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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第7章 野外演習編

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野外実習の影

「それで、野外実習というのは?」


私は椅子に腰を落ち着けたまま、学院の事務係――エリィに問いかけた。


「いくつかのグループに分かれて、魔物の討伐数を競い合う形式です」


エリィは事務書類を手にしながら答えた。


「なるほどね」


貴族の子息や令嬢が通う王立学院で、野外での魔物討伐。もし事故でも起これば、大事になるのは目に見えている。これは思った以上に繊細な任務だ。


「良ければ、私が担当するクラスのグループリストを見せてもらえますか?」


私がそう言うと、エリィは少し驚いたように目を瞬かせた。


「今、持ってきますね。少々お待ちください」


彼女は立ち上がり、足早に部屋を出て行った。


その様子から察するに、エリィ自身は直接の担当ではないらしい。どうやら裏にはもう一人、実習に関わる責任者がいるようだ。


しばらくして、扉が再び開く。


「お待たせしました」


エリィが戻ってくると、手には分厚いファイルが抱えられていた。それを私に手渡すと、私は中身に目を通した。


「……なるほど」


ページをめくりながら、あることにすぐ気づく。


「地方貴族と中央貴族が、同じグループにいますね」


「何か、問題がありますか?」


エリィがやや不安げに尋ねてくる。


「ええ。地方と中央では、魔物との実戦経験に大きな差があるわ。同じグループにするのは、正直、危険かもしれない」


「……やっぱり、そうですよね」


小さく頷いたエリィの声音には、どこか含みがあった。どうやら、彼女もこのグループ分けには思うところがあるらしい。


「実習も近いですし……今回は、私が受け持つクラスだけでも編成を見直しておきます」


「そうしてくれると助かるわ。それで、実施日はいつなの?」


「三日後です」


「なら、その前に一度生徒たちに顔を見せておきたいの。明日、挨拶に行ってもいいかしら?」


「もちろん、大歓迎です! ただ――」


エリィは少し言いにくそうに言葉を続けた。


「担任のグレイル先生には、気をつけてください。……少し、暴力的な方なので」


「忠告、ありがとう」


私は微笑みながら礼を言い、立ち上がる。


「グレイルという人物……要注意ね」


そう小さく呟くと、私は静かに転移魔法を詠唱した。


光の揺らめきと共に視界が変わり、気づけば私は再び、自分の領地の空気を吸っていた。


――学院の野外実習。その裏に、何か面倒な気配を感じつつ、私は翌日の準備へと思考を切り替えるのだった。

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