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「また昔の話をするなつってんだろ」

グラッド対応罠を組みました。

しゃがまれました。

昔の戦いで鍛えたそうです。

 今日も感謝されてしまいました。


 今回の(トラップ)は、グラッドさん対応版です。

 前回、盾で受けられた反省から、盾の届かない高さに拘束針(こうそくばり)を配置しました。入口付近にはガルルを置いています。


 今日の罠には自信があります。グラッド対応版です。


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(登録者:12)

女神様「また来ましたね❤」

名無しの盾「また昔話?」

═══════════════════════════


「また来たぞ!」


「また来なくて大丈夫です、本当に」


 グラッドさんは、前回よりも軽い足取りでした。

 懐かしい場所へ来る人の顔です。

 その顔を、私はあまり見ないようにしました。


 今日の罠は、盾の上を狙います。

 第一通路に入った瞬間、壁の上段が開き、斜め上から拘束針が走りました。


 グラッドさんは、しゃがみました。


「……しゃがみましたか」


「体が覚えてた。昔の戦いで鍛えられてるからな」


「昔の話はダンジョンに持ち込み禁止です」


「いや、《《あの参謀》》がよく言ってたんだ。盾役は上を見すぎるな、足元を見ろって」


 私は、コートの端を押さえました。

 そこにある名前が、今日も少しだけ重い。


「……その参謀は、今どうしていますか」


「記録に名前がなかったから、途中で離脱したんだろうな」


 通路の空気が、少しだけ止まりました。


 ガルルが、入口付近から静かに歩いてきました。

 グラッドさんへ礼をします。


「おっ、先日の骨だ! また会えたな!」


 ガルルが、もう一度礼をしました。

 心なしか嬉しそうに見えるのは、私の気のせいでしょうか。


「……ガルルがグラッドさんを覚えているように、見えますね」


「いい骨だな。ガルルというのか。ありがとう」


「骨に感謝しないでください」


 グラッドさんは、罠を突破したのに、奥へ進みませんでした。

 かわりに、ダンジョンの壁を見上げます。


「不思議だな。ここに来ると、忘れてたことを思い出す」


「思い出さなくて大丈夫です」


「ありがとう。また来る」


「だから、来なくて大丈夫です」「感謝も要りません」


 グラッドさんが帰ったあと、ガルルは私のそばに来ました。

 何も言いません。

 骨なので、言えないのかもしれません。


 けれど、今日だけは、いつもの礼をしませんでした。


―――


 コートのメモは、少なくしました。


 【ガルル:ハルカのそばにいた】


 それだけです。


 シア様は、しばらく黙っていました。

 それから、いつもの声で言います。


「ハルカ、今日の罠は惜しかったですね〜」


「はい。改善の余地があります」


 その返事だけは、すぐに出ました。


 シア様のニヤニヤは、いつもより薄かった。

 私は、針の角度を直していたので、見ていません。


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(登録者:12)

女神様「覚えているのは、良いことなんでしょうか❤」

名無しの盾「骨が空気読んだ?」

═══════════════════════════


 改善の余地があります。


 感謝するなつってんだろ。昔の話は持ち込まないでください。

 本当に。



【今回の登場キャラクター紹介】

・グラッド:二回目の来訪。記録に残らない参謀の話を、悪気なく口にする。

・ガルル:今日はハルカのそばにいました。


【今回のズレパターン解説】

誤解型です。グラッド対応罠は、過去の戦闘経験によって自然に回避されました。


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【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :65166位 → 65110位

 配信視聴者数      :12名 → 12名

 本日の用途       :思い出の再確認場所(非推奨)

 コートのメモ(今話)  :「ガルル:ハルカのそばにいた」

【モンスター管理状況】

 ガルル(暫定識別番号):在籍6日目 稼働率0% 今日の成果:グラッドを記憶、ハルカのそばにいた

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