悪意のない圧力が一番凶悪である
洞窟内でフリエラさんと出会ったことは、結果的に良かった。
俺と平岩先輩はフリエラさん達のパーティに同行させてもらえることになったのだ。なんでもこの洞窟は、雑魚モンスターはそこまで強くないものの、ボスはかなり手強く、俺たち初心者の手には負えないらしい。
しかも、そのボスの出現場所はランダム。
俺たちが適当に歩き回っていたら、一定の確率でハチあっていたのだとか。……考えただけでも恐ろしい。
それから、フリエラさんのパーティメンバーの人からは色々と聞かれた。
特に俺がレイチェルさんから依頼を受けたという話をした時には、同情の視線が一身に集まっていた。どうやら、この人達も何か事情を知っているらしい。全く、どんな恐ろしい依頼なんだが、今更ながら後悔している。
そんな感じに洞窟内をフリエラさん一行プラス俺たちの八名は進む。
雑魚モンスターはほとんど処理をしてくれるフリエラさん達。なんだかかなりお世話になってしまっている。
「ありがとうございます。フリエラさん」
「これくらい構わないわ」
周囲の敵モンスターをたった一人で一掃したフリエラさんは涼しい顔でそう答える。
順番に敵と当たり掃討しているようだが、フリエラさん以外は二、三人で敵と戦っている。話していて感じだが、このパーティではフリエラさんがズバ抜けて強いっぽい。勿論、他のパーティメンバーも強いのだが、なんというか格が違うという感じにフリエラさんは凄まじいのだ。
「フリエラさんって、もしかして物凄く強いんですか?」
俺がそう尋ねると、フリエラさんは首を横に振るが反対にパーティメンバーの男達はそれを肯定的に捉えていた。
「リダは強いぜ。殲滅力はこのゲーム内でも三番指には入ると俺は思ってる」
「それな。マジでリダの動きは速過ぎて意味わかんねぇもん」
「一対一での対人戦勝率も九割あるし。流石はリーダーって感じだよね」
フリエラさんの仲間達は口々にそう言う。
やっぱり、強いのか。しかし、対人戦の勝率が九割って……強すぎるでしょ。
「別にキャラのステータスが高いだけよ」
そうは言うものの、フリエラさんのパーティメンバーの人達は尊敬の眼差しを向けていた。
あれだけ慕われているフリエラさんは強さ以外にも凄いものを持っているのだろう。人望というのは強さだけでは手にできない。
「田中も頑張ればあれくらいやれるんじゃない?」
「無茶言わないでください。レベルも足りないし、俺自身の技術も伴ってないんですから」
「諦めたら、そこでゲーム終了だよ!」
「ゲームは終わりませんし。目指せるような動きじゃないですよ」
だいたい、俺のキャラじゃ敏捷値をあんなに高められないだろうし。しかも、敏捷値に至っては平岩先輩の方が高いしな。
そんな会話を平岩先輩としていたところ……。
「そういえばさ、ゼンくんはなんで運営の人に依頼されたん?」
魔導師の人がそう尋ねてきた。
「……俺にも分からないですね」
「そっか。でも、きっと何かあるんだよなぁ」
「何かですか……」
「うん。だってうちのリダが依頼されてる内容と同じなんでしょ? それって相当期待されてるんだと思うよ」
期待ねぇ。
何を期待されているのやら。俺とフリエラさんの実力の差は歴然である。運だけの男にやれることがあるとするならば、それは運任せのギャンブルくらいだろう。
てか、ギャンブルとか役に立つのか? 全然イメージうかばないんだけど。
「流石は田中だね!」
事情を全く知らないのに、そんなことを言ってくる平岩先輩。
「先輩、変なプレッシャー掛けないでください」
「へ?」
「……いえ、なんでもないです」
無自覚なのは罪だと思う。
依頼について詳しいことは何も知らない。ただ、フリエラさんやその仲間の人達の反応から、ひたすらに厄介な案件であることだけは確信を持てた。
俺の手に余ることは確定。
平岩先輩は俺が凄いのだと錯覚している。……居心地悪いし、勘弁して欲しい。切実にそう思うのだった。




