力が暴風となって吹き荒れ、限界を迎えていた魔力上限が以前の十倍——魔王バアルを遥かに凌駕する『魔神領域』へと超絶強化されていく!


「あ……あぁあ……っ! 欠損した腕と脚が……完全再生した……!? どころか、我が魔力は……以前とは比べ物にならぬほど満ち溢れている……っ!?」


ヴァルザックは再生した両手を何度も握り締め、己の内に宿る圧倒的な力に絶句した。


(これぞ……これぞ神の御技……『食の奇跡アフターサービス』……っ!!)


ヴァルザックは石畳に何度も額を擦り付け、感涙を流しながら叫んだ。


「感謝いたします……! 感謝いたします、黒猫様……っ! このヴァルザック、この命と魂のすべてを、今よりあなた様に捧げます……ッ!」


一方、仕事を終えたクロはといえば。


「ふぁぁ〜あ……」


大きな欠伸をひとつ。


(ん〜、硬くて美味い肉食べてお腹いっぱいになったら、眠くなってきたニャ……)


満足したクロはトコトコと暗黒竜の巨大な前脚を登り、頭の上のマイポジションへ収まった。

前足で顔をゴシゴシと洗うと、くるりと丸くなって即座にスヤスヤと二度寝を始める。


(ふむ、黒猫様がお休みになられたぞ。去るのだ人間)


「は……っ! 伏して失礼いたします……!」


ヴァルザックは深々と一礼すると、圧倒的なパワーと黒猫様への無限の忠誠を胸に、最下層をあとにしたのだった。



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結末:魔王様の人望ゼロ化と、黒猫様親衛隊の結成

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翌朝。魔王城の謁見の間。


「ハッハッハ! そろそろヴァルザックの処刑の時間だな!」


玉座で高笑いする魔王バアル。

周りに並ぶ幹部たちは、死んだような目でうつむいていた。


「おい親衛隊、地下牢からあの出来損ないを引きずり出してこい!」


魔王バアルが命じたその時——。


ドドドドドォォォンッ!!!!


謁見の間の重厚な鉄門が、まるで紙くずのように吹き飛んだ!


「な、なんだと!?」


煙の中から歩み出てきたのは——完璧に再生した右腕と左脚を持ち、身体から禍々しくも神々しい漆黒の覇気を放つ、ヴァルザックの姿であった。


「ヴァ……ヴァルザック!? 貴様、なぜ腕と脚が生えている!? 地下牢からどうやって脱出した!?」


魔王バアルが泡を喰って叫ぶ。

並んでいた幹部たちも「馬鹿な……欠損再生だと……!?」と息を呑んだ。


ヴァルザックは冷ややかな瞳で魔王バアルを見下ろすと、腰の剣を静かに抜き放った。


「バアル。……いや、元・上司よ。貴様のような小者に怯える日々は、今日この瞬間をもって終わりだ」


「な、なにを言っている貴様ぁッ! 親衛隊、奴を殺せ! 処刑だ!」


魔王バアルが叫ぶが、親衛隊はヴァルザックから放たれる圧倒的な『魔神の威圧』に金縛りとなり、誰一人動くことができない。


「バアル。貴様は我ら現場の苦労を省みず、成果を奪い、失敗を押し付け、使い捨てにしてきた。……そんな理不尽な男に忠誠を誓う価値など、微塵もない」


「な、なんだと……っ!?」


「私をお救いくださったのは……地下100階層に鎮座される、真の絶対神『黒猫様』だ! 黒猫様は最高のお肉一皿で、私にこの至高の力を授けてくださった!」


「く、黒猫……!?」


ヴァルザックは胸を張り、朗々と宣言した。


「私は本日をもってブラック魔王軍を正式に辞職する! これより私は、黒猫様をお護りする『黒猫様親衛隊』の隊長として生きる!」


その瞬間——謁見の間に並んでいた幹部たちの目が、一斉に輝いた。


「……え? ほんとに辞めていいんですか……?」


「手当なし深夜残業も……休日のないブラック労働もなし……?」


「しかもカリカリ一袋でそんな強くなれるんですか……!?」


「おい貴様ら! なにをヴァルザックの戯言に耳を貸して……」


魔王バアルの制止を無視して、第二部隊長、第三部隊長、そして参謀までもがヴァルザックのもとへ駆け寄った。


「ヴァルザック隊長! 俺も……俺もブラック魔王軍辞めます! 黒猫様親衛隊に入れてください!」


「私もです! もうバアル様のパワハラには耐えられません! スモーキー肉作ります!」


「俺も俺も! ブラック魔王城なんて辞めてやるーーーッ!」


「お、お前たち!? 待て! 待つのだ! 誰が余の資料を作るのだ!? 誰が勇者と戦うのだ!?」


慌てふためく魔王バアルを置き去りにして、幹部も兵士も雪崩を打って魔王城から退職。


ほんの数分後——だだっ広い謁見の間には、玉座でガタガタと震える魔王バアルただ一人が取り残されていたのだった。


「ひ……一人にしないでぇぇぇーーーーッ!??!」





こうして、魔王軍は一晩にして壊滅。


地上では冒険者ギルドだけでなく、元魔王軍の魔族までもが「黒猫様に献上するための最高級燻製カリカリ」を捜索・開発し始めるという、前代未聞の大ブームが巻き起こることとなった。


そんな魔界と地上での大混乱など、知る由もない地下100階層。


(う〜ん……今度はカリカリ(固め)とスープ(柔らかめ)のどっちが来るかニャ〜……)


暗黒竜の頭の上で、黒猫のクロは幸せそうに爪を研ぎながら、今日も長閑に次のご馳走を待つのだった。


(第3話 完)

ご覧いただきありがとうございます!


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