運営と会うことになったんだが……
「ログインですか?」
俺は耳を疑った。
話したいという向こう側の要求が、何がどうしてログインして欲しいなんて方向にぶっ飛ぶのだろうか?
駄目だ、小池さんの心理が読めない……。
「もしかして、今日は忙しいかい?」
「いえまあ、八時までなら暇ですけど……」
「じゃあ、今から大丈夫?」
時刻は午後七時二十三分。時間に余裕はある。ただ……。
このままログインしたら、夕食を食う時間がなくなるんだよなぁ……酒は冷蔵庫で冷やしておくとして、お弁当温めて貰ったから、絶対冷めちゃうわ。
しかし、断って先延ばしにするというのもそれはそれで嫌だ。俺は覚悟を決めた。唐揚げ弁当を犠牲にログインすることに!
「分かりました。ログインします」
ログインすることを承諾すると、
「ありがとう」
素直にお礼を言われた。
そして、小池さんはそのまま話を続ける。
「ゲームエリア内の初期街、リスポーン地点から大通りを真っ直ぐ進むと大きな塔がある。そこに来て欲しいんだ。僕もログインしてそこで待ってるから」
「分かりました。塔に着いたらどうすれば?」
「塔の入り口で手を振ってるから、話しかけてくれ」
「分かりました」
「では、君が来るのを待っているよ」
そう最後に告げると、電話は切れた。
嵐のような人だっだ。……って、終わってないから、またあの人とゲーム内で会わないとだから。
「取り敢えず、行くか」
ちょっとぬるくなってしまった弁当を置いたまま、俺は渋々VRゴーグルを頭に被る。
ちょっと話すだけ、八時には平岩先輩と一緒に昨日の続きをプレイする。それだけだ。何も難しいことはない。とはいえ、ログインとまでなると少々長くなる気もしなくもない。
時間通りに平岩先輩の元へと行けなかった場合連絡しないといけないな。
そんなことを考えながら、クラウディア・オンラインへとログインをした。
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ログインすると、昨日と同じように活気のある街の光景が広がっていた。
レベルが七。
運の値が五百ちょいである……。運以外の数値は二桁。紛うことなきクソキャラだ。
何故こんなキャラを引き当てたのだ……。運がいいのか悪いのか……いや、キャラ自体の運はいい。って、そういうことじゃない!
世界で俺だけが所有する運しかステータスを上げられないキャラ。正確にはステータスポイントを運にしか割り振りできないキャラだが、同じことである。
レベルアップで上がる他のステータスにだって、限界がある。そこを補えないというのは、中々大変だ。
「キャラの交換とか、そういう話ならいいんだけどな」
直接会う用件は未だに不明。あわよくばこのキャラ返品しますと言いたいくらい。
しかし、あの様子から察するに不具合でないのだから、そういう俺にとって好都合な話ではないのだろう。しかも、キャラは俺個人につき一体しか作成できない。SNSなどのアカウントを複数持っていたら、捨て垢みたいに沢山のキャラを保有できる……そんなゲームではないのだ。
戸籍一つにつき一つのキャラみたいに一人一つのキャラしか作れない。返品も不可だと思う。
つまり、捨て垢が作れないのだ。保有するキャラは自分の分身。現実世界の俺がいるように、このクラウディア・オンライン内での『ゼン』というキャラは正しく俺の分身と言えよう。
その事実を思い出すと、更に虚しくなる。俺は運しか取り柄のないキャラを保持しているのだと現実を突きつけられるようで。




