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永遠のブルー  作者: 結城 遼介
第三章 名古屋大混戦!!

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24. アトラスレンジャー vs ダイレンジャー


 表に出たら、国際会議場まで一本道。

 そこに、俺たちの前に見慣れたヒーロースーツの面々が現れた。


「久しぶりだな、青木くん」


 その真ん中に立つレッドレンジャーが俺に話しかけてくる。


「久しぶり⋯⋯です。その⋯⋯」

「どうした、古巣の面々との対決にビビってるのかい?」


 そう、俺たちの前に立ちはだかるのは、豊橋のご当地ヒーロー、特務戦隊ダイレンジャーだ。

 少し前まで俺もその中にいたんだ、忘れるわけがねえ。ただ⋯⋯。


「いや、その⋯⋯」

「どうした、歯切れが悪いじゃないか。らしくないな、青木くん。豊橋市公会堂⋯⋯、あそこで君にぶっ飛ばされたあの日のこと、私は忘れたことはなかった」

「あー、うーん⋯⋯」

「あの日、君に負けて、私は自分を見つめ直したよ。今では君に感謝しているくらいだ。あの場所での敗北が、私をまた強くした。自分で勝手に決めてしまっていた限界を取り払い、私は新たなステージに進むことができたんだ! もう一度君に会えるこの日を、どれほど楽しみにしていたか」


「ごめんなさい、ちょっと聞いてもいいですか?」

「なんでも聞いてくれたまえ」


「お名前、なんでしたっけ?」


 血管が切れる音が聞こえた。

 ホントにそんな音することあるんだ。

 なんでも聞いてくれって言ったのに⋯⋯。


「そおぉぉいうとこだよ、青木くんっっっ!!」


 文字通り、レッドレンジャーの全身に火がついた。


「《炎の災厄(レッド・ハザード)⋯⋯」


 確かに、前に見た時よりも炎が大きく、熱くなっている。そして、その炎を全身にまとう。それは、まるで⋯⋯。


「⋯⋯爆炎(フレア)》!!」


 パクられた!?


「ギフトをただエネルギーの放出として使うのではなく、身にまとうことで《身体強化(バフ)》として使う、面白い発想だ。ただ聞いてるぞ、青木くん。あの時の力――《黄金の爆炎(ゴッド・フレア)》はすでに失われてしまったと!」


 俺の脳裏に最後に会ったときの神城さんの顔が浮かび上がる。

 こんなやつにかまってるわけにはいかねえ。

 神城さんの指定した時間までに、俺たちは国際会議場のセンチュリーホールまでたどり着かなきゃならねえんだ。

 目的の14時まで、あと47分!

 俺の全身に蒼き炎が巻き起こる。


「《蒼の爆炎(ブルーフレア)・最大出力(フルスロットル)》!! いくぜ、どこの誰だか知らないが」

「思い出せないからって、記憶を初期化するのはひどいぞ、青木くん」


 赤と蒼の炎が正面からぶつかり合う。

 ぶつかり合ったところから火花が周囲にはじけ飛ぶ。

 今のところその力は互角。どちらも一歩も引かない。

 カナさんと南方が加勢をしようする素振りを見せる。


「ここは俺がこじ開ける! 2人はまだ力を温存してろ!!」

「いいのかぁ! 青木くん! 私の相手をしているときによそ見など!!」


 赤い炎が勢いを増す。蒼の炎が徐々に飲みこまれていく。俺は覚悟を決めて、口を開く。

 これでいいはずだ、⋯⋯多分。


「さすがだな、⋯⋯火浦さん」

「⋯⋯青木くん」

「あれだけ熱い戦いを繰り広げたあんたのことを、俺が忘れるわけがないでしょうが。まったく冗談の通じねえ真っ直ぐな人だな、あんたは」


 お互いの炎で、陽炎のように揺らめくレッドレンジャーの顔が一瞬微笑んだように見えた。


 お、やったか!?


