第80話 空を飛ぶ船
翌早朝、ひっそりと起きて準備をする。
静かに家の外に出ると、
「遅いぞ。コウ」とドルンと弟子5人に山羊青年のオルクにウサギ人族の姉妹ミスとケイ、そして犬人族の少女ロルに半分寝ている子供達3人がいる。
なんで?
「置いて行こうなんて思って無いよな」とドルン。
「そうですよ。置いていくなんて酷いですよ」とオルク。キシシと笑うウサギ人族の姉妹、少し涙目な犬人少女。
「分かった分かった。で、どうしてだ?」
「そんなの恩を返す為だし、それになコウについて行った方が面白そうだ」とドルン。それを聞いた皆んなも頷く。
「恩なんて良いぞ」
「そうはいかんな」とドルン。横で姉妹がキシシと笑う。
「まぁ、良いか」とコウは諦める。そしてファントムワゴンを2台出す。
「な、なんだこれは!」とドルンと弟子。ドルンに動かし方を教えてそちらには弟子5人乗り、こちらにはオルクと姉妹に犬少女と子3人が乗る。
「何処に行くんだ?」とドルン。
「一度海岸沿いの集落に行って移動手段を作成する」
「うん?これではダメなのか?」
「道があれば良いが子供もいるしな。特別な移動手段を作る」
「おお、それは面白そうだな」とドルンは笑う。弟子5人も目を輝かしている。
「では行くか」とファントムワゴンを動かす。ドルンは初めはおっかなびっくり動かしていたが30分も操作すると慣れて後をついてくる。
途中でオルクにも操作を教えて代わる代わる動かしていく。後ろのドルン達も途中弟子が代わる代わる操作しているようだ。
そんなこんなで数日で海岸沿いの集落へと到着する。
とりあえずの住環境を整えると、
「で何を作るんだ」とはドルン。何かウズウズしている。紙を1枚出す。簡単に作成物の全体像を書いていく。それを見たドルンは、
「船か?でも何か違うな。何だこれは?」
「空を飛ぶ船だ」
「おい、そんな事が出来るのか?」
「出来る」と収納から船を出して海に浮かべるとドルンと弟子5人を乗せる。そして空へと上昇していく。
「おいおい!こりゃぁどう言う事だ!」と興奮気味なドルンと弟子5人。着水して構造を見せると目を点にしている。
「これだけで飛べるのか?まぁ、あの魔力増幅炉は分からんが」
「そうだ。だが前に進むには他の動力が必要だ」と船にデカい扇風機のような推進器を付けて、もう一度上昇してプロペラを回して前進してみせる。
「おお、こりゃあすげえな」と煩い6人。
着水して暫くすると30人の獣人が凄い速さで駆けて来る。
「敵か?」とコウ達は身構えるが、
「コウさん!置いていくなんて」と狼人族と犬人族の若者30人。話を聞くと彼らに身寄りは無くコウには恩を感じて追ってきたと、
「そうか」とドルンと顔を見合わせて苦笑する。とりあえず住環境を整えてこれからの事を話す。
まぁ、彼らは行く所が無いので着いて来ると、それに面白そうだしとか言っている。
それで初めの計画より人数が増えたので設計を変更する。大型化だ。
形も変更する。居住区も充実させたい。一応、念の為に定員150名程度とする。
船体を作り始めて数日が経ったある日、狩りに行っていた狼人族達が羊人族の家族4人を連れて来る。
どうやら人族が襲ってきた時に逃げたが森で迷ったようだ。この4人は元々鉱山街で宿を運営していたとか。
事情を話したら特に戻らなくても良いから連れて行ってくれと頼まれる。
何で?鉱山街に宿があるんだよね?
羊人族のルーラさんによるとロマンがとか言っている。そうですか。子供達と奥さんはどうしますか?と聞くが奥さんのメロさんも目をキラキラさせて世界を回るのねとか行っている。子供達の2人、上の娘のアルちゃん(15)と弟のロル(13)は何でも良いようだ。
羊人族はおっとりというかのんびりで大らかだね。迷ってしまったアッハッハだからね。
でも料理が出来て洗濯や部屋の掃除が得意なんだとか、これは助かったかな。いつも料理は私が出していたから、これからは食材だけ渡してある程度料理を新たに教えれば良いかな。
かなりの船体が出来てきた。そこでファントムギアを改造したファントムウォーカーを作成してみた。
これはファントムギアの前部に細かい仕事用の5指のアームをつけて背中のバックパックから大きなアームをつけてこれで重量物を運べるようにした。
これを使ったドワーフ6人は大はしゃぎ。作業が大幅に進む。
これを見ていた犬人族と狼人族の若者は乗ってみたいと言い出したのでファントムアーマーに乗らせてみたら何か凄い反応性能を出す。これは獣人族だからかな?
気に入った彼らは代わる代わる乗っては狩りに出掛けて大物を狩って来た。
これで彼らは全員欲しくなり一時飛空艦の製造を止めてファントムアーマーを量産して彼ら全員分作成する。
これで当分は遊んでいてくれるかな。
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