表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
100/100

「やっぱり感謝するなっつってます ――罠をたくさん作って、英雄の皆さんをお待ちしています」


最終日ではありません。

また来ます、と言われました。

私は、待つことにしました。

 今日の罠も、いつも通りです。


 第一罠(ファーストトラップ)は落下。

 第二罠(セカンドトラップ)は拘束。

 第三罠(サードトラップ)は転送。


 特別な終わりにはしません。

 ダンジョンは、終わらせるためにあるのではなく、迎えるためにある。


 今日の罠には自信があります。


 ═══════════════════════════

 ダンジョン配信中(登録者:480)

 女神様「最後まで、見ています」

 剣士「また見ます」

 杖つかい「また来ます」

 罠職人見習い「また解析します」

 査定員「また記録します」

 女神様「だめです」

 ═══════════════════════════


 最初に来たのはミリさんだった。


「また来ました」


「はい」


 ミリさんはスライムAとスライムBに手を振った。

 スライムたちはぷるぷる返した。


 次に来たガレンさんはガルルに礼をした。

 ドーガさんは第二罠(セカンドトラップ)の拘束鎖に自分から突っ込んだ。

 ノノカさんは第三罠(サードトラップ)の転送陣を見て泣きそうになっていた。

 タルガさんは収益表を出し、エルマさんは査定表を出し、ルーチェさんはドラゴンウォームを肩に乗せ、ベルネさんは「腹立つけど、完成度は上がったわね」と言った。


 全員、好き勝手でした。


 なのに、私は止めなかった。


 止めきれなかった、ではありません。

 少しだけ、止めなかった。


 コメント欄が流れる。


 ═══════════════════════════

 剣士「また来ます」

 杖つかい「また見ます」

 罠職人見習い「また解析します」

 査定員「また記録します」

 料理人「また食材を確認します」

 温泉研究家「また入浴します」

 ダンマス同業者「また参考にします」

 女神様「マスターは困っていますね」

 ═══════════════════════════


「困っています」


 私は言った。

 でも、少しだけ声が軽かった。


 シア様が隣に立っていた。

 昨日よりも自然に。

 肩が触れる距離で。


「これからも、あなたを放しませんよ」


「......シア様」


「何ですか〜?」


「業務中です」


「知っていますよ〜」


 コートの裾に、文字が浮かぶ。


【逃走経路:確認済】

【使用:しない】

【シア様:隣】

【距離:近い】

【対応:保留】


 私は、魔道水晶の方を見た。

 配信は続いている。

 英雄たちも、モンスターたちも、女神様は隣で、こちらを見ている。


 私は、初めて自分から名乗ることにした。


「私はハルカです」


 コメント欄が止まった。


「この廃ダンジョン(はいだんじょん)の、ダンジョンマスター(DM)です」


 スライムAがぷるぷるした。

 スライムBもぷるぷるした。

 ガルルが礼をした。

 ドラゴンウォームが天井から落ちかけた。


「落ちないでください」


 少しだけ笑いが起きた。


「やっぱり感謝はいただかなくて大丈夫です」


 シア様が隣で、楽しそうに目を細めた。


「でも――」


 私はコートを握った。

 もう、ここに消す名前はない。

 残っているのは、設計図と、計算式と、いつの間にか増えたモンスターの名前と、明日の罠案だけ。


「罠をたくさん作って、()()()()()()()()()()()()()()()


 その隣には、女神さまがいます。

 シア様が、私の腕を少しだけ強く抱かれました。


「ふふっ」


「シア様」


「何ですか〜?」


「......距離、近いです」


「気のせいじゃないですか〜?」


()()()()()()ですか」


「最後じゃありませんよ〜」


 最後じゃない。

 たしかに、そうかもしれない。


 ミリさんが言った。


「また来ます」


 ガレンさんが言った。


「また来る!」


 ドーガさんが言った。


「また死にに来る!」


「死にには来ないでください」


 ノノカさんが泣きながら言った。


「師匠、また来ます!!」


「弟子はとっていません」


 私はコートの端に、明日の罠を書き込んだ。


【明日の罠:未定】

【来訪予定:多数】

【感謝対策:未完成】

【女神様:隣】


 未完成。

 それでいい気がした。


 感謝するなつってんだろ。感謝はいただかなくて大丈夫です。最後まで。

 また来るなとは言ってませんけど感謝はするなって言ってるでしょうがああああああああ!


* * *

 

「また来ます」


 シア様と二人で、英雄の貴方をお待ちしています。



【今回の登場キャラクター】


・ハルカ:初めて自分から名乗った廃ダンジョンのDM。

・シア様:その隣にいる女神様。

・常連たち:また来る面々。

・モンスターたち:もう暫定識別番号では済まない面々。


【今回のズレパターン】


 誤解型、そして通常運転。最終話ですが、ハルカとシアのダンジョンはきっとこのまま続きます。


 ═══════════════════════════

【今話のダンジョンデータ】

 最終ダンジョンランキング(だんじょんらんきんぐ) :430位 → 399位

 最終配信視聴者数      :480名 → 520名

 本日の用途       :完結宣言兼通常営業会場

 最終コートのメモ(今話)  :「私はハルカ。DMです。明日の罠:未定。女神様:隣」


【モンスター管理状況】

 スライムA:在籍68日目 稼働率0%(名乗りに反応)

 スライムB:在籍66日目 稼働率0%(同じく反応)

 ガルル:在籍67日目 稼働率0%(礼)

 ドラゴンウォーム:在籍58日目 稼働率0%(落下未遂)

 ═══════════════════════════


 少しでも楽しんでいただけたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