知らないおじさんたち(平岡大志)
「……バカッ! ……バカッ! ……生きれっ、このクソ野郎ッ!!」
「アソブーーーッ!!!」
自分で自分の頭や頬を叩くアソブを、必死に抱きしめた。
そしたら何を思ったのか、オウシロウも無言で加わってきて、オレたちはアソブをサンドイッチのように挟み込んだ。
そうしたら、どこから現れたのか、「僕も混ぜて~」と、青白い顔をした無精ひげのおじさんがニヤニヤしながら後ろから抱きついてきて。
ハァハァと熱い鼻息が首筋にかかって少しくすぐったくて。
そうしたら、酒臭いホームレス風のおじさんがふらふらとやってきて、「そんなに自分の事を傷つけちゃかわいそうじゃないの。カラダは大事にするものよ」と横からいきなり抱きついてきて。
「……ちょ……だっ、誰なんですか……っ!? ……離してくださいっ」とアソブはさらに暴れて。
「落ち着け……っ! アソブ……ッ!」って言ったら、
「そうだぞ少年。落ち着きなさい。何事もなんとかなるさ……うぷっ……」と、片手に一升瓶を握った別のホームレス風のおじさんが、急に横から抱きついてきて。
「……あ……あつい……、く……くさい……」とアソブが言うのが聞こえて。
そしたら、
「うひひ……うひひひひっ……」と、また別のホームレス風のおじさんが、幸せそうにニヤニヤしながら、オウシロウの後ろから抱きついてきて。
「……な……なんなんですか……っ!? ……あなたたちは……っ!?」とアソブが言うと。
「……ハァハァ……僕ちんは、たまたま通りかかっただけ、んほんほぉ、ん~最高ぅ~」と青白いおじさんが、ジョリジョリする頬でオレの背中をさすってくれて。
「……ぁん♡ アタシたち、近くで飲んでたのよ。そしたら、かわい子ちゃんたちがなにやら揉めてるのが見えたからさぁ。ナニゴト? と思って、ほっとけないじゃなぁい? ぁあん……♡」
「……ずっと見てたぞ……ひっくっ……」
「……うっひっひっ……うっひっひっひっひ……」
と、ホームレス風のおじさんたち。
「……や、やめてください……っ。……離れて……っ」とアソブ。
「もっと自分には優しくしなきゃダメ。こんなに頑張ってるんだから、ん~チュッ♡ こうやって可愛がってあげないと」
ホームレス風のおじさんはアソブの頬にチューをした。
「……な、何するんですかあっ!?」
そして、「あなたも♡」と言ってオレの頬にもチューしてくれて、「あなたも♡」と言ってオウシロウの頬にもチューをして、「あなたもね♡」と言って青白いおじさんの頬にもチューをした。
「……もう、離して……。うっ……やめ……てっ……」
「いいじゃない。もう少しだけ。みんなでこうして身を寄せ合って、疲れた心と体を温めあいましょうよ♡ ねぇ♡」
「……ハァハァ、そうだね……もう少しだけ……んほんほんほぉ……ハァハァ……」
「……せ~い~しゅ~んの~勲章は~♪ ……ひっくっ……」
「……うっひっひっひっひっひ……」
「アソブーーーッ!!!」
「……いいかげんに……、離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーッ!!!!!」
アソブがぶちギレた!
オレたちが解放してやると、アソブは「離れろおおおおおおッ!! 近づくなあああああああッ!! あっちへ行けええええええええーーッ!!!」と、肩から斜めがけしてていたスクールバッグをぶんぶん振り回して、発狂した。
「アソブッ!?」
「あらあら、元気あるじゃない。これだけ威勢がよければ、もう大丈夫でしょう」
ひと通り暴れて、落ち着いたアソブは「はぁはぁ……」と、肩で息をして、
「……学校……行こう……」
そう言うと、踵を返してスタスタとひとりで行ってしまった。早歩きで。
「おい、待てよっ」
オレとオウシロウは、投げ捨ててあったリュックを拾い、「「ありがとうございましたっ!!」」とおじさんたちに深く頭を下げてから、アソブを追いかけた。
「いってらっしゃ~い♡ 学校頑張ってねぇ~!」
「がんばれよ~! ……ひっくっ……」
「ぶちかましてこーい! ひっひっひっ……」
「……んほぉ、ありがとね~!」
後ろから、おじさんたちの声が聞こえたので、振り返っておおきく手を振った。




