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やり過ぎです!

会場のすぐ前に、何台もの馬車が止められている。


その一つにメリッサはクロイスと共に乗り込んだ。

二人が乗るとすぐに馬車はすべらかに動き出す。



メリッサが乗せられた馬車は向かい合わせに長椅子が並ぶ四人乗りのもので、隣り合って座った前の座席には離宮に置いてきたはずのメリッサの薬箱と少ない荷物が置かれていた。 


その用意周到さに、メリッサの眉が寄る。


「怒っているか?お前の妹をあれと無理に婚姻させて……」


怒る理由ってそれだけじゃないですよね?


メリッサはそう思いつつ、口を開いた。


「……いえ、本来なら処刑されても致し方ないはずですから。それに二人は結婚したがっていたのですし」


あの時。


マリエラがこちらを見た時にもし助けて求めたのが、クロイスではなくメリッサだったら、また答えは違っていたのかも知れないけれど。



「それより」


と、メリッサはクロイスに身体ごと正面に向いて、向かい合った。


「全部、全て説明して下さい。私に内緒で色々してましたよね?多分、ずいぶん前から」


据わった目でクロイスを見つめるメリッサに、クロイスは悩ましげに目を伏せてみせる。

その仕草にキュンとしてしまってから、メリッサは内心でブンブンと頭を振った。


(……絆されても誤魔化されてもダメよ!私!)


「言ってくれないのなら、婚約破棄させて頂きます!」


キッパリと宣言したメリッサにクロイスがしぶしぶ語った内容に、メリッサは絶句した。


(……ほぼほぼ最初から全部知ってたんじゃない!)


散々悩んで、落ち込んで、泣きはらしたのに。


そもそも駐屯地にいた頃から早い段階でメリッサの身元も冤罪のことも知っていたのだ。

と、いうか悲壮な覚悟で駐屯地を出た後もコッソリ尾行がついていた挙げ句にコルトと繋がっていたから砦でのことも筒抜け。



しかも黙って出て行かせたのがお仕置きのつもりだったなんて!


(……私、早まったかも)


ちょっと本気で思ってしまった。

だから、ぷるぷると手を震わせて、メリッサは叫ぶ。



「……もうっ!どれもこれもやり過ぎですっ!」


だいたいメリッサと婚約するためだけにどれだけ王族相手に根回ししているのか。


なんだがヘルトのことも王族のこともどれもメリッサに一因があるようで罪悪感が湧いてくる。

どちらも自業自得だとも思うけれど。


怒り心頭のメリッサの頬をクロイスは両手で挟み込む。


「ああ、俺はすぐにやり過ぎるんだ。だから、ちゃんとそばにいて見張っておいてくれ」

「なんですかっ!それっ……んっ!」


噛み付くような口づけに、続けるはずだった罵りの言葉が口の中に消える。


「……は、ぁ」

「メリッサ」


口づけの合間に、クロイスはメリッサの頬と、結い上げた髪を撫で、


「結婚してくれ」


と、告げた。


「愛してる。だから、逃げないでくれ」


むちゃくちゃなことばかりしているくせに、その瞳はどこか不安げで。


「……ぁ」


くちゅ、と音を立てて答えさせまいとするように唇を塞ぐ。


「好きだ。愛してる。愛してるんだ。結婚しよう」


(……ずるい。自分ばっかり)


言いたいことだけ言って、こちらの口は塞いで。


ぐい、とメリッサは力いっぱいにクロイスの顔を突き放した。


「バカ。仕方ないから、結婚してあげます」


途端、クロイスの顔が子供みたいにクシャクシャな笑顔になる。


(ああ、もう……!)


仕方ない。

とっくに絆されてしまっているから。


「だから、これからはあんまりやり過ぎないで下さいね……って!」


(……重っ)


のしかかる重みに、メリッサは顔をしかめた。

けれど、それはどこか幸せな重みで。


白いドレスの身体を這うイタズラな手をつねりながら、メリッサはひっそりと笑う。


(私も、愛してます)


まだ少し怒っているから、今は口には出してあげない。


けれど代わりに、


バカなやり過ぎ男の顔を両手で引き寄せて、



その額に想いを込めて、優しくキスをした。




本編完結です。

お読み頂いてありがとうございましたm(__)m

少し間を空けながら家族などのその後を番外編で書く予定です。

よろしければそちらもよろしくお願いします。

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