423話 連続バトルと説得力の応酬
──ガツン!!
危機察知に従って構えた鉄盾に、角兎の突進がぶち当たる。身体強化した全身でその衝撃を受け止め、受け流す様に上方へと弾き飛ばした。
盾を手放し鉄棒を展開しながら身を捻る。回転の勢いを付けて、体勢の崩れた空中の兎魔物に向かって振り下ろした。
──ダンッッ!!
鉄パイプの先を形体変化、一時的に液状化させた呪怨鉄を地面に横たわる角兎の頭や足に絡ませて即座に固化固定。
身動きをしないことを確認しつつ、ゆっくりと手を離して後退った。
「ふぅ…。こんなもんかな…?」
「お見事、です、わ。」
「…、」眼鏡ピカピカ…
今にも雨が降りそうな空の下、風メイドさんの称賛が響き、失礼眼鏡の解析光が無言でキラキラしていた。
今日も今日とて、水晶浮遊椅子に引かれる荷車旅の最中、街道の脇の向こうに手頃な魔物が居ることを失礼眼鏡さんが発見。丁度良い遭遇だと私単騎での角兎狩りを打診されたのだ。
なんでも実力を試しておきたかったらしい。
まあ、角兎は一般人には危険な魔物だし駆除することは強く推奨される。ここはエルフが多く住む大陸中央とは言え、その危険度は据え置きだろう。私としても特に否は無かった。旅の暇潰し、カラオケ大会を邪魔された怒りを思いっきり込めてやりましたとも。ええ。
まあ、そんなことはどうでもいい。何はともあれ角兎撃破完了である。
「んでは、フラットさん。『解体』、お願いしますね。」
「は…??」
私が差し出した鉄ナイフを受け取らず、「何を言ってるんだこいつは…??」って感じの間抜け顔を晒す失礼眼鏡。
「いや、この角兎の解体ですよ。ナイフ貸してあげますから、肉と皮と骨とに切り分けてください。」
「なぜ俺が。自分でしろ。」
「私、生き物の解体とか無理なんで。血が見れないって言ったじゃないですか。」
「知らん。」
記憶力の無い眼鏡だなぁ。
「フラットさんが命令したんですから、後処理くらいはやりましょうよ。」
「ならそこを退け。」『剣』、攻──!
「ちょおい!! 何焼き尽くそうとしてんですか!?」
火炎魔法を放ちそうな精霊魔導具を遮る様に両手を伸ばして阻止する。
「安心しろ、ソードなら角兎程度は焼却処理可能だ。」
「貴重な食料を焼くんじゃねぇ!って言ってんですよ!?」
「は??」
「だから! 角兎のお肉は普通に食べれるでしょう!? わざわざ殺したんですからせめてちゃんと頂かないと!」
「…、だから、自分でしろよ…。」
だから捌くの無理だって言ってんでしょうがーー!!!!
──────────
「」ビュゥン!
『』ガギンッ!!
『抑止不能。抑止不能。』フヨフヨ…
私へと放たれた火炎球を呪鉄棒の振り払いで霧散消滅させる。
そのまま鉄パイプを振りかぶれば、「ソード」の精霊魔導具──半人型の小型使い魔──との間に石の盾が出現。構わず浮遊盾ごと押し込めば使い魔に激突、勢いのまま叩き伏せる。
まとめて呪鉄で拘束しようとしたが、盾の影からヒュンッと飛び出し逃げられた。角兎との戦闘で学習されたか。まあ、いい。
「ソード」よりも厄介な土魔法を使う「シールド」を先に潰す。
鉄パイプの先を刃にしながら突き込めば、「ソード」と同じく白水晶体の半人型使い魔「シールド」は、石の盾を再度展開。鉄槍の穂先がそれを貫くも、その向こうに更なる抵抗。土の防御魔法を複数展開している模様。ならば、
「せぇいっ!!」ゴゴガンッ!
鉄槍に鉄を追加しながら上半身を水平に捻り、打撃面をやたらデカくした鉄槌でまとめて叩き割る。
危機察知で背後からのおそらく火炎球を見もせず鉄の衝立で防ぎ、盾の使い魔に追いすがる。
『抑止不能。抑止──』フヨホワァ──
「ふっ…!」
『』ゴギン!
発動しかかっていた魔法を散らし「シールド」を撃墜。そのまま角兎同様に拘束。
「次は『ソード』だ。」ぐりんっ!
『敗北濃厚。敗北濃厚。援護を要請──要請拒否受諾。戦闘を継続。』カッ、カッ、ボワァ…!
恨むならアホなご主人様を恨めオラァーー!
「ふぅ…、ふぅ…。」
「ふむ、なかなかやるじゃないか。」パチ…パチ…
「…拍手しながらその台詞で近寄るとか黒幕か何かですか。」
「何の話だ?」
「分からないならいいです。」
「気になることを思わせ振りに話すな。口にしたなら最後まで言え。」
「…物語に登場する悪役みたいな態度ですね、って言ったんですよ。」
角兎との戦闘からの勢いでフラットさんの使い魔達と模擬戦になったが、当の本人は涼しい顔して眼鏡を光らせている。どう見ても悪のフィクサーだ。
「誉めてやったら悪役呼ばわりか? こんな善良な人間を悪人と断ずる方が邪悪だろう。」
「善良な人は自分のことを善良だなんて言わないんですよ、精霊道具の作り手様?」
「ふむ、一理有るな。」
「そこは認めるんかい。」
「ああ。自分は冒険者見習い程度だと嘯く呪怨の嘘つき女の言うことだからな。流石の説得力だ。」
だあーー!!! 口の減らない奴だなぁ! 根拠も解説して事実を言ってるのにぃ!
「もういいです。それより、精霊魔導具の2人?は大丈夫ですか?」
「? 何の話だ?」
「いや、いくらフラットさんの命令とは言え、割りと全力で叩いちゃったからソードとシールドの2人?2体?は無事かな? って。」
「それの心配をしているのか…??」
失礼眼鏡が私の足下に転がる半人型使い魔達を見やる。赤と橙色の魔力光がうっすら灯ってるから全損はしてないとは思うのだが。
とは言え呪鉄で叩いたり拘束したりしたからなぁ…。
「…、激流蛇の謎分霊を従える奴はやはり考え方が違うな…。」
「…? どう言う意味です?」
「いや、いい。」
フラットさんが踵を返すと、使い魔達がフラフラとしながら浮き上がりその後に続いた。とりあえずは大丈夫そうだ。
「さて…、とりあえずご飯にするか。」思考切り替え…
アエモスさんが模擬戦の間に解体してくださった角兎を有り難く受け取り、シンプルに焼いて岩塩をまぶし昼食のメインディッシュとした。
やっぱり角兎のお肉は美味い。はぐれの個体だったからか、少々量は少なかったが…。フラットさんはあの2体を浮遊椅子の作業台で修理していて食事は必要ないとのことだったから割りと足りた。
その後、確保しておいてもらった角兎の血液を魔獣鉄に変換する実演をしたのだが、「意味不明な呪怨の活用だな…。」と何故か凄まじいジト目を頂戴した。
精霊を椅子や眼鏡に変換してふんぞり返る失礼眼鏡が言うと、説得力が段違いですねぇ?? フンッ。
次回は4月5日予定です。




