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ぼくの猫は破壊神 〜魔法学園の落ちこぼれ、最強の使い魔を復活させて成り上がる〜  作者: 芹沢政信
三章 校舎の地下に危険なダンジョンがあるという話
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3-14 力の対価

「もしかして、今ので倒したわけ??」

「本体は目玉ですから、まあそういうことになります」


 貧弱ながら強力な熱線を放つ邪眼蟲を、動く鎧に組みこんだ魔法生物。

 それが駆動兵だと、ハーレイ先生に見せてもらった設計図に書いてあった。

 でもベル先輩は、ぼくがどこでそんな知識を得たのか知らないし、

 

「貴方のこと、ちょっと怖くなってきたかも。可愛いくせに危ないやつじゃん」

「ええ!? そんなふうに見えましたか!?」


 言われてみれば腕を切り離したりくっつけたり、帝国時代の生物兵器を魔法の罠でハメ倒したりと、邪悪な魔法使いさながらの戦い方をしていたような。

 でも頼りになるところを見せようとして恐怖されるのって、さすがにあんまりじゃない? ぼくが愕然としていると、


「冗談だってば。あたしのこと守ろうとしてくれたんだものね、ありがと」

「あははは……」


 半分は本気っぽかったから苦笑いを浮かべてしまう。

 とはいえベル先輩を守ることができたのなら、地味な魔法での戦い方を研究してきた成果はあったのだろう。

 この調子でやっていけば、いつか誰にも負けない魔法使いになれるかもしれない。


 



 なんて調子に乗ってしまったけど――自分の考えがいかに甘かったかは、部屋を出て数分後に気づかされた。

 地上を目指して道なりに歩いていると、再びカシャカシャカシャと不穏な足音が響いてくる。

 だけど前とは比べようもないほど、喧しい。


 通路の奥から近づいてくる、駆動兵の、群れ。

 蟻の行列のごとく押し寄せる不気味な姿を見て、ベル先輩がうめき声をあげる。

 

「うそでしょ……。あの数じゃどうやっても勝ちめがないわよ……」


 だったら逃げるしかない。

 でも、どこへ。

 反対側の通路を見て、それから首に巻いたケープを握りしめる。

 うまい具合に、道が二手にわかれていた。


「先輩はすぐ逃げてください。ぼくはあいつらを引き留めつつあとから追いかけます」

「ほんとに? 自分が囮になるつもりじゃないでしょうね」


 ぼくは笑った。

 思っていたより鋭いなあ。

 嘘をつくのは得意じゃないけど、

 

「そんなことしませんってば。むしろ先輩を囮にして逃げたいくらいなのに」

「でも……」

「正直に言うと足手まといなんです。あの数が相手だとさすがに余裕ないので」

「わかったわよ!! 偉そうなこと言っておいてやられたら、許さないからねっ!!」


 そう言って走りだす彼女の背中を見つめながら、ふうと息を吐く。

 こんな状況になってようやく、わかったことがある。

 ぼくが恐れていたのは痛いことや怖いことじゃなくて、弱いことでもなくて。

 メグが冷たくなっていくのを、見ていることしかできなかったときみたいに。

 大切な誰かを失ってしまうのに、自分がなにもできずにいることだったのだと。


「もちろん今もたいしたことはできないけど、さ」 


 どうせ効果はないと理解しながらも、ぼくは懐から攻撃用の石ころを取りだす。

 オーサに怒られないように。

 せめて認めてもらえるように。

 

「最後の最後まで、あがいてみせるよ」


 そう呟いて詠唱した直後。

 ぼくの魔法が――爆発した。


「へ?」


 凄まじい衝撃波が発生し、駆動兵が跡形もなく消し飛んでいく。

 あまりのことに呆然としていると、ベル先輩が逃げた通路の先からコロコロと、丸くて黒い毛玉が転がってくる。

 そして頭の中に響き渡る、珍妙な笑い声。


『ぬふふふ。ぴーぴー泣いておるかと思ったのに、つまらんのう』

「……オーサッ! じゃあ今のは」

『お前の魔法を強化してやったにゃ。ちなみに踊りは省略な』


 なんのこっちゃ。

 じゃあ決闘のときもやらなくてよかったのでは。


 相変わらず自由な猫サマに脱力していると、オーサに続いてカイトやハニービー、それから一足先に逃げていたベル先輩がぞろぞろとやってくる。


「嘘だろ?? 今の魔法、クラウンくんがぶっ放したのかい!?」

「見ちゃったからには信じるしかないわよね。やだ、可愛いだけの男の子だと思ってからかってたのに、私より強いなんて妬けてきちゃうっ!」

「自分でもびっくりしているところだよ。あははは……」


 カイトやハニービーが興奮して詰め寄ってきたので、ぼくは慌ててごまかそうとする。

 オーサがうしろでニヤニヤ笑っているものの、ネタばらしする気はなさそうだ。

 それより――逃げている途中でみんなと合流したらしいベル先輩が、


「死んじゃっでだら……どうじようがどおもっだあああ!」

「うわ、いきなり飛びついてこないでくださいよ! 鼻水、鼻水がつきますから!」 


 柔らかいし苦しいしでじたばたもがくのだけど、ベル先輩はぼくに抱きついたまま離れようとしない。

 本気で心配してくれたみたいだし、こうしていると死ななくてよかったと思う。自分だけ犠牲になろうだなんて、いい考えじゃないのは確かだ。


「とにかく……無事に合流できましたし、みんなで地上を目指しましょう」

「そうね、貴方がとんでもなく強い魔法使いだってことはよくわかったし、もうおばかさんだなんて呼べないわ。今まで先輩面して偉そうなこと言ってごめんなさい」

「はい?」 

「ベル嬢の言うとおりさ。落ちこぼれのフリをしている理由はわからないけど、なにか事情があるんだよな? いずれにせよ、君がかなりの使い手だとわかって安心した。正直、俺たちだけじゃ全滅しかねないからな」

「可愛くて最強の座は、クラウンくんに譲ってあげる。私はもっと鍛えないと」

「待って、どうしてぼくをぐいぐい前に……はぐれる前は最後尾だったじゃん!」


 でもみんなは瞳をキラキラさせて、ぼくを隊列の先頭に追いやる。

 お荷物から一転、頼れるリーダーに格上げされたものの、自分の力で認められたわけじゃないから複雑な気分だった。

 でも今は地上に戻ることを最優先に考えるべきだし……と、困っていたところでオーサがぽんと頭に飛び乗ってきて、再び心の声で囁きかけてくる。


『強化一回につき、マカロン一個で手を打つにゃ』


 世界を滅ぼす力の対価、お菓子でいいの?

 安上がりすぎて怖いのだけど、ほかに選択肢もないしお願いする。

 自分の力で強くなるとか言っていたくせに、結局はオーサに頼らないとなにもできないのだから……ぼくはまだまだ、落ちこぼれを卒業できそうになかった。

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