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【連載版】ダンジョン最深部の黒猫様は極上のカリカリをご所望です  作者: あずきまんま


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第10話:毛並みを失った獣人族の獅子姫と、極上濃厚ミルク&チーズカリカリ

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第一章:毛並みを失った獅子姫と、絶望の最最深部

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かつて誇り高き獣人国ラグナリアにおいて『黄金の獅子姫』と称えられ、その眩い毛並みと鋭い爪で国中の崇敬を集めていた将軍、レオンティーナ 。

しかし今、地下100階層【奈落の淵】の冷たく湿った岩肌を歩く彼女の姿に、かつての威厳は微塵も残っていなかった 。


「……はぁ……っ、ふ……ッ」


ボロボロの布を頭から深く被り、足元をふらつかせながら歩く 。

彼女を襲ったのは、権力争いに目が眩んだライバル派閥が仕掛けた卑劣な毒薬の呪いであった 。


その呪いは彼女の生命を奪うのではなく、獣人族にとって命よりも尊い『黄金の毛並み』と『鋭い爪』を根こそぎ奪い去ったのである 。

頭部から全身にかけての毛は哀れに抜け落ち、皮膚は惨らしく爛れ、爪は丸く削げてただの生肉と化してしまった 。


『ハゲた野良獣など、獣人国の将軍どころか獣人としてすら生きる価値なし!』


冷酷な蔑みと嘲笑の中で国を追放され、絶望の底に突き落とされたレオンティーナ 。

死に場所を求めて彷徨っていた彼女の耳に届いたのは、地上の冒険者や英雄たちの間で密かに語り継がれる奇跡の噂であった 。


『地下100階層には絶対の神が存在する……お気に召す献上品カリカリを差し出せば、どんな不治の呪いも一瞬で癒やされる』と 。


「(……神など……本当にいるというのか……? だが……このまま惨めに死ぬくらいならば……ッ!)」


レオンティーナは胸元に抱えた小さな木箱を力強く握りしめた 。

やがて、開けた岩窟の広場へと足を踏み入れる 。

そこに広がるのは、太古のマグマと青白い毒性発光苔が照らし出す異様な世界 。そして——世界を滅ぼすと謳われるSSSランク魔獣『深淵の暗黒竜』の巨大な姿であった 。


あまりの死の気配に、レオンティーナの全身の血が凍りつく 。

だが、その恐ろしい暗黒竜の頭の上で——一匹の『黒猫』が、呑気に欠伸をしていた 。




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第二章:黄金の秘宝と、ミルクの芳香

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「ふぁぁぁ……あ……」


暗黒竜の巨大な頭部の上で、黒猫のクロはぐ〜っと前脚を伸ばして伸びをした 。

前世はしがない野良猫だったクロにとって、人間の複雑な事情や獣人族の絶望など知る由もない 。


(う〜ん……今日もぽかぽかで良いクッションだニャ。そろそろお腹が減ってきたニャぁ……)


クロが尻尾をパタパタと揺らしていると、下からガタガタと激しく震える気配が伝わってきた 。

見下ろすと、頭から布をかぶった怪しい人間(?)が、涙と汗でぐしゃぐしゃの顔で平伏している 。


「おお……神よ……ッ! 黒猫様……ッ!」


レオンティーナは恐怖と圧迫感で息も絶え絶えになりながら、持参した木箱を恭しく捧げ持った 。


「どうか……どうか我が国に伝わる至高の献上品をお受け取りください……ッ! 神獣の秘乳をじっくり熟成・乾燥させて作り上げた、我が一族の秘宝にございます……ッ!」


パカッと木箱が開けられた瞬間—— 。

ふわり、とダンジョン最深部の硫黄臭を押し散らすほどの、まろやかで濃厚な甘い香りが立ち込めた !


(……ッ!? な、なんだこの甘くて香ばしい香りはニャッ!??)


香りの正体は、黄金色に輝く小粒の粒状スナック——『至高の濃厚ミルク&チーズ風クリスピーカリカリ』であった !


クロの丸い瞳が、輝かんばかりに大きく見開かれる 。

トコトコと暗黒竜の頭から駆け下りると、クロは待ちきれない様子で皿の前のレオンティーナの足元へ近づいた 。


「ニャ〜〜〜ッ!(すっごい濃厚で良い匂いだニャ! いただきまぁすニャ!)」


サクサクッ! ボリボリボリッ !


