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僕に訪れた変化2

今回、主人公以外の視点があります。

マナーと社交ダンスの習得は頑張った。いち早く、あの先生に会わずに居られる生活に戻りたかったから。それでも、必要な学力を満たすために春斗さん達に勉強を教わりながらだったから習得するのに二年かかってしまったけど。

僕は八歳になった。

必要な学力を満たしたため、あと二年後には学園に入れるようだ。七緒お兄様は残念ながらもう卒業してしまい、一緒には通えないけれど。

僕が編入するのは二年後のこと。

マナーと社交ダンスを習いながら、春斗さんのところに通っていたのは勉強のためでもあるし、いつもの練習を行うためでもある。でも、王城に通っていたのはそれだけではない、赤ん坊の時とは違ってバランスを崩しやすくなったと言うこともあり、僕は杖を使うことにした。学園内に使用人を連れて行くのは可能だが、星乃くんは使用人として重要な立ち位置にいるため、護衛として連れて行くのは無理だ。

だから、棒術や槍術を咲人さんに習うことにしたんだ。嗜む程度だが、はったりくらいには使えるかもしれないと思ってさ、お父様に頼んで特注で仕込み杖を作ってもらったの。あと二年で、魔法と棒術や槍術を出来るところまで強くしないと。

まあ、その前に自分に適合する魔法を調べないといけないんだけど。

だから、しばらくは屋敷に帰らずに王城で特訓することになった。

「まずは雪未様に適合する魔法を調べましょう。私は、護衛と共に学園に編入するのがベストだと思いますが、雪未様の意思なので」

と、小言を言いながら魔法の適合を調べる魔法具を咲人さんは持ってきた。

意外にも手のひらサイズの魔法具だったことに僕は驚いた。

そんな魔法具を持ってくる咲人さんを、春斗さんは苦笑いしながら見守っている。

そして咲人さんから魔法具を受け取った後、無表情のまま、

「本来なら学園を入学するまえに調べるものなのだが、その時の雪未くんの身体状態では耐えられなかったから先送りしたんだ。まあそんな話はとりあえずおいといて雪未くん、その魔法具を握りしめてくれるかな。……うん、もうその魔法具離して良いぞ」

僕は春斗さんの言葉を黙って聞く。

そして、最後言われた通りに魔法具を離し、春斗さんの言葉を待った。

春斗さんはしばらくしてこう言う。

「雪未くん、お前が適合した魔法は二つ。飛行魔法と音魔法だ。

雪未くん、この世界には五つの種類の魔法があるのは知ってるな。

基本魔法、血族魔法、異形魔法、代償魔法、古代魔法の五つに分けられている。

基本魔法は水、火、土、風の属性魔法の総称のことだ。

血族魔法は一部を除くものの、基本魔法以外のほとんどの魔法のことの総称である。名前の通り、先祖から受け継ぐ魔法のことであり、稀に受け継がない人もいるらしいがそれは珍しいことだ。ちなみに雪未くん、お前はその稀なタイプに含まれているんだが。

まあ、お前んとこの家系は、魔法を受け継ぐことはあまりないな。性格も変わっていて、体質すらも珍しい奴らはお前ら以外にはいないよ。

次に異形魔法。天使、妖精、精霊などなどの存在を憑依出来る体質を持ち、その体質を応用して作られた魔法のこと。雪未くん以外の兄弟全員と、お前の母親がこのタイプの魔法の使い手だ。本来、異形魔法は遺伝するような魔法ではないから、家族の大抵が異形魔法の使い手なのは珍しいことだ。

憑依させる体質と、後は天性的な身体の変異により、自分の体質が魔法とされた時の場合などの総称。

そして古代魔法。

雪未くん、お前の父親がそうだ。

あいつはいつも突如現れるだろう?

それは空間魔法、瞬間移動魔法の使い手だからだ。古代魔法が使えるようになるのは、狂うほどにショックを受けたとかの精神的なダメージを受けた時に現れる魔法だ。まあ、元々古代魔法を使えるほどの才能がなきゃ、現れないけれど。

まあ、代償魔法と何処が違うの? と思う人も中にはいるんだが、古代魔法は魔法使いの中では別名条件魔法と言われているんだ。

最後に代償魔法。

代償の払い方は二通り。

代償を払うことで魔法を使う者、

そして先天的に代償を払わされたことにより、その魔法を手に入れた者がいる。

あまりに異質な魔法過ぎて、代償を払わなければ使い手が耐えきれない魔法だそうだ」

春斗さんはそこまで言って、僕を見て言葉を詰まらせ、黙ってしまった。

そんな様子に僕は察した。

……僕が使えるこの二つの魔法は、代償魔法なんだと……。

春斗さんが黙った理由は、……代償魔法のせいなんだろう思った。

恐らく、僕の代償の払い方が後者だったから言えなかった。

……わかっていても言いたくなかったんだろう。春斗さんは優しい人だから、僕にも言わせたくなかった。だから黙ったままなのだと思う。

もしかしたら、春斗さんは適合検査をしなくても僕の使える魔法の種類はわかってたのかもしれない、優秀な人だから。だから、僕が魔法に頼りすぎないように指導していたのかも。

だから、僕も何も言わなかった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


夏休みの一日前。

ここの学園は何かしら優秀であれば、学園長の口添えがあれば通うことの出来る学園に俺は通っている。

だが、それでは認められないと、どんなに田舎の貴族であろうが、貴族と言う称号を持つだけで収入は一般人より少し上回るだけの貴族であったとしても、オーダーメイドの制服を製作されるようになったのは今から少し前のことである。

