陰謀の終焉と真実の刃
「あなた達、なんで城を占拠したの?」
激しい剣戟が交差する中、サティ・フライデーは目の前の女に問いかけた。彼女はこの襲撃を率いていた賊の親玉、リオリア。
「私はね、この国の貴族ってやつが大嫌いなのよ」
レオリアは吐き捨てるように言う。怒りの炎がこもったその声には、ただの私怨ではない何かが感じられた。
「貴族は、自分たちのことしか考えてない。民の苦しみなんて興味がないくせに、偉そうにふんぞり返って……!」
「確かに、そういう輩もいるわ。だから、否定はしない」
サティは冷静に答えながら、剣を交える。火花が散り、鋼と鋼が唸る。
「でもね、私が出会ってきた貴族たちには、そんな人はいなかった」
「お前は、上っ面しか見えてないんだよ。根本的なところ、本心を分かっていない」
「そうかもしれない。でも、世の中って、見えないからこそ希望を持てることもあるのよ」
そう言いながら、サティはレオリアの剣を軽く受け流し、懐へと踏み込む。そして一閃――彼の脚に鋭い切り傷を刻んだ。
「ぐ……! あんた、さすが《死神》ね……」
レオリアは苦笑しながら膝を折った。予想以上に深い傷だったらしい。だが、彼女の顔にはなぜか安堵のようなものすら浮かんでいた。
「サティ! 終わった?」
フィーネとルアが駆けつけると、サティは剣を次元倉庫へと仕舞いながら頷いた。
「ええ、もう大丈夫。終わったわ」
レオリアのポケットから、魔道具が見つかる。それは通信や魔術を妨害するための装置――結界のようなものであった。
「この魔道具が、連絡を遮ってたのね」
そこへ、現れたのは人質として捕らわれていた宰相だった。
「それで……この賊たちはどうなさるおつもりですか?」
「戦士隊に引き渡します」
サティは簡潔に答える。
「宰相も人質だったんですね」
「ええ、まったくもって災難でしたよ」
そう言いながら、宰相はにこやかに笑い、拘束された賊たちの引き渡しに協力した。ルアもそれに頷く。
「お願いします」
「お気になさらず。これも、私の仕事ですから」
こうして王城襲撃事件は幕を閉じた――かに思えた。
「これで、終わったわね」
「しばらくは、ゆっくり休まないとね」
だが、フィーネが鋭い目でサティに言う。
「まだ終わってないよ、サティ」
「……!」
そうだった。忘れていたわけではない。ただ、心のどこかで蓋をしていた。
「ユーリシアを……まだ助けてない」
「今思うと、おかしいよね」
「何か気がかりでも?」とルアが尋ねる。
「宰相のあの言葉、引っかからなかった?」
「“近くに冒険者がいる”ってやつ?」
「そう。ここは王城。そんなに簡単に冒険者が出入りできる場所じゃない」
3人は顔を見合わせた。
「つまり……宰相は嘘をついていた?」
「可能性は高いわ。とにかく、本人に聞いてみよう」
サティは門番に確認を取ったが、宰相はまだ城から出ていないという。
「……怪しい。ルア、探知魔法使える?」
「ええ、任せてください」
数瞬の静寂の後、ルアが目を開いた。
「怪しい気配、見つけました。ユーリシア姫の部屋に向かってます!」
「やっぱり……!」
サティはためらわずに《転移》の詠唱を開始した。
「《転移》――」
一瞬にして、ユーリシアの部屋にサティは現れる。
「ユーリシア!」
「サティ!? どうしてここに……」
「そんなことどうでもいい。とにかく、今すぐ移動します」
彼女の手を取り、再び転移――辿り着いたのは、サティの領地ルメリアにある屋敷だった。
「サティ……意外と大胆なんですね」
「ごめんね、説明もせずに」
だが、その後に明かされた真実は、想像を遥かに超えていた。
――宰相の部屋からは、不正の証拠が大量に見つかり、国家反逆罪が確定。
爵位も貴族の地位も剥奪され、国外追放となった。
クラウン王国を揺るがした王城襲撃事件は、宰相の陰謀という形で終焉を迎えた。
「これで……しばらくは領地のことに専念できそうね」
そう呟くサティの瞳は、ただ前だけを見つめていた。




