カメオの行方⑥
「──では、また何かあれば」
そんな挨拶をして清川親子は帰って行った。長谷川も何時ぞやの様に遠い目をして見送った。
完全に清川親子の姿がなくなった頃、長谷川は隣に立つ相馬をギロリと睨んだ。
「どういうつもりだ?」
声を低くして尋ねる長谷川に対して、相馬は酷く楽しげだ。悪戯の成功した子供のようにも見える。
「良いじゃないか! 清川親子は憂いが晴れたようだし」
「そこじゃあない! どうして俺が、お前の雇ってる探偵って事になっているのかという事だ」
藤吾の話では、どうやら春先に出会った九条院家の奥方も長谷川の事を探偵と思っているらしい。そう言えば、芳乃も長谷川の事を探偵だと思い込んでいた。
──何故に?
理由は言わずもがな、この横に立っている男だろう。長谷川は溜息をひとつ吐くともう一度、相馬に向き直り、次に疑問に思っていた事を尋ねた。
「そもそもお前と芳乃さんはどういう関係なのだ?」
「おや、気になるのかい?」
相馬は目を丸くして、長谷川に向き直る。どことなく嬉しそうなのは気のせいだろうか。
「それはそうだろう。お前と芳乃嬢がどんな繋がりなのか想像がつかん」
長谷川がそう言うと「実はね」と相馬は声を潜めて言った。
「芳乃嬢は僕の婚約者なんだよ」
長谷川は目を瞬かせた。
──芳乃嬢と相馬が婚約者……。
一回り年の離れた二人の並ぶ姿を想像するが、何だかへんてこな組み合わせにしか思えない。
「あり得ん」
「へっ、何で?」
長谷川が渋い顔をして言うと、相馬は目を丸くする。
「お転婆娘の芳乃嬢と放蕩者の相馬だろ? 幾ら名家の子息子女でもこの組み合わせはしないだろう。親が反対するんじゃないか? それにあまり似合っていない」
至極真面目な顔で長谷川が言うものだから、相馬は彼らしくなくぽかんと口を開けたまま呆然としている。ただ、言っている当人は思考に気を取られており気が付いていない様だ。
「ふぅん? では、僕にはどんな人が似合いだと?」
「そうだな。お前には、清楚で楚々とした女性か……、いや、お前を尻に敷くぐらい気の強い女性が似合いだな」
うんうんと自身で頷きながら、長谷川が言うと、相馬は「ぷっ」と吹き出し大笑いを始めた。一頻り笑った後、彼は長谷川に向き直った。
「──で、結局お前達はどんな関係何だ?」
何故笑われたのか分からないと言った様子の長谷川は渋い顔をしながらも、再び尋ねた。
「秘密にしておくよ。その方が面白そうだ」
そう言って去っていく相馬の後ろ姿を見送りながら長谷川は怪訝な顔をした。
「何だそれは?」
しかし、表情とは裏腹にその心は晴れやかだ。
長谷川は清川親子の来訪で固くなっていた身体をほぐす為に夏の青空に向かってぐっと伸びをした。
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