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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第六章・魔法王国イエロートパーズ/天使の炎と地獄炎
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プリムたちの船旅

 プリムたちを乗せた船は、イエロートパーズ王国へ向けて順調に進んでいた。

 プリムは、船室で読書をしようと思ったがすぐに気持ち悪くなったので断念……船の揺れを感じながら文字を追うと、どうも気分が悪い。

 クロネはベッドで丸くなっている。こちらも気分が悪いようだ。


「にゃうぅ~……キモチわるいにゃん」

「船酔いですね。お水、飲みますか?」

「飲んだにゃん……」

「ん~……あ、そうだ」


 プリムはポンと手を叩き、クロネのベッドに座る。

 クロネは片目を開け、ネコミミをぴくっと動かし尻尾でベッドをぺしっと叩く。『構うな』というサインなのだが、プリムからすれば可愛いだけの行動だ。

 プリムは、右手に力を込める。


「クロネ、少しだけ失礼しますね」

「にゃ!? 触ん……にゃう? あれ……なんか治ってきたにゃん」


 プリムの特異種としての能力、『神医(カムイ)』である。

 怪我を治す能力で、深い切り傷や刺し傷にも効果がある。風邪などの症状を和らげることはできるが完治まではいかない。というのがプリムの認知だった。

 だが、ガブリエルから力を分けてもらった今は違う。怪我の回復効果が上がり、病気も治せる。船酔いも試せるかクロネで試したところ、どうやら効果があったようだ。

 だが、自分を治すことはできないのと、体力の消費だけは変わらなかった。


「ふぅ……よかった、効いて」

「……ま、感謝しとくにゃん」

「はい♪」

「……なーんでそんなに嬉しそうにゃんだか」


 クロネはベッドから起き上がり伸びをする。


「あんた、イエロートパーズ王国のお使い終わったらどうするにゃん? あの変態野郎と一緒に冒険するのかにゃん?」

「へ、変態野郎って……」

「あいつ、うちのおっぱい揉んだし下着に手を突っ込んだにゃん!! この恨みは一生忘れないにゃん!!」

「クロネがフレアを暗殺しようとしたのが原因でもあるけど……」

「うるさいにゃん!! まぁそうだけど……そんなこと関係ないにゃん!! 女の子の身体をベタベタ触る男なんて嫌いにゃん!!」

「あはは……ま、まぁ、きっと仲良くできますよ」

「……ふん」


 クロネはそっぽ向く。尻尾が揺れてなんとも可愛らしい。

 

「ま、どうでもいい情報だけど、治療代として教えてやるにゃん」

「え?」

「ホワイトパール王国、第一皇子マッケンジーと第四皇子マーナが国家反逆罪で投獄されたにゃん」

「…………え?」


 それは、プリムの兄と姉の話だった。

 いきなりのことでプリムの思考が停止する。


「あんたに会う前に集めた情報にゃん。ま、使い道ないからどうでもいい情報にゃん」

「お、お兄さま、お姉さまが……ど、どうして」

「あんたは死んだことになってるけど、第五皇子ウィンダーが裏でいろいろやってるにゃん。まずは国に影響力の強い兄と姉から、その次に下……あんたの捜索も行ってるみたいにゃん」