 次の瞬間、赤い炎が勢いを増す。


「私は、火野だああぁぁ!! なめやがってええ、青木いいぃぃ!!」


 しまった! やらかした!!

 振り向くと、カナさんと南方が頭を抱えていた。通信でこっそり教えてくれりゃいいのに⋯⋯。


 怒りに任せて火野さんが炎の出力を上げる。

 赤い炎に蒼の炎がどんどん飲みこまれていく。


「お前に負けて以来、ダイレンジャーの他の面々が私の力を認めてくれないんだ。今日お前をぶちのめして、私は私の力を証明する!」


 俺は他のダイレンジャーのメンツに目を向ける。

 以前と変わらない、気の弱いグリーンと動物好きのパープルと小悪魔なホワイトが俺たちの戦いを見守っている。もともとダイレンジャーは赤星さんと俺の武闘派2枚看板だったんだ。あとはサポートチーム。ちょっとだけいろいろあったホワイトレンジャーがこそっと俺に手を振る。


 昔の仲間と今の仲間の観ている前だ。

 残念だが火野さん、このままやられるわけにはいかねーんだよ。

 俺は残った《蒼の爆炎(ブルーフレア)》を左手に集め、《防御強化(ディフェンス・アップ)》に全振りする。


「守りを固めても、私には勝てないぞ、青木ぃ!」


 勝利を確信し、ここぞとばかりに炎の出力を上げてくる。


「孫子、兵法に曰(いわ)く、守らば則ち(すなわち)余りあり、攻(せ)むらば則ち(すなわち)足らず」

「戦いの最中、何をブツブツ言っている。命乞いか!」

「こういうのをさ、神城さんと赤星さんにたたきこまれたわけ。大勝負のときにはまず守りに徹し、エネルギーを蓄える。攻めはエネルギーを消費するから、動くのは勝利の核心を得たとき、ってね。こないだの黒木戦のときみたいに頭に血がのぼった戦い方を繰り返したら、今度こそ神城さんに見限られちまう」


 俺は目を閉じ、着物姿のカナさんを思い出す。神城さんだったら決して見せない透明な笑顔。

 何をおいても守ってあげたい。


     *


「これを」


 戦いに出る前、ブラック先輩が俺に神城家の家紋の入った守り刀を差し出してきた。前回のアイプラザ豊橋で《黒き侍(ブラック・サムライ)》との戦いの中で使っていた刀だ。


「これ⋯⋯、でもブラック先輩の大切なものでしょう」

「大切なものだ。だからこそ、君にもっていてほしい。この守り刀がきっと君を守ってくれる。そして、戦いが終わったら、必ず返してくれ。死ぬんじゃないぞ」

「ブラック先輩⋯⋯」

「あ、あと、⋯⋯その」


 急にブラック先輩がもじもじしだした。

 なんだ、可愛すぎるんだが。


「もうブラック先輩は止めてくれ、名前で呼んで、ほしい」

「⋯⋯神城、さん、じゃ、ややこしいっすね」

「⋯⋯名前でいい」

「カナ、さん」

「まあ、そういうことで、よろしく頼む」


 顔中を真っ赤にして、ブラック先輩――カナさんはそそくさと立ち去っていった。


     *


 俺は右手で腰に差したカナさんの守り刀を引き抜く。短刀が白銀の炎に包まれ、巨大な太刀となる。


《白銀の大剣(シャイニングブレード)》


 その強大なエネルギーに火野さんが目を見開く。


「なんだ、その力は!?」

「たしか、前にも言ったろ。愛の力だっつーのっっ!!」


 閃光一閃!