香ばしい歯ごたえとともに、濃厚なキャットミルクと熟成チーズの濃厚なうま味がクロのお口いっぱいに広がる 。


(うまーーーいッ! ミルクのコクがすごくてサクサクだニャ! これ最高だニャ〜〜〜♡)


クロは夢中になってカリカリを貪り、あっという間に綺麗な金皿をピカピカになめ上げたのであった 。




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第三章:アフターサービスと黄金の覚醒

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(ふぅ〜……食った食った。ミルクがすごく濃厚でお腹いっぱいだニャ)


満足そうにお腹をさするような仕草を見せると、クロはご機嫌に「フニャ〜」と声を上げた。

そして、目の前でがたがたと震えている哀れな人間(?)に向かってトコトコと歩み寄る。


(美味いご飯の後は、食後のお礼(毛繕い)だニャ。……なんか頭の布が邪魔だニャ)


クロは前脚でちょいちょいとレオンティーナの被っていた布を引っ張り落とした。

現れたのは、痛々しく毛が抜け落ち、皮膚が爛れた痛々しい頭部蓋。


レオンティーナはぎゅっと目を瞑った。

『ハゲた野良獣』と蔑まれた惨めな姿を晒してしまった恐怖。だが、次の瞬間——。


ペロリ、ペロリ。


温かく、少しざらついた小さな舌が、彼女の傷ついた皮膚を優しく撫で上げた。


「……っ!??!?」


その瞬間、レオンティーナの全細胞に雷が落ちたような激動が走った!


(な……なんだ……この温かい魔力は……!? 体の奥底から……熱が溢れてくる……ッ!?)


クロの唾液に含まれる神聖魔力が、レオンティーナの身体に巣食っていた毒薬の呪いを一瞬で噛み砕き、浄化していく!

壊死していた皮膚の組織が激しい光を放ち、一瞬で生まれ変わる。

さらに——ポンッ! ボウッ! と音を立てて、頭部から全身にかけて『黄金の毛並み』が怒涛の勢いで生え揃っていく!


それは以前の毛並みなどではない。太陽の光を閉じ込めたかのように神々しく輝く、まさに『神輝の黄金毛並み』!

さらに、丸く削げていた指先からは、神鉄をも容易に切り裂く『極上の爪』がカチリと生え揃った!


それだけにとどまらない。クロの神聖魔力は彼女の血脈を激流となって駆け巡り、古代獣人国でも絶えて久しかった伝説の秘術——神代の獣神術『獣神降臨』の全理を彼女の脳内へ直接刻み込んだのだ!


「あ……ああ……ッ!! 毛並みが……爪が……ッ!? それに……力が……溢れてくる……ッ!!」


レオンティーナは震える自らの黄金の手足を見つめ、溢れ出る感涙で顔を濡らした。




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第四章:真なる獣神の悟りと、地上への決意

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仕事(お礼の毛繕い)を終えたクロは、「ふぅ、満足満足」と鼻をフンと鳴らすと、ふらりと踵を返した。


(お腹もいっぱいになったし、ちょっと喉が渇いたニャ……。暗黒竜の頭の上に戻って二度寝するニャ)


暗黒竜の巨体へトコトコと登っていき、一番居心地の良いスペースでクルリと丸くなるクロ。


レオンティーナは、その神々しいお姿を仰ぎ見ながら、深々と大理石の床に額をこすりつけた。


「……分かりました……私は愚かでした、黒猫様……ッ! あなた様こそ、我ら獣人族が太古より探し求めていた『真なる獣神』……ッ!」


彼女の瞳には、かつての絶望など微塵もなかった。あるのは、絶対の狂信と燃え上がる使命感だけである。


「この命、この黄金の爪、すべてあなた様から賜った奇跡にございます……! 私は地上に戻り、私を陥れた愚か者どもを平伏させ、ラグナリア国全土に命じましょう……!」


熱弁を振るうレオンティーナ。


「世界中の最高級キャットミルクと搾りたてチーズを集め、あなた様のためだけに作られる『至高のミルクカリカリ』を永久に献上し続けることを……ッ!!」


暗黒竜の頭の上で目を閉じたクロには、彼女の誓いなど一切届いていなかった。


(う〜ん……今度は甘いおやつじゃなくて、またしょっぱいお肉系のカリカリが食べたいニャ〜……)


そんな猫らしい呑気な願いを胸に、クロは幸せそうに「スー……スー……」と寝息を立て始めるのだった。




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終章:ラグナリア国の『キャットミルク大開発令』

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数日後。

獣人国ラグナリアの王宮は、天地がひっくり返るほどの激震に見舞われていた。


「バ、バカな……! 追放されたハゲ獣のレオンティーナが……神話の獣神術を引っ提げて舞い戻ってきただと……!?」


レオンティーナを毒殺しようと企んでいたライバル派閥の貴族たちは、眩いばかりの黄金の毛並みを纏い、一瞬で城の防衛騎士団を平伏させた彼女の姿に泡を食って恐怖した。


レオンティーナは冷ややかな瞳で愚か者どもを見下ろすと、神聖な黄金の爪を静かに鞘へと収めた。


「我が国は本日より、地下100階層に鎮座される『真の獣神・黒猫様』へ全面服従を誓う! ただちに国中の牧場と醸造所を集めよ! 黒猫様がお喜びになられる『至高のミルク&チーズカリカリ』の製造を開始するのだッ!!」


「「「は、ははぁーーーッ!!」」」


こうして、獣人国ラグナリアは国家の総力を挙げた『黒猫様のための最高級乳製品カリカリ開発計画』へと突入。

地上の崇拝ネットワークには、新たに「獣人国の極上ミルクフレーバー」が加わり、黒猫教の献上品合戦はさらに苛烈さを増していくのであった。


(第10話 完)




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