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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第6章 領地繁栄編

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新たなる迷宮と嘘の代償

事件が終わり、私は久しぶりにギルド本部で受付嬢として働いていた。


「サティ先輩、戻ってきたんですね!」

「やっぱり、先輩がいてくれると安心感が違います」


そんな声に迎えられながら、王都での穏やかな日々が戻ってきた。

もっとも、それは“しばらく滞在するように”と陛下から言われたからではあるけれど。


《剣聖》のユリアと《聖女》のルアも、それぞれの国に一時帰国していた。王城襲撃という異例の事件が起きたのだ。各国が混乱するのは当然だろう。留学の再開は、状況が落ち着いてからの話になる。


王城占拠事件から、約一週間。

私は陛下に呼ばれ、再び城を訪れていた。


「陛下、要件とはなんでしょうか?」


玉座の前にひざまずいた私に、陛下――アーノルド王は柔らかく微笑んで言った。


「要件は二つある。まず一つ。サティ、今回の王城占拠事件の早期解決、見事であった。その功績を称え、そなたを子爵へと昇爵する」


「わ、私……偉くなるんですか?」


つい、顔が綻んでしまう。


「少しばかり、な」


呆れたように言われたけれど、それでも悪い気はしない。


「ありがとうございます」


頭を下げた私の胸には、少しだけ誇らしさが芽生えていた。

……が、それと同時に、胸騒ぎもする。


(これで一つ目、でしょ……?)


「そして二つ目だが――」


そう言ったところで、陛下が突然口を噤む。


「陛下、大丈夫ですか?」

傍らの護衛が心配して駆け寄った。


「問題ない。少々、驚いただけだ」


深く息を吐き、陛下は再び話し始めた。


「実は、新たにダンジョンが出現した……らしいのだ」


「らしい?」


私は眉をひそめる。


「ダンジョン出現の報告は届いている。だが――それらしい建造物が、どこにも見当たらないのだ」


「……ふむ」


ギルド職員としても冒険者としても、その異常さがすぐに分かった。


「ダンジョンの中に、新しくダンジョンができたんじゃない?」


ふと、私がそう呟くと、静まり返った場に空気が揺れた。


「ダンジョンの中に……新しく?」

「サティ、何を寝ぼけたことを言ってるんだ」


「寝ぼけてなんかないわよ。ほかに説明がつく?」

「……それも、そうだな」


陛下も半ばあきれながら同意してくれた。


「とにかく、前に探索したダンジョンに行って確かめてみます」


「任せたぞ、サティ」


私は一礼して王城を出ようとした。

今回ばかりは慎重に行動すべきだと考え、ユーリシア様は誘わないと決めた。


……なのに。


「サティ! どこに行くの?」


背後から聞き慣れた声が響く。


「ひ、姫様!? ご機嫌麗しゅうございます!」


どうして今ここに!? いや、今は言い訳を考えないと――!


「どこに行くの?」

ユーリシア様は、私と二人きりのときはいつも敬語を使わない。

だからこそ、その声に含まれたわずかな怒気に気づいてしまった。


「そ、それはですね。……買い物、に……」


「本当に買い物?」


「……はい」


目を逸らしながら答える私に、決定打が飛ぶ。


「サティさん。ダンジョン攻略、気をつけてください」


そう言って現れたのは、王の付き人だった。

恐らく、陛下に言われて私を見送るために来たのだろう。


「ありがとうございます。気をつけて行ってきます」


(うぅ……今のは完全にアウト……)


案の定、付き人が去ると姫様が鋭く問い詰めてきた。


「サティ。……どういうこと?」


「……買い物に行くんじゃなかったの?」


言い逃れは、もうできない。


「それは……」


――もう、ホントのことを話すしかないらしい。


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