 白銀の光を横一文字になぎ払い、《炎の災厄(レッド・ハザード)》ごと火野さんをぶっ飛ばす。


「うおおぉぉおおおぉぉぉっっっ!!!」


 火野さんはそのまま道の先の煉瓦の壁に埋めこまれ、首をうなだれ動かなくなった。まあ、こないだも同じようにぶっ飛ばしても元気に復活してたから、頑丈な人なんだろう。しばらくこのまま眠っていてもらおう。


 刀をしまいこみ、《蒼の爆炎(ブルーフレア)》を解除した俺の前に、ダイレンジャーの面々が立ちはだかる。

 前に出ようとするアトラスブラックを手で制する。


「大丈夫です、多分」


 グリーンレンジャーがヘッドギアに内蔵された無線機に話しかける。


「トラックと乗用車の接触事故がありまして。⋯⋯はい、あとは特に問題ありません。はい、大丈夫です。こちらから交通課に連絡をしておきます」


 グリーンレンジャーこと森谷大介(もりやだいすけ)がヘッドギアを外し、俺に向かってウインクをする。


「これで少し時間がかせげると思います。青木さんが何をするつもりかわかりませんが、急いでください」

「森谷⋯⋯、お前、気い弱かったのに。大胆なことするようになったなー。こんなことして大丈夫か?」

「いや、それ、そのまんまこっちのセリフですからね。青木さんといい、神城司令といい、二人とも全国指名手配中ですよ。僕らはせいぜいクビになるくらいなんで、行き場がなくなったらそっちで雇ってください」

「いいのか、こちとら現在犯罪集団扱いだぜ?」

「勝てば官軍でしょ」

「ちょっと見ない間に、言うようになったじゃねーか」

「僕は神城司令と青木さんがいたときのダイレンジャーが好きでした。豊橋の小さな幸せを守るヒーローってやつが。今は愛知県下の一小部隊扱いですからね。気をつけて下さい。ヒーローサミットの防衛を担っているのはガイアソルジャーのガイアレッドです。なんでか知らないですけど、めちゃくちゃ青木さんのこと嫌ってますよ」

「まあ、奴とはちょっといろいろあってな」

「死なないでくださいね」


 俺は森谷と拳を重ねる。


「まあ、私はー、動物たちと一緒にいられれば何でもいいですー」


 パープルは相変わらず不思議ちゃんだ。

 力は弱いが水を操るギフトのため、監視カメラ周りを霧で覆いこみ、無力化してくれている。

 一声かけようとしたところ、ホワイトレンジャーが俺に抱きついてくる。


「青木さん、神城さんにフラレたら私のところに戻って来てもいいですよ」


 げっ、急に何言い出すんだ、こいつ。

 司令部も通信聞いてるんだぞ。


『青木、時間がないんだ。イチャイチャするのもそのへんにしとけ』


 神城さんから氷のような声で司令が届く。

 慌ててホワイトを引きはがすと、ホワイトはしてやったりという顔をした。

 こいつ、わざとやりやがったな。

 意外と根に持ってやがる。

 俺はできるだけ平静を装い、カナさんと南方に向き直る。


「それじゃ、行きましょう!」


 南方は軽く頷くが、カナさんからは反応がない。どころか、顔を逸らされる。

 絶対なんか勘違いしてるっ!?

 これから大決戦だってのに⋯⋯。こんなんじゃ、戦えねえ。

 俺はカナさんと正面から向かい合い、彼女を思いっきり抱きしめた。ヒーロースーツがぶつかり合い、硬質な音をたてる。


「ななな、突然何をするんだ、青木くん」

「カナさん、守り刀の代わりに俺があなたを守ります。絶対に死なせません」

「は⋯⋯はい」


 南方があきれた顔でこっちを見ている。


「南方、お前も抱きしめてやろうか?」

「⋯⋯ごめんこうむりますよ、青木さん」


 俺とカナさんと南方が道の中央に並び立つ。

 俺はダイレンジャーの仲間たちに別れを告げた。


「じゃあな、ダイレンジャーのみんな」


 そして、名古屋国際会議場に向かって駆け出した。


 アトラスレンジャー、参る!!


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