魔王城の談話室 — 交わされる約束
重厚な木製のテーブルを囲み、サティ、リリアナ、そして勇者レイナは静かに顔を合わせていた。
窓の外では黒い雲が垂れこめ、城の重厚な雰囲気を一層際立たせている。
リリアナが口を開く。
「まずは、魔国の現状を詳しく話しましょう。
黒霧の拡大は予想以上で、私たち魔族にとっても脅威になりつつあります」
サティは資料を広げながら頷く。
「その霧の拡散は、我々人間界にも影響を及ぼし、異常気象や魔物の暴走が増えている。
もしこれを放置すれば、双方の滅亡もあり得る事態です」
レイナは資料に目を走らせつつ、言葉を継ぐ。
「人間の側でも危機感は共有しているが、魔族との対話は容易ではない。
長年の敵対関係が根強いから」
リリアナはため息をつき、静かに言った。
「だからこそ、こうして三人が集まったのです。互いの誤解を解き、協力の道を探る。
それが今、最も必要なこと」
サティは二人を見つめ、静かな決意を込めて言う。
「私たちは過去の憎悪に囚われず、新しい未来を築かねばなりません。
魔族も人間も共に生きるために」
レイナは険しい表情を少し和らげ、頷いた。
「簡単ではないけれど、私も信じたい。共存の可能性を」
リリアナが微笑み、手を差し出す。
「では、この約束をもって、私たちの協力関係の第一歩としましょう」
サティとレイナもそれぞれ手を重ね、三人は新たな盟約を交わした。
窓の外の黒雲が少しだけ晴れ間を見せ始めたように感じられた。




