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骸廻様 ―遺体探し屋―  作者: アサキ
サキちゃんの場合
6/10

 骸廻様の腹の中。入った直後は真っ暗で、足の感覚を頼りに立つ。この瞬間は、お化け屋敷に入った時と感覚が似ていると思う。お化け屋敷入口によくある黒いカーテンの代わりが、この腹の肉かと考えると少し残念な気持ちになった。


「二時間」


 イツキくんの呟きに合わせて、俺はスマホのタイマーをセットする。彼もまた、自身の腕時計のタイマーをスタートさせていた。


「二時間経つと腹がくっついて出られなくなっちゃうけど、今回はまぁ心配要らないでしょ。ご遺体返すのも含めて、十分足りるはず」

「余裕ぶっこいて、いいの。写真貰ってないけど、顔分かる?」

「うん。大丈夫」


 スマホのライトで辺りを照らすと、眉を寄せるイツキくんの顔が見えた。


「そんな怖い顔しないで。行こう」


 俺は彼を手招きしつつ、腹の奥へ向かって歩を進めた。




 横に二人並んで、足早に中を歩いていく。やがて一分もしないうちに、明るい空間に出た。


「……この骸廻様は、よく調教されているね」


 目の前には棺が大量に並ぶ。見た目だけの話であれば、その並び方は美しい。いずれも縦、横共に等間隔で棺が置かれており、整然としている。だが白い棺が多い中に、クリーム色や黒、他にもパステルカラーが混ざる。白にしたって、柄が入るものと入らないものがある。統一感を踏まえるとやや至らないが、俺がとやかく言う筋合いは無い。本人や遺族の意向であれば、それが一番なのだから。


「浮いてない」

「ね」


 彼の言葉に頷く。前回の骸廻様は棺が綺麗に並んでいない所か、ぷかぷかと宙に浮かんでいて、ご遺体を探すのがかなり大変だった。


「だから今日は、比較的スムーズだと思うよ。えーっと、サキちゃんの番号は……」


 メモを確認しながら、縦横、無限に広がっているような空間をひたすら歩いて回る。


「……あった」


 やがて十五分も経たないうちに、探していた番号は見つかった。


「……」


 周囲を囲むものに比べて、一回り小さな棺。白くて柄は無く、シンプルな作り。俺もイツキくんも自然と黙り込んでいた。

 何も喋らないまま、ひとまず棺に近付く。蓋の端に書かれた数字と、自分のメモを俺は何度も見比べた。


「うん……番号は、間違いないね」


 それからは側面に付けられた機械にパスワードを入力して、生体認証も済ませる。すると蓋のロックが外れて、棺に納められている人物の簡単な個人情報が表示された。この操作は、盗難防止と情報保護のためらしい。


「……サキちゃん……六歳……うん、間違いない」


 俺は棺の傍らに膝をつけて、両手を合わせる。視界の端では、立ったまま、俺と同じように手を合わせるイツキくんが映った。


「……失礼します。ごめんね」


 棺に設けられている窓をそっと開ける。


「……この子で間違いない?」

「うん……でも、写真より細いや」

「写真?」


 彼が首を傾げている間に、俺は窓をゆっくりと元に戻した。


「よし、運ぼうか。台車台車。この骸廻様なら、きっと置いてあるはず!」

「向こうにあった」

「流石イツキくん!」


 棺を運ぶ準備が出来ても、そこから辺りをきょろきょろ見渡す。


「えーっと、何処から来たっけ……あっち……?」

「その反対」

「流石イツキくん! 頼りにしてる!」


 数分前とほぼ同じ台詞を言うと、彼はあからさまに呆れた顔をしていた。



 そんな彼も、出入りに使う腹の切り口へ近付くにつれて、険しい表情へと変わっていく。


「会わせるの」

「そうだよ」

「せめて親に確認したら」

「うーん……まぁ、今回はいいっしょ」

「トラブったら先生が怒られるよ」

「ねぇ」


 いつも通りに返事する俺が気に入らない様子で、彼は更に眉間のシワを深くした。


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