「批評するな」
ライバルダンジョンのマスターが来ました。
改善案を大量に置いていきました。
今日も感謝されてしまいました。
いえ、本人は感謝ではないと言っていました。
批評だそうです。
参考だそうです。
視察だそうです。
全部、困ります。
今日の来訪者は、近隣の正規ダンジョンのマスターです。
名前はベルネ。
「視察に行く」と、一方的に連絡が来ました。
今日の罠には自信があります。
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女神様「同業者ですね〜❤」
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同業者ではありません。
たぶん。
少なくとも、私は名乗っていません。
ベルネさんは、入口に立った瞬間から姿勢がまっすぐでした。
背が高く、正規ダンジョンマスター用の制服を着ています。
顔はきれいですが、目つきが完全に査定する人でした。
「ここが例の廃ダンジョンね」
「......例の」
「変な噂が立ってるのよ。ランキングが動いてるって。こんなところが」
「こんなところ......」
「信じられないから、直接確認しに来ただけ」
「それは、どうも」
ベルネさんは第一通路へ入りました。
歩き方に迷いがありません。
さすが正規ダンジョンのマスターです。
そして、最初の感知糸を見て顔をしかめました。
「なにこれ。間隔がバラバラじゃない」
「素材の都合です」
「言い訳ね」
「事実です」
「張り方も均一じゃない。角度も甘い。美しくない」
「美しさは評価項目に入れていません」
「入れなさい」
いきなり指導が始まりました。何様なんでしょうか。
ベルネさんは壁に手を当て、感知糸の角度を確認します。
それから、ふと黙りました。
「......でも、変ね」
「はい?」
「この間隔、バラバラすぎるせいで、逆に歩幅が読めない」
「......」
「普通の英雄は、一定間隔の罠ならリズムで抜ける。でもこれは、素材不足のせいでリズムが崩れてる。だから正攻法で突破しにくい」
「......素材の都合です」
「それ、意図的?」
「素材の都合です」
「二回言ったわね」
「大事なので」
ベルネさんは手帳を取り出しました。
「これ、盗んでいい?」
「困ります」
「では参考にする」
「それも困ります」
「じゃあ見なかったことにする」
「手帳を閉じてから言ってください」
ベルネさんは閉じませんでした。
第二通路、第三通路でも、ベルネさんは文句を言いました。
文句を言いながらメモしました。
メモしながら、たまに悔しそうな顔をしました。
「この火炎柱、出力が半端ね」
「素材の都合です」
「雑なのに、逃げ道が限定されてる」
「補修が間に合っていません」
「偶然?」
「偶然です」
「腹立つわね」
「私も困っています」
石段の上から、シア様が見ていました。
ベルネさんがその存在に気づきます。
「......なに、あの女神」
シア様がにこっとしました。
「気のせいじゃないですか〜?」
「いや、いるでしょ。邪魔ね」
「そうですか〜」
「邪魔だって言ってるのよ」
「気のせいじゃないですか〜?」
ベルネさんが、一歩下がりました。
罠より女神のほうを警戒しています。
正しい判断かもしれません。
一通り見終えたベルネさんは、入口に戻ってきました。
手帳は、最初の三倍くらい膨らんでいます。
「改善点が五点。参考点が二点。あと盗用疑惑が一件」
「盗用疑惑はそちら側では?」
「細かいことはいいのよ」
「細かくありません」
「改善点は教えてあげる」
「感謝はいただかなくて大丈夫です」
「感謝じゃないわ。同業者として言ってあげてるの」
「同業者ではないと思うんですが」
「設計者同士よ」
私は少しだけ固まりました。
アルベロさんにも、似たようなことを言われた気がします。
設計者。
同業者。
私の罠を、罠として見ている人。
「......アルベロさんと同じことを言っています」
「誰よそれ」
「施設レビューを置いていった人です」
「なにその人。腹立つわね」
ベルネさんは改善案を書いた紙を一枚置いていきました。
去り際に、こちらを振り返ります。
「また来るかもしれないわ」
「批評は歓迎していません」
「批評じゃないわ。確認よ」
「もっと困ります」
ベルネさんは鼻を鳴らして帰っていきました。
でも、出口で一度だけ、感知糸のほうを見ました。
「......間隔がバラバラだから機能する、か」
その言葉で、私は少しだけ動けなくなりました。
自分では、説明できなかった設計の核心でした。
シア様のニヤニヤが、少し薄かった。
ハルカは、ベルネの残した改善案を見ていて気づかなかった。
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ダンジョン配信中(登録者:6)
女神様「また来るといいですね〜❤」
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改善の余地があります。
同業者対応について。
改善点は五点。
参考点は二点。
盗用疑惑は一件。
盗用は困ります。
でも「間隔がバラバラだから機能する」という指摘は、正しかったです。
......メモします。
感謝するなつってんだろ。同業者の批評は歓迎していません。
でもメモはしました。
登場キャラクター紹介
・ハルカ:廃ダンジョン設計者。自分の設計の核心を外から言語化されました。
・シアラ:女神様。ベルネにもまったく動じません。むしろ怖いです。
・ベルネ:正規ダンジョンの女性マスター。馬鹿にしに来て、参考点を見つけて帰りました。なぜか腹立ちます。
今回のズレパターン
・活用型。
ベルネはハルカの設計を批評しに来ましたが、結果的に「使える部分」を発見してメモしました。
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【今話のダンジョンデータ】
ダンジョンランキング :65531位 → 65530位
配信視聴者数 :5名 → 6名
本日の用途 :同業者視察会場
コートのメモ(今話) :「ベルネ批評・改善点5・参考点2・盗用疑惑1・間隔設計再確認」
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視聴者増減コメント:
ランキングが動きました。
ベルネさんが来た日です。
一名増えました。困っています。たぶん本人です。
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