第二十話 新たな魅力
彼は、学業とスーパーのオープニングスタッフとしての長時間労働の合間を縫って、ようやく洗車をするための時間を捻出した。
洗車を終え、いよいよスプレー式コーティング剤を試す番が来た。
まずはボディにスプレー剤を吹き付け、一緒に購入した手のひらサイズの専用タオルで塗り広げる。
「うわ、簡単だ」
缶ワックスで経験した、あの石油臭さも、塗り込む際の重い摩擦感もなかった。
スプレー剤は滑らかに伸び、専用タオルは驚くほどスムーズにボディの上を滑った。
作業はあっという間に終わり、その手軽さに彼は深く感心した。
彼にとって、少ない時間で最大限の効果を得られることは、何よりも魅力的だった。
そして、パッケージに書かれていた撥水の謳い文句を確かめるため、彼はホースの水をボディにかけた。
その瞬間、目の前で効果が現れた。
水は、真ん丸な水玉となってコロコロと流れ落ちていった。
水玉は車体の傾斜に沿ってなめらかに動き、ボンネットやルーフの上を勢いよく転がっていった。
彼はガラス撥水剤の存在は知っていた。
フロントガラスに水をかけると、それが弾かれていく様は見たことがあった。
だが、まさか塗装された車のボディで、これほど劇的な現象が起こるなどとは、想像もしていなかった。
「面白い」
思わず口から漏れたのは、素直な感想だった。
今までべったりとボディに張り付いていた水が、ガラスと同じように弾かれる。
水が張り付いて流れるシャンプーだけの洗車後の光景とは、もはや別物だった。
彼はここで、初めて「撥水」という具体的な機能の存在を強烈に意識した。
あの石油臭いワックスで得た変化と、この水を弾くという機能性こそが、彼を深く魅了した。
彼の探求はこの瞬間、「より水を弾く」という、はっきりとした目的を持ち始めた。




