チート能力ってスゲー!
俺は影も形もなかった家が突然目の前に現れたのを見て唖然としていた。
……いや、まじでなんで? さっきまで草木しか生えてなかったよな? なんでいきなり家が出てきたんだ?
と、ここでふと自分が貰ったチート能力を思い出す。もしかしたらこの現象は、【想造】という能力が発動した結果なのかもしれないと、俺は考えた。
確証はない。もしかしたら魔法か、幻覚か、はたまた某奇妙な冒険的な力の持ち主が近くにいるのか。そういった可能性がまだ高かった。
ゆっくりと、警戒しながら家に近づいていく。家の周りには特に罠とかは無く、スムーズに玄関前に来れた。問題はここからだが、覚悟を決めてドアノブを掴む。
……何も起こらない。ならばとドアノブを捻る。やはり何も起こらない。そしてカギがかかってないらしくそのまま開けて中に入った。その後家の中を探索したが、特に罠もない、ただの広めの1LDKだった。
しかしまだ俺は疑っていた。本当に俺の能力で生成されたのか、まだ確信が持てていない。そこで、俺は1つ試してみた。
「コンソメのポテチと冷えたコーラが欲しいなぁ」
すると、リビングの机の上にポテチの袋――のようなものと、ラベルのないコーラのボトルがコップと一緒に現れた。
すぐさま近寄り、ポテチの袋を開けてみる。うん、よく食べるポテチと同じような薄さだ、食べてみるとしっかりコンソメ味だ。コーラもよく冷えていて美味い。
もう1つ試してみる。俺は「面白い漫画とゲーム」と言ってみた。しかし、これは1分以上待っても出てこなかった。
これでようやく理解出来た。さっきの戦闘で急に出てきた盾も、この小屋も、ついでにポテチとコーラも、全部俺が望んで、そして生み出したものだ。間違いなく俺の能力が使用されたのだ。
そしてもう1つ分かったのは、曖昧すぎるとものが出てこないということだ。「サバイバル」も「面白い漫画とゲーム」も、結構曖昧な表現だ。割と重要と感じる点が、個人の観点によるものが大きいからだろう。俺も面白いゲームが欲しいと言って激ムズパズルゲーム渡されたらちょっと違うと思うしな。
ともかく能力の仕様は少し分かったが、このままなにかとアレが欲しいコレが欲しいと言葉に出していては、なんというか大分恥ずかしい。欲しいもののイメージは頭の中で考えて、それを「つくる」為の合言葉を言う方針にした方が色々スムーズになる。
となるとその合言葉だが……やはり簡潔に〈クリエイト〉とするのが良いか。というより、能力の読み的にこれしか思い浮かばない。厨二病ならもう少しカッコいい詠唱にするのだろうが、俺は恥ずかしがり屋だし、面倒くさいのでこれで良しとする。
さて、合言葉も決定したことだし、そろそろこの能力の扱い方をじっくり考えたいところだが、その前にまだやるべき事がある。それはそう、完全な安全地帯の確保だ。この小屋は確かにいい出来だが、それでも大量にモンスターが襲って来たら壊れる。なので俺以外の生き物が寄り付かないよう結界かバリアが欲しい。
という訳で早速イメージしてみる。範囲は半径100メートル、俺以外には探知出来ず、この中にいる俺の存在も探知できない。そして俺以外がなんとなく近寄らなくなるバリアのような装置を。
「〈クリエイト〉」
机の上に手をかざしながらそう詠唱すると、手のひらから明るい、しかしそこまで眩しくない光が出た。そしてその光が段々形を変えてゆき、しっかりとした物質になった。
伸縮するランタンのような形状をイメージしたが、上手くいったようだ。せっかくだし名前を付けよう。そうだな、「生き物払いバリア発生装置」!――我ながら安直かつダサいネーミングセンスだ。やはり普通に「バリア発生装置」と呼ぼう。
ついでにあらゆるものの特性や能力、スキルや魔法を見られるように「スキャナー」も作った。腕時計型で、見えないレーザーセンサーが付いている。コレに当てれば即座に相手の情報が丸分かりだ。もちろん、相手には見えないホログラム投影仕様だ、素晴らしい!
【想造】を使用してみると、意外と大雑把でも意図通りの仕様のアイテムが作れることが分かった。しかもなかなかデザインが良い。かなり楽しい能力を貰った。
とりあえずまだバリア発生装置を起動してなかったので、起動するために装置の上の方を持って引っ張る。引っ張りきった後、時計回りに90度回転させると、装置が青く発光する。これが起動した証だ。バリアなので実感出来ないが、これでようやく安全地帯の確保が出来た。付けっぱなしだった盾も外そう。
ついでにスキャナーも使用してみる。試すのはバリア発生装置で良いだろう。スキャンすると、さっき思い描いた効果に加え、一定の攻撃を防げるバリアらしい効果もあるのが分かった。その他にも、効果の発動条件、発動中か否か、色々な情報が表示された。
こうして項目を見るとなかなか面白い。ロボットものの作品によくあるカタログスペックを見ている気分だ。すごくワクワクする。
しかし、少し気になったのは「壊れやすさ」という項目があったことだ。スキャナーもバリア装置も、一応壊れにくいようだが、壊れやすいものが作れるということなのだろうか。
少し試したいことができたので、まだ作ったことのないものを作って試そうと思う。やはり異世界ファンタジーならではの剣、ブロードソードを作るか。
とは言え、剣の造詣に深いわけではない。というか知識は大体ゲームや漫画仕込みのニワカだ。この先もそういう感じで行くので、許して欲しい。
と、誰かに言い訳するように呟いたところで、早速作っていく。見た目や性能はただのブロードソードを、壊れやすいものと壊れにくいもの、そして絶対に壊れないものに分けて作ろうと思う。
俺が再び〈クリエイト〉と唱えると、ブロードソードが3本、机の上に生成される。3本ともスキャナーでは望み通りの性能をしている。
となると次に欲しいのは実験場だが、これは地上ではなく、地下に造ろうと思う。やっぱり地下に何かバカでかい施設があるのはロマンがあるからな。あとバリアの効果が効かなかった時にただの小さい家だと思わせることが出来る、というのを今思い付いたからでもある。
そうと決まれば早速造ろう! ということで寝室に来た。リビングに地下への入口を作るより隠しやすいだろうし、なによりやはりロマンがある。利便性も少しあるしな。
大きさはまあ、野球ドームくらいとも思ったが、それだと持て余しそうだから、サッカー場くらいの面積で、高さは20メートルくらいでいいだろう。後は実験場というくらいだから、攻撃を受けても無効化出来る特性を付与して、あと小部屋もいくつか欲しいな。
という感じであれやこれや付け足してイメージしたものを〈クリエイト〉で造る。床が数秒光った後、今いる前の方の床に地下への隠し扉が出来た。どうやら、一度つくったものでも後から継ぎ足したり、変更したり出来るらしい。結構制約が緩いな。割となんでも出来る能力なんじゃないか?