「そ、そんな……」

「それと、ホワイトパール王国には関わらにゃい方がいいにゃん。噂では、第五皇子ウィンダーには天使様が付いてるみたいにゃん」

「…………」

「ま、あんたも天使の庇護を受けてるようなモンにゃん。心配はいらないにゃん」

「……ウィンダー兄さま」


 プリムは顔を伏せてしまった。

 少し余計なことだったとクロネは思ったがどうでもいい。イエロートパーズ王国へのお使いが終わればおさらばなのだから。


「くぁぁ……うち、少し寝るにゃん。耳と尻尾触ったら怒るにゃん」


 そう言って、クロネは再びベッドで丸くなった。


 ◇◇◇◇◇◇


「いつ到着だ」

「さぁね。海に聞いておくれ」


 アイシェラは、エリザベータの船長室でワインを飲んでいた。

 こんな昼間から酒を飲むつもりはないが、エリザベータが勧めたので仕方なく飲んでいる。

 ブルーサファイア王国を出発して数日、船は順調に進んでいる……はず。


「海が荒れてきたら潜水艇に乗って進む。海面が大荒れでも水中は静かだからねぇ」

「……前から思っていたが、潜水艇はどうやって進んでいるんだ? この船は帆船で風を利用しているのはわかるが、海中では風はないだろう」

「簡単さ。パープルアメジスト王国の『魔道機関』を使ってる。知ってるだろ?」

「魔道機関……なるほど、技術国家のパープルアメジストか」


 魔道機関。

 魔力を使ったカラクリだ。人の力では動かせない大きなものを、鉄や歯車、電気配線などを使った仕組みで動かす物。パープルアメジスト王国は魔道機関技術において他国の追随させない。

 

「潜水艇に『スクリュー』とかいう羽を付けて、魔道機関で回してんのさ。専属の魔法使いに魔力で動かしてもらってる」

「ほぉ……」

「アイシェラ、お前も魔法は使えるんだろう?」

「まぁな。だが私は魔力が絶対的に少ない。それに初歩的な水魔法を数種類だけしか習得していない」

「十分さね。素質があるだけ大したもんだ」


 ワインを一気に煽り、エリザベータは外の景色を眺め……目を細める。


「明日かね……」

「? 何がだ?」

「明日、潜水艇に乗り換えて進む。イエロートパーズ王国まではまだかかるね」

「……わかるのか?」

「ああ、海を愛してるからね」


 エリザベータがニヤッと笑い、アイシェラのグラスにワインを注いだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 エリザベータの言った通り、翌日には雲行きが怪しくなった。

 最低限の人員を潜水艇に乗せ、残りは引き返す。

 新しく作った潜水艇は大きく、最新式の『魔道機関』が積んであり、狭いながらも個室まで付いていた。

 そして、プリム、アイシェラ、クロネの三人は同室になった。


「アイシェラ、近づいたら殴る」

「あんた、外で寝たら?」

「くぅぅ……姫様に邪魔者扱い!! いい!!」


 アイシェラは相変わらずだ。

 ベッドを三つ並べ、三重に重ねた丸い窓から外が見える。外と行っても海中……海面が荒れているせいか濁って何も見えない。

 クロネは丸くなり、アイシェラは装備の点検、プリムは読書を始めた。船と違い潜水艇は殆ど揺れない。


「イエロートパーズ王国か……」

「アイシェラ?」

「いえ、魔法王国の話で、騎士団時代に聞いたことを思い出しまして」

「どんな話?」

「…………」


 クロネは片目だけを開けた。


「イエロートパーズ王国には魔法学園があり、騎士団の中にも魔法学園の卒業生が何人かいまして、そこから聞いた話ですが……どうも、魔法学園の理事長とやらは危険な人物らしいです」

「危険? なんで?」

「魔法学園理事長は『特級冒険者』の一人、『虹色の魔法使いアルコバレーノ・ウィッチ』ブリコラージュというお方のようです」

「特級冒険者……」

「ええ。人類最強、天使と肩を並べるほどの強さを持つ『人間』ですね。話によると、天使ですら特級冒険者には手を出さないとか」

「すごい人なんだぁ……会えるかな?」

「……いえ、むしろ接触するべきではないかと」

「え、なんで?」

「冒険者の間では有名な言葉です」


 アイシェラはプリムを見て、真面目な顔で言った。


「『特級冒険者は狂っている』……どうやら、人格者というわけではないようで、騎士団の魔法使いたちも恐れていました。もちろん、特級に相応しい実力や功績もあるようですが」

「こ、怖いのかな……」

「大丈夫。お嬢様は私が守ります」

「う、うん。ありがとう、アイシェラ」

「いえ、お礼はキスで構いません」

「寝ろ」

「あふんっ!!」


 悶えるアイシェラを無視し、プリムは読書を再開。

 

「…………」


 なぜか、クロネは両目を開けて歯を食いしばっていた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[気になる点] カグヤみたいに特級冒険者レベルの力を持っていても問題行動してるって事で昇級しないのに、特級は漏れなく狂ってると言われる程の問題人種ばかりって 現在の特級冒険者は昇級するまで猫被ってたの…
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