黒き城の再会――魔国への訪問
暗雲が垂れ込める魔国〈ヴァラメディア〉の空。サティの馬車は黒い石畳の道をゆっくりと進んでいた。
「久しぶりね、サティ」
静かな声が闇の中から響く。
黒い長髪を揺らし、黒衣を纏ったその女性は、かつての魔王――リリアナ。
二人は戦火の前から秘密裏に信頼を築き、互いの立場を理解しあっていた。
「リリアナ、久々の訪問になってしまったわね」
サティは微笑みを浮かべながらも、その瞳には決意が宿っていた。
「世界がまた不穏になっている。私たちの力で、少しでも均衡を保たなければ」
リリアナは深く頷き、静かに城の奥へと案内した。
二人の会話は、まるで昔からの友人のように自然だった。
政治的な駆け引き、領地の現状、魔族と人間の共存への希望。
だが、その密談の空気を破るように――
「そこの魔王! そしてお前は何者だ!」
銀の剣を携えた若き勇者が、声を荒げて乱入した。
彼はサティの存在を知らず、目の前の者が敵か味方か判断がつかない。
リリアナは静かに剣を構えながら、冷ややかに言った。
「勇者よ、戦う前にまず話を聞きなさい」
しかし、勇者は鋭い目でサティを睨みつけた。
「魔王と共にいる者は敵に違いない。話す価値などない」
サティは咄嗟に一歩前に出て、手を広げた。
「待って! 私は敵じゃない。この場で無用な争いを望んでいない」
勇者の剣先がわずかに揺らぐ。
緊迫した空気の中、三者の関係がこれからどう動いていくのか――。




