【36】死者は起爆する。〜使い捨て携帯を渡した時、爆弾は目覚める〜
ギャレットの言葉が終わると、ヴォーン捜査官が慎重に口を開く。
「しかし、なぜ、エリーはまず最初にエレナがモナコに避難すると、我々に伝えて来たんでしょうか?
我々には、自分のイギリス行きだけを知らせるだけで良い。
エリーは確かに、行方の分からないトランスこと、ジャコビーを心配していて、我々に保護して欲しいと心底願っています。
でも、エレナは?
彼女は"どんな時も"安全です」
ギャレットが瞬時に答える。
「砂の城だ。
ジャコビーの部屋で、エリーと二人きりで話していた時、エリーは自分から話してくれた。
『リアムが砂の城を最初に作った場所は、ジャコビーのリビングから見えるプライベートビーチだった』と。
しかも、ジャコビーは、崩れにくい精巧な砂の城の作り方まで考えて、何度も実験までしていた。
つまり、我々の初期のプロファイルの方向性がズレていた。
エリーは、知っていたんだ。
大切な幼馴染で親友のリアムが、保護されることなく、死亡したことを。
保護された時に、何らかのメッセージを送る用意をしていたのだろう。
エリーなら、そこまで考える。
だが、出頭した日にメッセージは来なかった。
つまり―― リアムは保護されていない。
そうなると、答えはひとつしかない。
そして、ジャコビーまで消えてしまった。
エリーがあそこまでジャコビーを心配していたのは、"更に"大切な友達が消えてしまったからだ」
アッシュ捜査官が力強く頷く。
「そうね。
そして、今度は"新しい大切な友達"の心配をしているのよ。
きっと、エリーは、リアムの死を私たちがエレナに知らせる可能性があると見抜いたのかも知れない。
そこで、私たちにすぐさま一手を打つ。
『エレナには連絡出来ない』と」
すると、クロウ捜査官が腕組みをして、首を捻った。
「それじゃあ、あのクロフォードの副業を吹き飛ばした17個の爆弾は、やっぱり二人をマイアミから遠ざける為に爆発させたってことになるよな?
だが、規模が大き過ぎないか?
二人をマイアミから遠ざけるだけなら、もっと簡単な方法は山ほどあるぞ?」
その瞬間――
ギャレットのスティールブルーの瞳がギラリと光った。
「マイアミから、遠ざけるんじゃない。
アメリカから、遠ざけたかった。
この爆弾犯は、二人が犯人を大切に思うよりも、遥かに二人の方を大切に思っている。
違う州じゃ足りない。
国外脱出をさせたかったんだ」
ヴォーン捜査官が、目を細めると、言った。
「そうなると―― プロファイル的には、犯人はジャコビーしかいません。
エリーの大切な"もの"を守るためなら、彼は何だってするでしょう。
エレナは、エリーの大切な親友の想い人だった。
ジャコビーはそれを知っている。
きっと、プライベートビーチで、砂の城を作るリアム、もしくはリアムとエリー、更に言えば砂の城をエレナに見せていたかも知れないリアムを、自分の部屋から静かに見守っていた筈です。
彼女も、今のジャコビーなら守る。
ですが、ジャコビーは既に死亡しています。
爆弾はジャコビーが作った物かもしれません。
ですが、誰が"我々がエリーに接触したタイミング"で起爆させたのでしょうか?」
ギャレットが三人を見渡し、厳しい声で告げる。
「それは、FBIもしくはATFの爆弾の調査が終わるまで、結論は出ない。
クロフォードの副業を"全て"吹き飛ばしたのも、"木の葉を森に隠す"の逆をいったのかも知れないが、そうなると、なぜクロフォードの副業なのか?という疑問に戻ってしまう。
ホイットモアに、FBIとATFを急がせるように指示を出す。
必要ならば、オーラの爆弾処理班をメンバーに加えよう。
我々はどんな手段を使っても、マイアミ支局に辿り着き、報告を待つ。
以上だ」
そして、翌日――
ホイットモア渉外官を含めた、ギャレットのチームは、専用の会議室にいた。
ブラインドは全て下ろされ、ドアには鍵も掛かっている。
ギャレットがスピーカーに向かって、一言言う。
「ノラ、報告を」
すると、ノラがそれぞれのタブレットにパッと現れた。
ノラが勢い良く話し出す。
「ホイットモア渉外官の圧力……じゃなくて渉外力のお陰で、うちの爆弾処理班をねじ込めたので、スピーディーに爆弾を解析出来ました!
まず、あの17個の爆弾は、全部ジャコビーの手作りです!
二年前までに使われていた爆弾と、構造、材料、ジャコビーの爆弾への"署名"、その他全てが一致しています!
これは、機密扱いで、外部には流出していない情報です。
特に、ジャコビーの爆弾の、特徴的な繊細な構造が完全一致。
他の人間には、例えジャコビーから直接教えられていたとしても、ここまで完璧に真似をするのは不可能のレベルです!
ですが、一点だけ、以前のジャコビーの爆弾とは違う点がありました!」
クロウ、ヴォーン、アッシュが揃って目を見開く。
ギャレットは微動だにせずに、一言言った。
「続けろ」
ノラが再び勢い良く話を続ける。
「ハイッ!
それは、起爆装置です!
以前のジャコビーの爆弾は、タイマー式でした!
ですが、今回の爆弾は、タイマーではありません!
携帯電話を使用しています!
しかも……エリオ・エヴァレットのスマホ経由です!」
三人も、そして、ギャレットまでもが息を呑む中、ノラの声が会議室に響く。
「しかも!
主任がエリオに渡した、使い捨てのスマホを経由しています」
ギャレットの片眉が上がる。
「どういうことだ?」
ノラが間髪入れずに答える。
「正確に言うと、"起爆した犯人"は、何とエリオのワイヤレスイヤホンに侵入していました!
普段使っているスマホじゃないスマホと同期されると、翌日の午前五時に爆弾が爆発するように、設定してあったんです!」
すると、クロウ捜査官が口早に言った。
「だが、エリーが機種変更をしたら?
我々だけとは限らない!」
ノラが待ってましたと、話し出す。
「それは、正規のスマートフォン!
"使い捨て"に限定されていて、期間も三ヶ月以内に限定されています」
「それは難しい技術か?」
ギャレットの冷静な問いに、ノラがまた勢い良く答える。
「遠隔でも、私レベルなら可能です!
ですが、まず、ジャコビー並みの爆弾を作る技術がなくてはなりません。
でも、爆弾があって、エリオのスマホとワイヤレスイヤホンに触ることが出来れば、そう難しくはありません!」
「クロフォードの自宅にあった爆弾は?」
「あの爆弾も他と同様ですが、クロフォードの自宅の爆弾だけは、三日後にタイマーがセットされてありました!」
「なる程。
ご苦労」
「ハイッ! ではまた!」
ノラからの通信がブチッと切れる。
ギャレットも、他の三人も確信する。
あの爆弾を仕掛け、自分の死後、エリーに"使い捨て"携帯を渡す人間が現れた時に起爆するように仕組んだのは、マイク・ジャコビーだと――
こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)
諸事情により、オーラの連載はここで一旦お休みさせて頂きます。
完結まで書き切りますが、諸々の事情がありまして、申し訳ございませんm(_ _)m
再開時は未定ですが、再開した時に、また読んで下さると嬉しいです。
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