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「前に立つなつってんだろ ――女神様が、初めて私の前に立ちました」

昔の顔が来ました。

言葉が詰まりました。

女神様が、私の前に立ちました。


 今日の罠には自信があります。

 けれど今日は、罠の説明を短くします。


 第一罠(ファーストトラップ)は足止め。

 第二罠(セカンドトラップ)は分断。

 第三罠(サードトラップ)は退場。

 旧勇者パーティ関係者が複数来る可能性を想定した、集団対応罠パーティブレイクトラップです。......なぜこの準備をしていたかというと、魔導水晶で、団体が来るのが分かったからです。


 ただ、今日の問題は罠ではありません。

 誰が、どこに立つかです。


 ═══════════════════════════

 ダンジョン配信中(登録者:365)

 女神様「マスターの前です」

 剣士「え?」

 杖つかい「女神様、今日コメント短くない?」

 査定員「記録態勢に入ります」

 ═══════════════════════════


 来たのは、三人だった。

 昔、同じ戦場にいた人たち。

 私の作戦で生き残り、私の名前を記録しなかった人たち。

 その後ろに、レオンがいた。


()()()


 名前を呼ばれた。

 その一言で、通路の空気が止まった気がした。


「......人違いです」


 そう言うつもりだった。

 でも、言えなかった。


「君は、()()()()()()?」


 第一罠(ファーストトラップ)が起動した。

 床の拘束陣が光る。けれど、誰も踏み込まない。


「記録に残っていなかった。だが、覚えている者はいる」


 私は、いつものように言葉を処理しようとした。


「私は、このダンジョンの管理を......」


 その前に。

 シア様が、私の前に立った。


 いつもの段差ではない。

 いつもの距離でもない。

 私の前に、まっすぐ。


名前それ、気のせいじゃないですか〜?」


 声はいつもの形だった。

 でも、軽くなかった。


「このマスターは、今、業務中です」


 レオンが息を止めた。


「女神......?」


「そうですか〜?」


「いや、どう見ても女神だろ」


「気のせいじゃないですか〜?」


 そこで少しだけ、空気が戻った。


 ガルルが私の後ろに立った。

 スライムAとスライムBが足元に寄る。

 ドラゴンウォームが天井から落ちかけて、尻尾だけでぶら下がった。


「ドラゴンウォーム、今ではありません」


 第三罠(サードトラップ)が起動した。

 退場陣が、三人の足元に広がる。


「今日は、ここまでです。攻略は、順路に従ってください」


 静かになった通路で、私はシア様の背中を見た。


「......シア様。いつから、そこにいたんですか」


「最初からですよ〜♡」


 コートに文字が浮かんだ。

【女神様:前に立った】

【私:後ろにいた】

【名前:呼ばれた】

【対応:未定】


 感謝するなつってんだろ。

 ......前に立つなって言ったでしょうがあああああああああああああ!


【今回の登場キャラクター】

・ハルカ:名前を呼ばれたDM。

・シア様:初めてハルカの前に立った女神様。

・レオン:元勇者。言葉を飲み込んだ。


【今回のズレパターン】

 シリアス第三回。罠よりも「誰が前に立つか」が主題でした。最後はコメディへ戻しています。


 ═══════════════════════════

【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :620位 → 571位

 配信視聴者数      :365名 → 380名

 本日の用途       :女神様前進確認会場

 コートのメモ(今話)  :「女神様:前に立った。名前:呼ばれた。対応:未定」

【モンスター管理状況】

 スライムA:在籍64日目 稼働率0%(足元待機)

 スライムB:在籍62日目 稼働率0%(足元待機)

 ガルル:在籍63日目 稼働率0%(背後待機)

 ドラゴンウォーム:在籍54日目 稼働率0%(尻尾でぶら下がった)

 ═══════════════════════════


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