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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第10章 異界編

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契約者の資格

霧が晴れた。

記憶の幻影が消え、石造りの通路が再び姿を現す。

フィーネは静かに、剣を鞘に収める。


「……過去に何があったとしても。

私が選ぶのは、今の私の意思よ」


心の中の“エリシア”は黙っていた。

けれど、その沈黙こそが――肯定だった。


「フィーネ!」


サティの声が響く。後方から追いついてきた彼女は、フィーネの顔色を見て驚く。


「……なんか、強くなってない?」


「……かも」


微笑みながらそう返す。

けれど、その強さは“前に進む覚悟”に裏打ちされたものだった。



***


ふたりは再び都市の中心部へと歩き出す。

道の途中、黒曜石のような小さな神殿が建っていた。


「ここが……第二の結界?」


「違う、これは……」


フィーネが扉に手をかけると、それは霧を吐き出しながら開いた。


中にはひとつの台座と、浮かぶ《契約剣》の残片があった。


「……これは……」


> 『契約者・資格確認。魂の記録――一致。

刻印剣ルクレシア、第二段階への適合を開始します』




神殿全体が光を放ち、フィーネの手にした剣が振動する。


「なにこれ……!?」


> 『問います――あなたは、エリシア・アストリアですか?』




「……違うわ。私は、フィーネ・ラインベルク。

でも、もしあなたが求めるのが“魂の資格”なら、答えは……“Yes”よ」


その瞬間、剣が放つ光がフィーネを包み込む。

彼女の胸の奥、魂の深層に刻まれていた記憶の輪が、解かれていく。


> ――あなたは、再びこの剣を握る。

世界が滅びる未来を見て、それでも“誰か”を信じて。




剣が変化した。

かつてエリシアが使っていた、白銀に光る双刃の形状――


《契約剣・ルクレシア:第二形態》

“記憶と意志を統合し、空間そのものを断ち切る”特性を持つ、霧境特化の対魔剣。


「……すごい……でも、これは……!」


「力だけじゃないわ。責任も、未来も背負わせられる」


それでも、フィーネは剣を握る。


「進もう。この先に、ザイデンがいる」



***


都市中央に近づくほど、空気は濃く、重くなる。


そこに立ちはだかる影。

背中に霧の翼を持つ異形の剣士。

そして、聞き覚えのある声。


> 「契約者よ……ようやくその資格を手に入れたようだな」




フィーネは目を見開く。


「……あなた、まさか……」


> 「ああ。“ルゼス”だったものだ。

だが今は《霧翼の従者ヴェスティア》と呼ばれている」




過去に斬った青年が、異界の守護者として蘇っていた。

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