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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第7章 野外演習編

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白銀の牙、刻まれし証

私は今、学園からの依頼で生徒たちと共に野外演習に来ている。

各グループは4人編成で、それぞれが実習課題を遂行する形だ。私は一つのグループを担当し、彼らの行動を見守りつつ、周囲に目を配る。


「最近の子は優秀ね」

そう呟く私の耳に、やや遠くから不穏な言葉が飛び込んできた。


「…あんな弱そうな奴が冒険者ってマジなのか?」

「卑怯な手段で冒険者になったんでしょ」


……ふふ。よくあること。疑いの目で見られるのも、もう慣れた。私は気にせず歩を進める。


やがて、目的地の街が見えてきた。今回の演習の目標地だ。この街の冒険者ギルドで、討伐した魔物の素材を売却するのが課題となっている。


「素材も売ったし、宿に向かうか」

フリックが声をかける。私は頷き、生徒たちと共にその夜を宿で過ごした。


翌朝、帰路についた私たちは、再び森へと足を踏み入れる。


「今回の実習は簡単だったよな!」

「そうですわね」


そう言って油断している彼らを見て、私は内心で首を振る。

――集中が切れた時が、冒険者にとって一番危険なのに。

だが実習である以上、自ら気づかせるのも学びの一部だ。口出しはしない。それが冒険者というもの。


そんな中、森の奥に異様な気配を感じた私は、すぐさま立ち止まる。


「……っ、馬車を止めろ!」


フリックの鋭い指示が飛び、クロアが慌てて馬車を止めた。そこにいたのは――


「ホワイトタイガー……!」

一同が息を呑む。美しい白銀の毛並みを持ち、鋭い眼光を放つ希少な魔物だ。


「……流石に学生にホワイトタイガーはキツいか」


私はぽつりと呟いた。だが、フリックは私の前に立ち塞がる。


「お前は下がってろ!こいつは俺たちが倒すんだ!」


その目は真剣だった。だけど、無謀だった。


「強がらなくていい。勝てないでしょ」

私は一歩、彼らの前に出る。


「お前だって勝てないだろ! だったら俺が囮になるから、早く逃げろ!」


その言葉に、私は微笑んだ。


「スキル《錬金術》――武器創造」

空中に光が走り、私の手に双剣が現れる。研ぎ澄まされた銀の刃が、太陽の光を反射して煌めいた。


「なっ……」

生徒たちの驚愕が声になる間もなく、私はホワイトタイガーに駆け寄り、その脚を切り裂いた。剣戟の音、咆哮、土煙。――全てが一瞬の中にあった。


そして、静寂。


「なんだよ……それ……」

「学園の先生より強いんじゃない……?」


「強かったら先生なんてしてないわよ」


私はそう告げて、ホワイトタイガーの解体を始めた。



* * *


王都に戻った私たちは、そのまま学園の応接室へ向かった。


「サティさん、お疲れ様でした」

エリィが深く頭を下げてくる。


「いい経験ができたわ。生徒たちも成長してる」


「これからルメリアに戻られるんですか?」


「ううん、王城に依頼報告に行ったら、そのまま少し遠出するつもり。ま、途中で一度帰るけど」


「遠出……?」


「教師をしてほしいって頼まれてるの」


「サティさん、本当に忙しいんですね……」


私は笑って応接室を後にした。廊下に出ると、フリックたちが待っていた。


「なぁ、お前……ただの冒険者じゃないだろ」


「どうしてそう思うの?」


「武器を創ったり、ホワイトタイガーに勝ったり……普通じゃねぇ」


私は肩をすくめて答えた。


「だって、私はギルドの受付嬢だから!」


「は?」


その場が静まり返る。


「それで、お前これから外国に行くのか?」


「ええ、そうだけど?」


どうやらさっきの会話、聞かれていたらしい。


「俺たちも連れてってくれ!」


「何言ってるのよ、学園はどうするの?」


「皆で決めたんだ。もうここじゃ学べないって」


「それでも……」


「頼む!この通りだ!」


四人が私に頭を下げる。その時、背後から声がかかった。


「どうしたの?」


――エメラ学長だった。


「学長!」


驚いた私の耳に、フリックの声が届く。


「このお姉さんがこれから外国に行くから、俺たちも連れてってほしいって!」


「……別にいいわよ?」


「えっ?」


「行ってもいいって言ったの」


「でも、まだ卒業してないんですよね?」


「あなたのとこに移籍させればいいだけよ。そうよね?サティ・フライデー・ルメリア子爵様?」


私はその場で凍りついた。


「な、なんで私のことを……」


「有名人よ、あなたは」


私は観念して答えた。


「……わかったわ。四人、連れていきましょう」


「マジかよ……冒険者じゃなくて、貴族だったのか!」


興奮と困惑が入り混じる生徒たちを連れ、私は王城への道を再び歩み始めた。

新たな旅の始まりを予感しながら。

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