「最後まで感謝して帰るなつってんだろ ――リストは空になりました。女神様は放しませんでした」
最後の名前が来ました。
罠は、全部機能しました。
女神様が、放しませんでした。
元勇者レオンが来るのはこれで三度目です。
今日の罠は、最後の名前のために作ったものです。
第一罠で足場を消し、第二罠で逃げ道を封じ、第三罠で正面から退場させる。
ただそれだけの、静かな最終撃退罠。
今日は、本当に本気で、心底罠には自信があります。
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ダンジョン配信中(登録者:380)
女神様「今日は、見ています」
剣士「元勇者、また来た」
杖つかい「空気が重い」
査定員「撃退判定を記録します」
罠職人見習い「DM、今日は動きが静か」
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レオンは、剣を抜かずに来た。
「俺は、君の名前を残せなかった。君の作戦を、自分たちの戦果として受け取った。すまなかった」
謝罪は、罠の解除条件に含まれていません。
私は、コートの内側を見た。
そこには最後の名前がある。
レオン。
第一罠が床を落とす。
第二罠が逃げ道を封じる。
第三罠が光を立ち上げる。
「私は、このダンジョンのダンジョンマスターです」
「うん」
「攻略者は、撃退します」
「そうだな」
「だから、退場してください」
光が立ち上がる。
レオンは抵抗しなかった。
「強いな。本当に、強くなったな」
「感謝はいただかなくて大丈夫です」
「ありがとう、ハルカ」
レオンは、トラップを甘んじて受け入れた。彼がリスポンの白い光に包まれる。
そして彼もまた、感謝して帰った。
私はメモに、細い線を引いた。
六本目。
リストが、空になった。
レオンが帰ると、私一人が取り残されたようだった。
ダンジョンの通路には一切の音がなかった。
シア様が、私の前に来た。
「これで......終わりましたね」
「......はい」
「復讐も、名前も、帰る理由も」
シア様の指が、私のコートの襟をつかんだ。
「これからも、放しません。ハルカ――」
シア様が、私を抱きしめた。
近い。
近すぎる。
女神とダンジョンマスターの業務距離としては、明らかに不適切だった。
すると、額に、そっと彼女の唇が触れた。
「......今のは、何ですか」
「気のせいじゃないですか〜?」
「気のせいで額にキスは発生しません」
「では、これはどうですか~?」
今度は頬だった。
「シア様。説明を」
「しません」
シア様の指が、私の顎に触れた。
逃げることはできた。
たぶん、できた。
でも私は、動かなかった。動けなかった。
......二人の唇が触れあった。
短いようで、長かった。
熱いようで、静かだった。
ダンジョンの奥で、スライムAがぷるぷる震えた。
ガルルが、なぜか礼をした。
ドラゴンウォームが天井から落ちた。
「......シア様」
「はい」
「配信中です」
シア様のニヤニヤが、戻った。
「もちろん、知っていますよ〜♡」
コメント欄が爆発した。
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剣士「え」
杖つかい「え」
罠職人見習い「ええええええ!?」
薬草採取人「ええええええええええええええええ!?」
査定員「記録していいんですか!?」
女神様「だめです♡」
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コートの胸元に、勝手に文字が浮いた。
【女神様:距離感バグ】
【対応:不能】
【心拍:記録しない】
【ドラゴンウォーム:落下】
「記録しないでください」
感謝するなつってんだろ。
最後まで感謝して帰るなあああああああああああああああ!
【今回の登場キャラクター】
・ハルカ:復讐リストを空にしたDM。
・シア様:ついに放さないと告げた女神様。
・レオン:最後の名前。感謝して帰った。
【今回のズレパターン】
なし。罠は機能し、復讐は完了しました。ただし女神様の距離感が完全にズレました。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :571位 → 499位
配信視聴者数 :380名 → 455名
本日の用途 :最終撃退および女神様距離感バグ確認会場
コートのメモ(今話) :「六本目。リスト:空。女神様:放しません。心拍:記録しない」
【モンスター管理状況】
スライムA:在籍65日目 稼働率0%(ぷるぷる震えた)
スライムB:在籍63日目 稼働率0%(硬直)
ガルル:在籍64日目 稼働率0%(礼をした)
ドラゴンウォーム:在籍55日目 稼働率0%(落下)
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