隠し扉を開けると、地下への階段が姿を現す。その階段を降っていく――と言っても、精々十数段程度しかないが。そうして降った先は数メートルのまっすぐな廊下になっており、その先には、なんと、世界観ぶっ壊れ間違いなしのエレベーターの扉が!!
……いや、もうこのモダンな小さい家のせいで、世界観もクソもないだろう。気にしてはいけない。そもそも動力源の電気はどこから来ているのか、電気以外で動いているのか、俺でも分からないのだから、ツッコまないで欲しい。
そんな問題は遠くにぶん投げておいて、エレベーターに乗る。地下1階から地下7階まである。地下1階はこのフロアなので、部屋があるのは地下2階以降になる。結構大きく造りすぎたが、まあ地下施設はデカければデカいほど良いと思っているので、良しとする。
地下7階のボタンを押すと、エレベーターが動き始めた。待つこと十数秒、到着したことを知らせる音とともにエレベーターの扉が開く。降りると左手側に通路が伸びているので、そっちにまた十数メートル歩くと、やはり左手側に扉がある。そこを開ければ、地下実験場に到着だ。
実験場の中は想定通り広々としており、また視認性が良いようにライトグレーの色合いで壁と床が構成されている。まあ単純に打ちっぱなしのコンクリートみたいな材質の壁床なんだが、あくまで実験場だから、シンプルで良い。
次にやることはもちろん実験だが、まだ足りないものがある。それは実験する為の対象だ。まあこれはダミー人形を作ればいいので、早速〈クリエイト〉で作り出す。こちらも3種類の壊れやすさを用意した。
人の上半身を模した。藁で出来た人形が出てきたので早速ブロードソードを持って何度か切りつける。壊れやすい人形は十数回でボロボロになり、壊れにくい人形はそのくらいでは目立つほどには傷つかなかった。
様子がおかしかったのは壊れない人形で、なんと斬ったそばから瞬時に傷が無くなっていった。てっきり頑丈なのかと思っていたが、再生能力を付与されていると、スキャナーで確認した。
その後もブロードソードでダミー人形を切り続けたり、大きな金属プレートを人形の首に紐でかけて切りつけたり、酸性の液を少量かけたりと実験した。
結論から言えば、壊れやすい性質を持った剣も人形も、本当にすぐ壊れてしまうのに対して、壊れにくい性質を持った剣や人形はしばらく使い続けても問題ないことが分かった。酸化や腐食、刃こぼれにもある程度強くなるようだ。
壊れない性質を持ったものについては、何をやっても全然壊れる素振りを見せなかった。恐らく見えない速度で再生能力が発動している、としか思えないくらいに、破壊できなかった。
現状知りたい【想造】の能力については大体分かったのでまとめると……
1、大抵のものはつくれるが、要素が曖昧すぎるとつくれない。
2、つくったものを壊れやすくすることも、壊れないようにすることもできる。
3、自分がつくったものなら後からでも特性を付与出来る。
4、壊れないものには自動的に再生能力が付与される。
……とまあ、こんなものだろうか。まだ把握しきれていないこともあるだろうが、今日はもう疲れたからこんなものにしておこう。
スキャナーには腕時計としての機能もあるので時間を見ると、もう夕方5時である。エレベーターで寝室に戻り、窓の外を確認すると、やはり暗くなっていた。時間の流れは、恐らく地球と同じなのだろう。詳しい日付けはまだ分からないが。
まあ細かいことは明日にしよう。今日はいきなり神様が二柱も出てきて、異世界に飛ばされて、能力の確認をした。それで十分だ。俺にしてはなかなか濃い1日だった。まあ明日も、さらにはこれからも濃い体験になりそうだが。
俺は夕食として、豚肉の野菜炒めと、ご飯、味噌汁を能力で作って食べた。調味料の加減が絶妙で美味かった。その後風呂に入り、これまた能力で作ったパジャマに着替える。いい着心地だ。そして、フカフカのベッドに入る。もう最高だ。これだけで能力貰って異世界に来た恩恵を感じられる。
時刻は夜8時。寝るのには早い時間だが、インターネットもテレビの電波もないので、やることが無い。が、思っていたよりもかなり疲れていたのか、すぐに目蓋が重くなる。
明日はどんなことをしようか、軽く考えながら眠りについた。




