「ランキング変動しすぎるな」
緊急査定が入りました。
原因は罠ではなく、たぶん全部です。
七件も指摘されました。
今日も感謝されてしまいました。
いえ。
今日は、感謝というより査定でした。
朝から魔道水晶が点滅し、ギルド公認査定員のエルマさんが来ると通知が出ました。
緊急査定。
響きだけで、前職の会議室を思い出します。
今日の罠は、標準確認用です。
感知糸、火炎、落下床、連携タイムラグ。
全部、基本に戻しました。
今日の罠には自信があります。
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ダンジョン配信中(登録者:21)
女神様「査定ですね❤」
名無しの剣士「女神様楽しそう」
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エルマさんは、入口で一礼しました。
「緊急査定に参りました」
「......よろしくお願いします」
淡々とした声です。
胃が痛そうな顔だけが、少しだけ人間らしい。
エルマさんは第一通路を歩き、最初の感知糸を見ました。
「配置精度、前回より上昇」
「ありがとうございます」
「ただし英雄満足度も上昇」
「困ります」
次に火炎罠。
炎が壁から斜めに噴き出す設計です。
エルマさんは、紙に書きました。
「火炎出力、演出効果あり」
「いえ演出ではありません」
「落下床の深さ、体験価値あり」
「それも体験ではありません」
「連携タイムラグ、攻略者に学習余地あり」
「英雄に学ばせたくありません」
どうして罠に引っかかってくれないんでしょう。
査定員だからでしょうか。
査定員も落ちるべきでは?てか落ちてください。
エルマさんは分厚い書類を広げました。
「指摘事項は七件です」
「......七件」
「罠関連が四件。モンスター関連が三件」
「モンスターですか」
スライムAが、通路端でぷるぷるしました。
ガルルが礼をしました。
ドラゴンウォームは、天井近くで寝ていました。
「召喚したモンスターが英雄と友好関係を結んでいます」
「......はい」
「スライムが英雄の名前を覚えている可能性があります」
「......はい」
「スケルトンが礼をしますよね?」
「......はい」
「ドラゴン幼生が外部配信者の肩に乗っています」
「......はい」
全部、心当たりがあります。
むしろ心当たりしかありません。
エルマさんは、最後に告げました。
「ランキング上昇速度が異常です。このペースだと三ヶ月以内に1000位以内もありえます」
「......改善の余地があります」
「改善する場所が見つかりませんが」
「それはそれで困ります」
シア様は、いつもの段差で頬杖をついていました。
「よかったですね〜」
「すべてよくありません」
「そうですか〜」
そのニヤニヤが、ほんの少しだけ薄かった。
もちろん、私は書類で視界が埋まっていたので気づきませんでした。
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ダンジョン配信中(登録者:24)
女神様「伸びていますね❤」
名無しの杖「査定員さんの胃が心配」
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エルマさんは、七件の書類を置いて帰りました。
「本日の査定結果です」
「ありがとうございます......と言うべきでしょうか」
「私にもわかりません」
コートの背中に、私は新しいメモを書きました。
「指摘事項七件」
「罠四件」
「モンスター三件」
「ランキング上昇」
「だから落ちろ」
「いや査定員に落ちろは失礼」
「でも落ちろ」
本気で感謝するなつってんだろ。
真面目に査定してないで一回くらい罠にかかれやごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
【今回の登場キャラクター紹介】
・ハルカ:査定書を見るだけで胃に来る廃ダンジョンマスター。
・シアラ:女神様。ランキング上昇を静かに楽しんでいる。
・エルマ:ギルド公認査定員。真面目すぎて胃が死にそう。
・スライムA/ガルル/ドラゴンウォーム:全員、指摘対象。いい意味で。
【今回のズレパターン解説】
回避型。
査定員なので罠にはかからず、代わりに全部記録されました。最悪です。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :57109位 → 54880位
配信視聴者数 :21名 → 24名
本日の用途 :緊急査定会場
コートのメモ(今話) :「七件。全部正しい。だから困る」
【モンスター管理状況】
スライムA・B:問題あり(指摘1)
ガルル:問題あり(指摘2)
ドラゴンウォーム:問題あり(指摘3)
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