表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/100

「批評するな」

ライバルダンジョンのマスターが来ました。

改善案を大量に置いていきました。


 今日も感謝されてしまいました。


 いえ、本人は感謝ではないと言っていました。

 批評(ひひょう)だそうです。

 参考だそうです。

 視察だそうです。


 全部、困ります。


 今日の来訪者は、近隣の正規ダンジョンのマスターです。

 名前はベルネ。


 「視察に行く」と、一方的に連絡が来ました。


 今日の(わな)には自信があります。


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(登録者:5)

女神様「同業者ですね〜❤」

═══════════════════════════


 同業者ではありません。

 たぶん。

 少なくとも、私は名乗っていません。


 ベルネさんは、入口に立った瞬間から姿勢がまっすぐでした。

 背が高く、正規ダンジョンマスター用の制服を着ています。

 顔はきれいですが、目つきが完全に査定する人でした。


「ここが例の廃ダンジョン(はいだんじょん)ね」


「......例の」


「変な噂が立ってるのよ。ランキングが動いてるって。こんなところが」


「こんなところ......」


「信じられないから、直接確認しに来ただけ」


「それは、どうも」


 ベルネさんは第一通路へ入りました。

 歩き方に迷いがありません。

 さすが正規ダンジョンのマスターです。


 そして、最初の感知糸(センサーワイヤー)を見て顔をしかめました。


「なにこれ。間隔がバラバラじゃない」


「素材の都合です」


「言い訳ね」


「事実です」


「張り方も均一じゃない。角度も甘い。美しくない」


「美しさは評価項目に入れていません」


「入れなさい」


 いきなり指導が始まりました。何様なんでしょうか。


 ベルネさんは壁に手を当て、感知糸の角度を確認します。

 それから、ふと黙りました。


「......でも、変ね」


「はい?」


「この間隔、バラバラすぎるせいで、逆に歩幅が読めない」


「......」


「普通の英雄は、一定間隔の罠ならリズムで抜ける。でもこれは、素材不足のせいでリズムが崩れてる。だから正攻法で突破しにくい」


「......素材の都合です」


「それ、意図的?」


「素材の都合です」


「二回言ったわね」


「大事なので」


 ベルネさんは手帳を取り出しました。


「これ、盗んでいい?」


「困ります」


「では参考にする」


「それも困ります」


「じゃあ見なかったことにする」


「手帳を閉じてから言ってください」


 ベルネさんは閉じませんでした。


 第二通路、第三通路でも、ベルネさんは文句を言いました。

 文句を言いながらメモしました。

 メモしながら、たまに悔しそうな顔をしました。


「この火炎柱ファイアピラー、出力が半端ね」


「素材の都合です」


「雑なのに、逃げ道が限定されてる」


「補修が間に合っていません」


「偶然?」


「偶然です」


「腹立つわね」


「私も困っています」


 石段の上から、シア様が見ていました。

 ベルネさんがその存在に気づきます。


「......なに、あの女神」


 シア様がにこっとしました。


「気のせいじゃないですか〜?」


「いや、いるでしょ。邪魔ね」


「そうですか〜」


「邪魔だって言ってるのよ」


「気のせいじゃないですか〜?」


 ベルネさんが、一歩下がりました。

 罠より女神のほうを警戒しています。

 正しい判断かもしれません。


 一通り見終えたベルネさんは、入口に戻ってきました。

 手帳は、最初の三倍くらい膨らんでいます。


「改善点が五点。参考点が二点。あと盗用疑惑が一件」


「盗用疑惑はそちら側では?」


「細かいことはいいのよ」


「細かくありません」


「改善点は教えてあげる」


「感謝はいただかなくて大丈夫です」


「感謝じゃないわ。同業者として言ってあげてるの」


「同業者ではないと思うんですが」


「設計者同士よ」


 私は少しだけ固まりました。


 アルベロさんにも、似たようなことを言われた気がします。

 設計者。

 同業者。

 私の罠を、罠として見ている人。


「......アルベロさんと同じことを言っています」


「誰よそれ」


「施設レビューを置いていった人です」


「なにその人。腹立つわね」


 ベルネさんは改善案を書いた紙を一枚置いていきました。

 去り際に、こちらを振り返ります。


「また来るかもしれないわ」


「批評は歓迎していません」


「批評じゃないわ。確認よ」


「もっと困ります」


 ベルネさんは鼻を鳴らして帰っていきました。

 でも、出口で一度だけ、感知糸のほうを見ました。


「......間隔がバラバラだから機能する、か」


 その言葉で、私は少しだけ動けなくなりました。

 自分では、説明できなかった設計の核心(かくしん)でした。


 シア様のニヤニヤが、少し薄かった。

 ハルカは、ベルネの残した改善案を見ていて気づかなかった。


挿絵(By みてみん)


═══════════════════════════

ダンジョン配信中(登録者:6)

女神様「また来るといいですね〜❤」

═══════════════════════════


 改善の余地があります。

 同業者対応について。


 改善点は五点。

 参考点は二点。

 盗用疑惑は一件。


 盗用は困ります。

 でも「間隔がバラバラだから機能する」という指摘は、正しかったです。


 ......メモします。


 感謝するなつってんだろ。同業者の批評は歓迎していません。

 でもメモはしました。


登場キャラクター紹介

・ハルカ:廃ダンジョン(はいだんじょん)設計者。自分の設計の核心を外から言語化されました。

・シアラ:女神様。ベルネにもまったく動じません。むしろ怖いです。

・ベルネ:正規ダンジョンの女性マスター。馬鹿にしに来て、参考点を見つけて帰りました。なぜか腹立ちます。


今回のズレパターン

活用型(かつようがた)

ベルネはハルカの設計を批評しに来ましたが、結果的に「使える部分」を発見してメモしました。


═══════════════════════════

【今話のダンジョンデータ】

 ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :65531位 → 65530位

 配信視聴者数      :5名 → 6名

 本日の用途       :同業者視察会場

 コートのメモ(今話)  :「ベルネ批評・改善点5・参考点2・盗用疑惑1・間隔設計再確認」

═══════════════════════════


視聴者増減コメント:

ランキングが動きました。

ベルネさんが来た日です。

一名増えました。困っています。たぶん本人です。


少しでも楽しんでいただけたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