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永遠のブルー  作者: 結城 遼介
第一章 レッド選抜試験

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7. ハニートラップには100%ひっかかる自信がある


 俺が注目していたのは、神城さんの名前よりもその下だ。神城さんの顔を模したスタンプが押されている。神城さんの顔がディフォルメされ、ウインクをしながらペロッと舌をだしている。いわゆるテヘペロだ。

 一見、印鑑代わりのスタンプのように見える。

 かわいい女の子がしそうなことだ。

 ただ忘れちゃいけない。

 神城さんは外見こそ最上級の女神だが、中身は酒と煙草好きな中年オヤジだ。

 神城さんが何も考えずにこんなことをするわけがない。

 俺の直感がそう言っている。

 俺は頭がいいわけでもないし、カンが鋭いわけでもない。

 ただ、こと神城さんのことに関しては、誰よりも、本人がひくほど理解しているつもりだ。

 だから、この封筒は神城さんじゃない何者からかのものか、もしくは神城さん本人からのものだとすると、何かある、ってことだ。

 状況から考えると多分後者なんだろう。

 行方不明の神城さんから届いた封筒。差出人に美女のスタンプ。

 とりあえずレターオープナーで封筒を開封する。

 中には一通の請求書が入っていた。


「なんだよ、これ」


 俺の記憶ではスタジアムの延滞料金の請求書を送ると言っていたはずだ。スタジアムの延滞料金がいくらなのか知らないが、さすがに数千円くらいだろうと思っていた。

 しかし、そこに書かれていたのは、スタジアムの修繕費3560万円と書かれていた。


「人生詰んだ……」


 気づいたら請求書を握りしめていた。慌てて手放す。

 何かがおかしい。

 もちろん俺のところにこんな請求書が送られてくるのもおかしいんだが。

 スタジアムの破損はある程度予測されているはずだ。あの施設が保険に加入してないわきゃないだろう。ヒーロー事務所にこんな請求書が届くわけない。何かがおかしい。

 ぼーっとしてたら先程のニュースの続きで、ダイレンジャーが豊橋市の預かりから愛知県の預かりに変わると伝えていた。

 ヒーロー省長官のお達しとのことだ。なんか最近そんな話ばっかだな、と感じる。海外のヒーロー達が力をつけてきているのに危機を感じて、日本のヒーロー達の力を結集する必要がある、という大義名分のようだ。まあ、それも大事なことだとは思うけど。

 元ダイレンジャーの身としては、ダイレンジャーみたいなローカルヒーローも必要なんじゃないかって思うけどね。日本だとか国だとか、みたいなでかい視点も大事なんだろうけど、俺は豊橋の道端で困っているおばあちゃんに手を差し伸べられるような、そんな小さな幸せを大事にするヒーローになりたいと思ってる。


 なんだか俺の知らないところで、いろいろなことが起こっているようだ。


 なんとなく思いついて、封筒をハサミで開いてみる。するとスタンプの押してあった裏面に、小さな文字で「逃げろ 公会堂」と書いてあった。


「え、あのメッセージに気づいたんか、きっしょ!?」


 という神城さんの反応が脳裏をよぎった。

 ふっ、俺の神城さんへの情熱を甘くみないでいただきたい。


 ただ、なんかひっかかる。

 このメッセージの送り方には、神城さんのためらいみたいなものを感じる。

 俺が気づかなかったら、それでいい、みたいな。

 ふと思う。これが運命の分岐点なんじゃないか、 と。

 この指示に従うか、従わないか、で運命が180度変わってしまう、そんな予感。

 けれど、どう考えたって、この指示に従う先にしか神城さんはいないだろう。

 だったら俺に迷いなんかない。

 神城さん、俺をなめんじゃねぇよ。

 例えばこれがハニートラップだったとしても、神城さんにもう一度会えるのなら、俺は微塵も後悔しない、⋯⋯多分。


 だいたい、こんなオンタイムの指示が書留で届くわきゃない。ってことは、さっきの郵便局員もしこみか。

 俺は立ち上がり、動きやすい格好に着替えると、テレビを消して、部屋から飛び出した。

 パトカーのサイレンが聞こえる。まだ少し距離はありそうだが。まさかここに向かってるのか?


「レミちゃん、貸しだかんな」


 俺は神城司令の指示通り、豊橋市公会堂に向けて走り出した。


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