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THE GLOBAL  作者: YATA0401
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第八章 繰り返される災厄


ギギギギ……


巨大な寄生虫が非常階段を這い上がってくる。


あと数段。


あと数メートル。


「ハウンド!」


フォックスが叫ぶ。


「もう撃つしかない!」


俺はマグナムを構えた。


「全員、迎撃──」


その瞬間だった。


――ウゥゥゥゥゥゥゥン。


再び街中にサイレンが鳴り響く。


今度は先ほどとは違う、短く断続的な警報音だった。


すると。


ピタッ。


階段を登っていた寄生虫が、一斉に動きを止めた。


「……?」


ファルコンが目を丸くする。


巨大な寄生虫はゆっくりと頭部を山の方向へ向ける。


まるで、誰かから命令を受けたかのようだった。


そして。


ギィィィィ……


低い鳴き声を上げると、そのまま階段を降り始めた。


「下りていく……?」


シャドウが信じられないという表情を浮かべる。


一匹だけではない。


街中に集まっていた寄生虫たちは全て進路を変え、赤い液体の中を山へ向かって移動し始めた。


やがて赤い液体もゆっくりと引いていき、街には元の静けさが戻ってくる。


数十分後には、何事もなかったかのようにAIの住民たちがシェルターから現れ、再び無表情のまま歩き始めた。


「……助かった。」


フォックスが大きく息を吐く。


俺もマグナムを下ろした。


「だが、なぜ撤退した?」


誰も答えられない。


レイ博士が分析装置を見つめる。


「命令を受けたようにも見えました。」


「あるいは活動時間が決まっているのかもしれません。」


通信機からオーバーウォッチの声が聞こえる。


『ハウンド、無事か?』


「こちらハウンド。」


「全員無事です。」


『転移装置の充填状況は?』


研究員が携帯端末を確認する。


「世界線転移エネルギー、現在二七%。」


「帰還可能になるまで、およそ七時間。」


「七時間か……。」


フォックスが頭をかく。


「長いな。」


オーバーウォッチも少し考えてから言った。


『無理に移動するな。』


『安全な場所を確保して待機しろ。』


「了解。」


通信を切ると、俺は周囲を見渡した。


幸い、近くには使われなくなった資材置き場が残っていた。


転送しなかった鉄骨。


建築用パネル。


金属製コンテナ。


そして先ほど採取した鉄鉱石に似た鉱石の一部も残されている。


「これを使おう。」


シャドウが頷く。


「簡易拠点を作る。」


フォックスが笑う。


「やっと俺の出番だな。」


数時間後。


俺たちは資材を組み合わせ、小さな監視基地を完成させた。


屋上にはファルコン用の狙撃地点。


内部には研究設備。


周囲には即席のバリケード。


見た目こそ簡素だったが、数時間身を守るには十分な拠点だった。


「意外と快適だな。」


フォックスが椅子代わりのコンテナへ腰掛ける。


「それ、俺が座ろうと思ってたんだけど。」


ファルコンが苦笑する。


「早い者勝ち。」


そんなやり取りを聞きながら、俺は双眼鏡で山を監視していた。


街は静かだった。


AIの住民たちは何事もなかったように生活している。


あの赤い液体も見当たらない。


「本当に終わったのか……?」


その時だった。


レイ博士が腕時計を見ていることに気付く。


「ハウンド。」


「さっきサイレンが鳴った時間を記録していました。」


「偶然かもしれませんが……。」


「もうすぐ同じ時刻です。」


全員が時計を見る。


静寂が流れる。


一分。


二分。


三分。


そして──


――ウゥゥゥゥゥゥン!!


まただ。


同じサイレン。


同じ警報音。


「来るぞ!」


俺が叫ぶ。


AIの住民たちは先ほどと全く同じように、一斉にシェルターへ走り始める。


数十秒後。


ゴゴゴゴゴ……


山が揺れ始めた。


「まただ!」


フォックスが立ち上がる。


山肌が裂け、赤い液体が流れ出す。


そして、その中から巨大な寄生虫たちが姿を現した。


先ほどと全く同じだった。


「やっぱり……。」


レイ博士が呟く。


「時間差で繰り返されている。」


研究員も記録を見比べる。


「出現時刻の誤差は数秒以内。」


「周期的な現象です。」


シャドウが静かに言う。


「災害じゃない。」


「決まった時間に起きる現象だ。」


俺は双眼鏡越しに山を見る。


「あいつらは、決められた時間だけ活動している……。」


通信機を手に取る。


「こちらハウンド。」


『オーバーウォッチだ。』


「重要な報告があります。」


「赤い液体と寄生虫は自然現象ではありません。」


「一定時間ごとに、ほぼ同じ行動を繰り返しています。」


通信の向こうでオーバーウォッチは静かに答えた。


『……周期性のある現象か。』


『なら、その周期には必ず理由がある。』


俺も同じ考えだった。


あの山には、まだ誰も知らない秘密が隠されている。


そして、その秘密こそがW-001という世界線の真実へと繋がっている気がしてならなかった。


第八章 終

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