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転生した事を後悔する世界  作者: 寒月 シバレ
第二章『新たな人生』
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スイカよりも大きい熱いリンゴ

 ゴーエン達の家にお邪魔し部屋の内装に驚いた束の間、目を疑った事がもう一つあった。メーゼンがレッドドラゴンから、長髪で白髪頭のたくましい身体をした人間へと姿を変えた。


「親父手伝おうか?」

「すまんな。じゃあそれを切ってくれ」


 手伝いを始めた、赤髪でオールバックの顎髭を生やしたたくましい身体をした人間はレグラムだろうか。そして今私の腰に抱き付いている、オレンジ色の髪で天然パーマの子供はゴーエンだろうか。不思議にしている私に対してメーゼンが笑い掛ける。


「どうしたんだ、二人とも座りなさい。もうすぐ出来るから」

「こらゴーエン! そんなにくっついてたら動けないだろ、離れなさい」

「やだ!」

「やだじゃない!」


 頭を大きく横に振り、離れるのを拒むゴーエン。


「……悪いな」

「いえ。子供は好きなのでかまいません。むしろ嬉しいです」

「そう言ってくれると助かるよ」


 しゃがんでゴーエンと目を合わせる。


「ゴーエン、座ろうか」

「うん!」


 手を繋いでテーブルに向かう。ドラゴンの時に付けた首飾りも、サイズが小さくなってゴーエンの首に掛かっていた。


「こんな物しか無くてすまないが、良かったらどうぞ」


 そう言ってメーゼンがテーブルに出したのは、香りも見た目もどう見てもアップルパイだった。


「美味しそうなアップルパイですね」

「アップルパイ? これはビクリンパイだ。……ああ、お前はビクリンも知らないんだったな」

「ビクリンって栗じゃ無かったんですか!?」


 予想が外れた。ビクリン……ビッグなりんごでビクリン。これがビクリンだと出された物は、スイカよりも一回り大きいりんごだった。


「熱っ……何これ熱い」

「ビクリンは熱い物だろ。ああ、それも知らないんだったな」


 ニヤニヤと笑って言うレグラム。私をからかって遊んでいる様だ。


「……ゴーエン、レグラムさんが苛めるー」

「お父さん! アイを苛めたらダメ!」

「誤解だ! お父さんは苛めてないぞ!」

「次苛めたら口聞いてあげないからね!」


 二人のやり取りに思わず笑みが溢れた。


「アイ……お前……」

「え? 私は何もしてませんが」

「二人とも茶が冷めるぞ?」


 マグカップの中身は紅茶にビクリンの果肉が入ったホットドリンクで、味はアップルティーなのだが風味が強く甘酸っぱくて美味しかった。


「さて……落ち着いた所で話をしようか。フェルシアについてだったね」


 メーゼンは一つ一つ私が解るように話し始めた。まずフェルシアとはドラゴンそれぞれの種族から選ばれた神の遣いである。レッドドラゴンやブルードラゴン等の中から一頭ずつ選ばれ、争いが起きない様にフェルシアとなった者が統一している。そしてフェルシアには、特別な力が与えられるらしい。


「特別な力ってどんな力なんですか?」

「私の場合は人化した時に自由自在に炎を操れる。通常は人化した時に力が抑制されて、ドラゴン本来の力は出す事しか出来ないんだ」

「特別な力は神様が?」

「そうだ。アズラーヌ・デラウ・ビナンシェ・アルデント神様からの恩恵でな」

「え? 名前……」


 驚愕の事実を知ってしまった。神様に名前が有る事を私は聞いてい無い。


「アズラーヌ・デラウ・ビナンシェ・アルデント神様の名前がどうかしたかい?」

「いえ……名前があったなんて聞いてなかったので驚きました」

「……アイさんはこの谷やビクリンの事だけでは無く、アズラーヌ・デラウ・ビナンシェ・アルデント神様の事も知らないのか。深くは聞かないが知らない事だらけだと大変だろう?」

「いえ、たくさんの方に助けて貰ってますから。それに神様にもいつもお世話になってますし」


 産まれた時からずっと助けて貰って居る。色々と話しているうちにゴーエンとの出会いについて聞かれた。包み隠さずレッドドラゴンの討伐をギルドで受けたと正直に言うと、メーゼンとレグラムは予想とは真逆の反応を見せた。


「アイさんがレッドドラゴン相手に討ち勝った様に、私も人間相手に何度も討ち勝って来た。正々堂々戦って勝ったのなら悔いる事は無い。これから先も戦う事があるだろう。でも、躊躇ってはいけないよ? その一瞬が命取りになるからね」


 そう言って仲間を殺した私を責める事は無かった。


「そろそろ日が暮れる時間だね。アイさんはどうする? 泊まってく?」

「あー……外泊の申請をして無いので帰らないと」


 帰ると言った私に、ゴーエンは抱き付いて見上げた。


「アイ、帰っちゃうの……?」

「うん。帰らなきゃ」


 目に涙を溜めるゴーエンを優しく撫でる。他の施設に連れていかれる子供達の姿を思い出す。


「またすぐに会えるから。ね?」

「……うん」

「これ土産に持って行けよ」


 レグラムがビクリンを差し出す。そのまま受け取りそうになるが、火傷をしたくないので魔力を両手にまとわせてから受け取った。


「ありがとうございます! アップルパイ作って食べよ」

「なぁビクリンってそんなに熱いのか?」

「人間からすると素手で持てない位の熱さです。元からこんなに熱いんですか?」

「ビクリンは熱い土地でしか実らない。だから果実だけじゃなく幹も葉も熱を発してるんだよ」

「へぇ、変わったりんごですね」

「ビクリンだ」


 ビクリンを空間に入れて立ち上がる。未だにゴーエンは抱き付いたまま離れない。


「よいしょ!」


 急に抱き上げられたゴーエンは驚いて泣くのを止めた。


「絶対にまたゴーエンに会いに来るよ。だから泣かないで」

「僕……泣かない」

「お父さんやお祖父ちゃんの言う事聞くんだよ?」

「うん!」

「ゴーエンは偉いね。じゃあ小指出して……。指切り拳万嘘吐いたら針千本呑ます、指切った! お姉ちゃんとの約束だからね?」

「分かった! お姉ちゃんも絶対にまた来てね!」


 溢れんばかりの笑顔を見せたゴーエンを下ろし頭を撫でる。


「すっかりなついたみたいだな」

「神様と繋がる者同士、波長が合うのかもしれませんね。メーゼンさん、ごちそうさまでした。とても美味しかったです。これビクリンのお礼です。ビクリンに似た果物のりんごです」


 りんごを3個創造しメーゼンへ手渡した。


「本当に似ているがかなり小さいな。……アイよ、途中まで送ろうか?」

「あ、お気遣い無く。大丈夫ですから。それではまた。ゴーエンまたね」

「バイバイ!」

「バイバイ」


 手を振るゴーエンに手を振り替えし、王城にある自分の部屋に転移した。


「ふう……疲れた」


 エゼルガン谷から真帝の部屋に転移した私はベッドへダイブした。若干両手両足に痛みが残っているが、それも時期に引くだろう。


「子供達は皆元気かなぁ」


 皆に会いたい。働いてお金溜めて施設を作って、皆がいつでも帰って来れる家を作ろうと思ってた。でも実現する事はもう無い。皆に会う事も無い。


「私が強ければ、こんな事にはならなかったのにね」


 門限の時間まで少し眠る事にし、時間になってから寮へと帰った。

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