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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第5章 王城占拠編

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偽りと真実の邂逅

「サティさん、これからどうしますか?」


城内への侵入に成功した私とユリアは、静まり返った廊下をゆっくりと進んでいた。緊張感が張り詰めた空気の中、ユリアがこちらを見て尋ねてくる。


「ユリアは、どれくらい戦えるの?」


《剣聖》という肩書きはあれど、私は彼女の戦闘を実際に見たことがなかった。その実力がどれほどのものなのかは、想像の域を出ない。


「大抵の敵なら倒せるかな」


フィーネは自信たっぷりに、しかしどこか軽やかに答えた。


「その言葉が聞けて安心したわ」

頼もしい仲間がいてくれるのは、心強い。


そう思った矢先、フィーネが小声で私の耳元に囁く。


「サティ、敵だ」


私はすぐに息を潜め、音を立てずに賊の姿を確認する。


「……はぁ、これだと全員を相手にしてたら時間がかかるな」


「どうするの?」


「スキル《大罪》――色欲・変貌」


その瞬間、私の身体が淡い光に包まれ、形を変えていく。光が消えたとき、そこには聖女ルア・シエンと瓜二つの姿の私がいた。


「え、どういうこと!? 私が2人いる!?」


「私のスキルの一つよ。“姿”と“声”を他者に変える能力。相手に気付かれなければ、堂々と近づける」


「よく分からないけど、すごいね……」


「さて、行きますよ、ユリア」


戦闘で無駄な血を流さないため、私は賊たちを魔術で一人ずつ眠らせていく。ユリアも非殺傷での戦闘に合わせ、的確に相手を無力化していった。


そして――


「あそこ!」


ホールの奥に、捕らえられていた使用人や侍女たちの姿を発見した。


「フィーネ様! ルア様! ありがとうございます!」


人質たちは、私を本物のルアだと勘違いして感謝している。まぁ、今は見た目だけならそうだから、別に否定はしない。


しかしそのとき――


「おいおい、こりゃどうなってるんだ」


私たちが入ってきた扉が開かれ、ずんと重たい気配を纏った男が姿を現した。周囲の空気が、一瞬にして変わる。


「あなた……この賊の親玉ってとこかしら?」


「《剣聖》に《聖女》か。……あぁ、知ってるとも。来てくれたのがあんたらだけで良かったよ」


「どういう意味?」とユリアが問い返す。


「《死神》が来てたら困ってた。あんな怪物、まともにやり合って勝てるわけがないだろ」


その言葉を聞いて、私は肩を竦めた。


ちょうどそのとき、もう一つの扉が開き、陛下と――本物のルア・シエンが入ってきた。


「フィーネさん! サティさん! 大丈夫ですか!?」


「サティ……ちょっと待って。なぜ聖女殿が2人いる?」


「えっ、私がもう1人!?」


動揺するルアに、私は小さくため息をついて、顔を戻す。


「分かったわ、正直に言うから」


「あなた……誰ですか?」


「私は《死神》――サティ・フライデーよ」


スキルを解き、変化が消えると、その場の空気が一変した。


「し、死神……!」


残りの賊が驚愕し、武器を構える。


「驚くな! 奴は今、一人だ。しかも本気は出さないだろう。今ならまだ勝ち目がある!」


「私たちのことを忘れてもらっちゃ困りますね」

とユリアが剣を構え、ルアも祈りの詠唱を始める。


「よし……こっちは2人を頼む! 俺は《死神》とやり合う!」


賊の親玉が、私の前へと歩み出る。


「噂では色々と聞いてるが、全部が本当なわけじゃないだろ」


「あなたの名前は? 討伐した後で名前が分からないと、幽霊でも殺した気分になるわ」


「ふっ、礼儀正しいな。俺はアステル・サイナス。この賊のリーダーだ」


「私は《死神》、サティ・フライデー」


名乗りを交わし、互いに静かに間合いを詰めていく。


「――後は、やり合うだけだ」


かすかに笑ったアステルが、血の気配を滲ませて私へと迫る。

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