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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第10章 異界編

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霧核の扉、開かれし禁忌

ヴェリムの中心――かつて“禁域”と呼ばれたその場所には、巨大な環状構造が広がっていた。


石造りの祭壇、浮遊する魔力の層、そして空間の中心に佇む、銀黒の扉。


その前に立つひとりの男。

全身を黒の衣で包み、顔には仮面。

だが、彼の周囲だけ霧が穏やかに流れていた。


「……来たな。再契約者リ・コントラクターよ」


ザイデン。

かつて“霧理論”を提唱し、異界と現世をつなぐ門を開いた存在。


今や彼は、自らが創り出したこの《霧核》の管理者となっていた。


「あなたが……ザイデン」


「変わらぬ顔だ。いや、魂が変わらぬのか。

フィーネ・ラインベルク。……いや、“エリシア・アストリア”よ」


フィーネの手が、剣の柄にかかる。


「私の名前は“フィーネ”よ。たとえ過去にどんな因縁があっても、今の私の意思は私が決める」


ザイデンは、わずかに微笑んだ。


「そうか――ならば証明してもらおう。

この“霧核”に刻まれたすべての記憶と想念を前に、お前が“自分自身”でいられるかどうかを」


彼が手を上げると、背後の銀黒の扉が音を立てて開いていく。


その奥から現れたのは――


> 幾千もの記憶の残響。

失われた世界の断片。

死者たちの声。

そして、“かつてのフィーネ”自身。




「これは……!」


サティが後ろで叫ぶ。


「精神侵蝕が始まってる。これは、記憶を剥がして精神を削る“魂喰いの領域”!」


「サティ、私に任せて」


フィーネは前へ出る。

剣を構えるその姿は、もはや迷いがなかった。


「この剣は、ただ戦うためのものじゃない。

“記憶”と“想い”を受け継ぎ、未来へ繋ぐためのもの」


ザイデンの仮面が、ピキリとひび割れる。


「そうか……ならばお前に問おう。

“滅びる運命にある世界”を前にして、なお未来を信じるのか?」


「当たり前よ!」


フィーネの叫びが、霧の海を裂く。


「私は、何度でも選び続ける。

過去がどれだけ傷だらけでも、今の仲間たちと歩む未来を!」


ザイデンの瞳が、静かに冷える。


「ならば……それを証明してみせろ。

私の全てをもって、お前を拒絶しよう――」


霧が爆発し、次元の重なりが崩れる。


その空間は、もはや“現実”ではなかった。


《霧核の心臓》。

ザイデンが自らの存在を結晶化させた、異界のコアそのもの。

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