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A.U.R.A.《オーラ》高度犯罪分析局 ――たった一人の死を追う逆算プロファイル  作者: 久茉莉himari


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1/4

【1】たった一人の死からはじまる物語。〜死者はなぜ二人を呼んだのか〜

一人の青年が、自らの死を“自殺”に偽装して命を落とした。


彼はなぜ、殺されたにもかかわらず、捜査を拒んだのか。


A.U.R.A.《オーラ》高度犯罪分析局。 たった一人の死から、鋼の分析官ギャレット・A・ロークの捜査が始まる。

その日、ギャレットはバージニア州にいた。


FBIのクワンティコで講演を行い、その足で重大犯罪対応群――通称CIRG――に向かう。


その途端、職員達の目が釘付けになる。


そう――


彼こそ、NYに本部を置く連邦高度分析機関、A.U.R.A.《オーラ》高度犯罪分析局の主任捜査分析官、ギャレット・アレクサンダー・ロークだったからだ。




FBI行動分析課の課長、マーカス・エヴァレット・ローウェル――


マーカスが、自分のオフィスで苦笑する。


「ギャレット!

久しぶりだな!


そろそろ座れよ。

君は立っているのが好きだが、私が落ち着かん!」


課長室のブラインドは全て下ろされ、ドアには鍵も掛かっている。


ギャレットは一言「そうですか」と言うと、音もなく、応接用のソファに座った。


マーカスが自分のデスクから立ち上がり、話し出す。


「君に大袈裟なことをさせたのは謝る。

だが、これは必要な手順だったんだ」


マーカスがギャレットの前に座ると、今度はギャレットが静かに口を開いた。


「クワンティコで、私が犯罪心理について講義を行う。


講義を終えた私は、その足で重大犯罪対応群――通称CIRG――にある行動分析課の課長室へ向かう。


表向きは、行動分析課長との講義後のセッション。

プロファイラー同士による、専門的な意見交換。


しかし、それは全てカモフラージュ。


ですか?」


マーカスが小さく頷くと、厳しい声音で答える。


「そういうことだ。


FBIとしては、公に動くことができない。

だからこそ、公式捜査班を動かす前に、行動分析課内の限定的なケースレビューとして扱う必要があった」


そして、一拍置くと続けた。


「しかも、今回の事件では、行動分析課のアドバイザーの一人が目撃者になっている」


「成る程。

では、お話し下さい」





マーカスは資料をギャレットに渡し、説明を始めた。


それは一週間前の終業時刻を過ぎた20時05分に起きた。


あるFBI捜査官のスマホに、一本の電話が掛かって来た。


内容は――


FBI本部からほんのワンブロック先の花屋の角にいる、早く来てくれ、というだけの男からの短い電話だった。


その捜査官は本部を出て、すぐにその場所に向かった。


すると、男が壁を背にして座っていた。


腹部に――

ナイフが刺さったままの状態で。


そこで、その捜査官が救急車を呼ぼうとした時に、その男は腹部からナイフを抜き、止める捜査官を振り切って再び自分を刺し、死亡。


その際、その男は言い残した。


「これで自殺です。

捜査はしないで」と。


そして、その捜査官はすぐに警察に通報。


救急車を要請。


そこまで話すと、マーカスはため息を吐いた。


「その捜査官は……そこで普段なら絶対にあり得ないミスをした。

なんと、うちの鑑識チームを呼んだんだ」


もちろん警察が優先されるので、FBIの鑑識チームは戻される。


そこで、その捜査官の上司からの聞き取りによると、その死亡した男は、その夜、FBIに出頭する筈だった。


しかもギャングの“ある情報”を全て話す約束で。


ギャレットが静かに口を開く。


「そちらの事情は良く分かりました。

だが、それはFBI内部で処理出来るのでは?


なぜ、こんな回りくどいやり方で、私を呼んだんです?」


マーカスのスレートグレーの瞳が青み掛かり、光を帯びる。


「問題は――

その場にもう一人呼ばれて行った人物だ」


その人物こそ、セオドア・オールデン・ヴェイル博士。


通称、セオ・ヴェイル博士。


クワンティコで犯罪心理学の教鞭を取る、25歳の若き天才博士。


しかも、ヴェイル博士は行動分析課のアドバイザーも務めている。


そのヴェイル博士も、その男に電話で呼ばれていた。


その死亡した男は、まず、ヴェイル博士に電話を掛け、次に捜査官に電話を掛けていた。


マーカスは苦しそうに言った。


「問題は……二人が聞いた男の最後の言葉が違うことだ。

資料を見てくれ。

捜査官の場合だ」


すると、ギャレットが淡々と語り出した。


「自分『今直ぐ救急車を呼びますから!』

男性『俺さえ死ねば、全部チャラになる』


自分『誰に刺されたんですか!?』

男性『誰にも。自殺です。俺は、自首が怖くなって、自分で刺した』


自分『嘘だ!本当のことを』

男性『お願いします。俺が死んでもマスコミに名前が流れないように、捜査もしないで』


捜査官『駄目だ、そんなこと!あなたも助けるし、捜査もする!』

男性『お願いします』と繰り返していた。


自分の腕を掴む男性の手を離し、救急車を呼ぼうとした時に、男性が腹部に刺さっていたナイフを抜いた。


自分が驚いて、そのナイフを掴もうとすると、男性がそのまま体重を掛けて、前のめりに倒れ込んだ。


自分が男性の名前を叫び抱き起こしたが、その胸にはナイフが突き刺さっていた。


男性『これで自殺です』

自分『何てことを!』と叫んだ記憶あり。


そして、警察に連絡し、救急車を要請、FBIの鑑識チームに現場に来るように指示した。


――成る程。


それで、ヴェイル博士の報告との違いはなんです?

この説明書には、ヴェイル博士の報告はありませんね?


なぜ、書面にしていないんですか?

それと、この捜査官の名前が伏せられている理由は?」


ギャレットの低い問いに、マーカスは静かに答える。


「まず、君はヴェイル博士の論文を読んでいるかも知れないが、その捜査官の名前を知れば、今、君に先入観を与えることになるからだ。


それと、ヴェイル博士の言葉を書面にして、君には渡せない。

今は、な。


ヴェイル博士の承諾が必要だ。


君なら記憶出来るだろう?

一言一句」


ギャレットのスティールブルー瞳がギラリと光る。


「確かに。

では続きを」


マーカスはその視線を全く感じていないように、冷静に告げた。


「その男性は亡くなる前に、女性の名前を繰り返していた、とヴェイル博士は言っている。


どうやら、その男性はその女性の為に、"自分を刺す"という行動に出た。


その女性の名前は『エレナ』


ヴェイル博士によると――

フルネームは、エレナ・グレイス・ウィンスロウ。


君も、いや、アメリカ国民なら知っている人間の方が多いだろう。

特命大使を歴任しているウィンスロウ大使の娘だ」


その刹那――

ギャレットは一言言った。


「ヴェイル博士に直接話をお聞きしたい」と。


すると、マーカスは赤い蝋印が押された封筒をテーブルに置いた。


こうして、たった一人の死を追う物語が始まった――

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆


毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290


自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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