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「黒瀬は来るな」

 効率化勇者が来ました。

 罠を業務範囲外と言われました。

 ガルルだけが、少し違う反応をしました。


 今日も感謝されてしまいました。


 今回は、確認回です。

 黒瀬。

 その名前が、通知にありました。


 私は、今日の罠を標準仕様にしました。

 無理に撃退しない。

 相手の動きだけを見る。

 そう決めました。


 コートの内側には、名前が一つあります。


 今日の罠には、自信があります。


 ═══════════════════════════

 ダンジョン配信中(登録者:49)

 女神様「確認ですね❤」

 名無しの剣士「空気変わった?」

 ═══════════════════════════


 入口に現れた男は、鎧ではなく、妙にきっちりした服を着ていました。

 腰には剣。

 手には書類。


 黒瀬。

“効率化勇者”と呼ばれている転移者。


「このダンジョン攻略は、私の本来業務ではない」

 第一声が、それでした。


 私は、少しだけ目を伏せました。


「......そうですか」


 黒瀬は通路に入りました。

 第一罠の感知糸(センサーワイヤー)

 彼は、踏む直前で止まりました。


「無駄な導線だ。改善余地あり」

「......こちらの台詞です」


 第二罠の落下床(らっかゆか)

 彼は、紙を投げて床を確認しました。


「リスク確認は部下に任せるべきだが、部下がいない」

「いないんですか」

「現地採用が進んでいない」

「......でしょうね」


 罠が、避けられていきます。

 腹立たしいほど事務的に。

 腹立たしいほど、昔の会議資料みたいに。


 第三罠。

 壁から網が出る。


 黒瀬は、体をひねって避けました。


「これは業務範囲外だ」

「ダンジョン攻略はだいたい業務範囲外です」


 そのとき、ガルルが前に出ました。


 いつもの礼はありません。

 骨の指が、ぎしりと鳴りました。


「......ガルル」


 私は、小さく呼びました。


 ガルルは黒瀬を見ています。

 攻撃しようとしている。

 それが、わかりました。


「待ってください」


 ガルルが止まりました。


 黒瀬は、ガルルを一瞥しました。


「召喚モンスターの管理も甘い。効率化が必要だ」

「......必要ありません」


 コートのメモの端を、私は確認しました。

 そこに、その名前がありました。


 黒瀬。


 線はまだ引きません。

 今日は、確認だけです。


 シア様は、いつもの場所で笑っていました。

 けれどそのニヤニヤは、薄かった。

 ハルカは、コートの端だけを見ていました。


 ═══════════════════════════

 ダンジョン配信中(登録者:50)

 女神様「見ていますよ❤」

 名無しの杖「骨が礼しないの初めて見た」

 ═══════════════════════════


 黒瀬は、最後まで罠にかかりませんでした。


「このダンジョンは非効率だ。だが、学習材料としては使える」

「......次も来てください」

「必要ならな」


 必要です。

 次は、落とします。


 私はコートに書きました。


「黒瀬:確認」

「ガルル:攻撃本能」

「今日は待機」

「次は業務範囲内にする」

「いや違う、落とす」

【今回の登場キャラクター紹介】

 ・ハルカ:黒瀬の名前を確認した。今回はまだ線を引かない。

 ・シアラ:女神様。笑みが少し薄い。

 ・黒瀬:現代転移者。効率化勇者。業務範囲外と言いがち。

 ・ガルル:今回だけ礼をしなかった。攻撃本能を見せた。


【今回のズレパターン解説】

 回避型。

 黒瀬は罠を業務処理のように回避しました。腹が立ちます。


 ═══════════════════════════

【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :43200位 → 42111位

 配信視聴者数      :49名 → 50名

 本日の用途       :業務範囲外確認会場

 コートのメモ(今話)  :「黒瀬:確認。次は落とす」

 【モンスター管理状況】

  ガルル:今日だけ攻撃本能確認 礼なし

 ═══════════════════════════


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