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四者会談

ブックマークありがとうございます!

ルゥさん荒ぶってます。女性あるあるなのでお察しください…



「………」



各々が無言で作業を進める。

それ自体は悪くはない。けれども、斜め前に座る男から醸し出される空気に苛々が沸々とぶり返す。



「……、」



ああ、駄目だ。何か言いた気な男に苛立つ。

すっと視線を上げれば、こちらを見ていた男はバッと下を向く。…露骨過ぎないか?少し、面白くなってきた。



「おい、エディソンといったか。何か言いたいことがあるなら遠慮なく申せ」



エディソンは勢い良く顔を上げる。



「……っ、…貴殿は何故、平民に気を許されているのですかっ!」



…意外な話だった。

険しい顔のエディソンを見遣る。



「私の事を貴殿と呼ぶな。敬語も要らない。其れが理由だ」


「……っ貴方の国が、階級に厳しくないことは存じております。然し、今は我が国に入らせられる」


「此処は士官学校だ。推薦状があれば親、養親の有無と職種は問わぬと明記されている事の意味を知っている筈だエディソン、」


眉を顰めエディソンを見詰める。


「お前が気に食わぬのはディートの事だろう?」


「ーーッ!!」



エディソンはカッと目を見開いた。

ルジの正面に座る彼の取り巻きであるフルウィウスも驚きの顔を隠せていない。


事ある毎にディートを睨み付けていたのを気付かれていないと思っていたのか。他の貴族連中が怯える中、異質であった其れに。



「ディートが何者であるかなど如何でもいいと、何故分からない?お前が憶測するような者であったとしても平民と名乗っている事の意味が分からないのか?」


「ッ、それはッ…!」


「差し詰め侯爵家の者として試されているのだとか思ったのだろうが違うぞ、エディソン。如何なる者であったとしても、此処では用を成さない。これが真意だ」



エディソンは口を開け閉めし、言葉を失う。

ルジは嘆息する。


声を張ると疲れる。それに…少々気を入れ過ぎた。これでは先程のディートと変わらぬ八つ当たりだ。



「…お前は、真面目なのだな」


「…えっ、?」


「私の国では真面目な者が好かれる。が、エディソン、階級を遵守することが悪いと言っている訳ではない。何故階級より重視されているのか、理由を考えろ」


「…重視されている、理由…」



まあ、本人の我が儘であるならば理由も何もないが、と言いながら隣に座るディートを一瞥する。しかし変わらずの無表情である。


エディソンの態度から推測できるのは、ディートは侯爵家か公爵家の者、ということだ。

エディソンからすれば同等以上の身分でありながら平民と偽り、その上貴人であることを隠そうとしていないというのは腑に落ちないのだろう。士官学校が身分平等を謳っていたとしても。


実際、混乱を招いている。おそらくエディソンは其の事が同じ貴族として許せないのだろう。



「まあ、此れは私の憶測でしかないが。私とコルガーが第一騎士団長殿に御推挙いただいた事と関連しているのだと思う」



もう一度ディートに目を向けるが、無反応である。



「…御推挙のお話は、事実でございましたか…」



顔が強張るエディソン。


口外されない筈の推薦人の話は、入学直後に噂として広まっていた。まあ、その影響もあり私達は同期生に避けられていたのだろう…あの騎士団長の推薦を受けた者達だと。



「誰が何の為に噂を立てたのかは分からないが、意図したものだろう」


「…牽制、というところでしょうか」



一度も口を開かなかったフルウィウスが、ルジをじっと見詰めながら続ける。



「三人は特別な者達であると」


「成程。そうなのか?ディート」



今度はディートに体を向け、頬杖を突いて顔を覗き込む。僅かに眉を動かすディート。



「…勘弁してくれ」



何とも、意外な反応だった。

体勢を戻し、フルウィウスとエディソンを見遣る。



「まあ何れ分かることだ。気にするなフルウィウス。エディソンも」


「…承知いたしました。」


「承知いたしました。…ルフェ様、」


「何だ、勝手な発言をするなと咎められるとでも思ったか?」



ルジは顔を強張らせるフルウィウスに意地悪い笑みを向ける。



「…いえ、滅相もございません。ただ、」


稀有な御方だと思いはしましたと、小さく息を吐いた。



「…フルウィウス、御無礼であるぞ」


「いやいい、エディソン。そう堅くするな」



失礼いたしましたと澄ました顔で言ったフルウィウスは、中々骨のある者と見た。そして、畏まりましたと言うエディソンはやはり生真面目である。



それにしても、この仰せ付かった雑用には何の意図があったのか。


剣術大会の招待状の宛名などに誤りがないか確認し、封をするというこの作業。

ディートは、特に何ともないといった顔で、教官長から預かったと言っていたけれど。抑、私は教官長を知らない。


大体、何故この四名なのか。この国の貴族である彼らならば招待客らの仔細を知っているのだろうけれど、私にはさっぱりだ。



「…腹が減った」



そう呟くと、珍しいなとディートに返された。


ああ…そうか…苛立つ理由が分かった、最悪だ…

元々不定期だった上にこの一年身体を酷使していたからか突然のそれに完全に油断していた。選りに選って剣術大会に当たるとは…最悪だ。


今年一番の嘆息を吐き出した。



女性アスリートでなくても悩みの種ですよね…

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