だが、中には勘違いする貴族もいる。それが上流の貴族であればあるほどに厄介なことであるのは言うまでもない。権力を振りかざし、才能のある一般生徒を怖がらせ、自主退学までに追い込むなど日常茶飯事のことだ。それを知りながらも、見て見ぬ振りをする親ばかりで子が子なら親も親だとそう思う日々が続いている。

だから、まあ当たり前だろうな、オーダーメイドの制服を着ているだけで、問題児扱いだ。この時期の上流貴族の子供達の多くは、天狗になっている。後々気づけば良いが、気づかない奴らの方が正直多いのだと姉様から聞いた。

実際は親が凄いのだと言うのに、それに伴って子供である自分も偉いのだと思っているのだから、まあそうではないと気づいている子もいるから同じにしないで欲しい。

まあ、偉業を成し遂げていても、本当は叱るべき場面で叱れないなど、偉業を成し遂げたことに対しては尊敬出来るが、人として親として尊敬できるかは悩みどころだ。

正直、俺は親が凄いと気づいているから、偉ぶりたいとは思ってない。例え、それが周りの貴族にとって小さなことだったとしても、俺にとっては尊敬の出来ることだから、大きなこと小さなことでも関係ないのだ。

感覚的には俺はむしろ一般人の方に近い部分があって、本来なら目立つオーダーメイドの制服なんて着たくなく、貴族の立場を隠して入学すれば良かったと後悔しているくらいだ。この制服を着ているだけでとても目立つんだよ、俺は別に偉くも何ともないのだから。

しかも、家系ごとに色が違い、制服を見るだけで誰だかわかってしまうし、俺にとっては最悪なことでしかない。


まあ、制服の話はひとまずおいといて、だ。

同級生に変わり者一家で有名な宰相の息子がいるはずなのだが、宰相家のイメージカラーである黒の制服を着た男子生徒など見たことがない。何故かはわからないが、本来いるべき人物がいないことは不思議なことだ。

しかも、職員に聞いてもはぐらかされてしまう。

姉様からの情報では、この学園に通うはずなのだが……。

入学して約三年も経つと言うのに、一度も見かけたことがない。

七緒さんに接触してみても、事情があってねと言われて話をそらされるだけだ。

そう考えながら、歩いていれば校門の前で聞き慣れた声に声をかけられた。

「久しぶりだね、静夜せいやくん。頼みたいことがあるんだけど」

そう言ったのは、にこやかに笑う七緒さんだった。この人は噂をしてると現れる。

この人の頼みごとは、毎回厄介ごとではないので今回もそうだろうと思い、コクンと一回首を頷けば再びにこやかに笑う七緒さん。

「半年後にね、弟が編入するんだ。

他の貴族には任せられないからね、一番信頼出来る君に弟を任せたいと思っているんだ。護衛につけてた子は使用人として重要な位置にいる子だから、連れて行けないから寮から一人で通うことなっちゃってね。

あまりあの子を一人にしたくはないんだ。一回誘拐されかけてさ、色々事情がある子だから今は王城の騎士舎の医務室に通いっぱなしでね、周りには年上ばかりなんだ。だから同じ年の友達がいなくてね、もし良ければなんだけど夏休み翡翠家で過ごしてくれないかな」

代々宰相をしている翡翠家で、夏休みを過ごして欲しいだと……⁉︎

「何それ、面白そうなんですけど」

思わず思ったことを口に出してしまった。普通なら怒りを買うのだが、翡翠家の人はむしろ大体のことは面白がっていることが多い。

「君は相変わらず、目立つことが嫌いみたいなのに好奇心には勝てないようだね」

クスクスと笑いながら、微笑ましいものを見る目で僕を見た。

だが、その表情は一変して、見たことがないくらい無表情でこう言った。

「弟には事情があってね、初めての友人になるかもしれない人に依存するかもしれない。それでも君は会ってくれるかい?」

まるで先を見透かすようにそう言った七緒さんの表情を見て、俺は思わず唾を飲み込んだ。

そんな俺にトドメを刺すように、

「好奇心だけで僕達の家に来ると、その好奇心で自分を殺すことになるかもしれない。頼んだのに、こう言うのはおかしいかもしれないけど良く考えて決めてね、無理に頼まれてくれることはないからさ」

そんな忠告をされても、何故か会わなければいけないような気がした。

だから、僕はそれにのまれる覚悟をして七緒さんにこう言った。

「その申し出、引き受けさせて頂きます。七緒さんの弟さんなんですから、悪い子ではないのでしょうから断る理由など俺にはありません」

依存されるなど光栄なことだ。俺はそう考えながら、そう言葉にした。

俺が嫌いなのは、自分は偉いと天狗になっている貴族達だ。

依存されることなど、厄介ごとすらにも含まれない。

まあ、自分は偉いと天狗になっている貴族達に依存されたら困るがな。

「むしろ良い弟過ぎて困ってるよ。努力家で、でも何処かのんびり屋な優しい弟なんだ。君が会ってくれると言ってくれたから助かったよ。僕は学園内で過ごせることが出来ないから、常に味方をして側で守ってあげることが出来ない。まあ、僕が守らなくても切り抜けてしまう強さを弟は持っているんだけどね。

それでも、兄としてはとても心配なんだ。その強さは時に弟自身を傷つけることがあるかもしれない。だから、助かったよ。君なら安心して弟を任せられるから。明日、迎えに来るね」

安堵したような笑みを浮かべながら七緒さんはそう言った。


次の日、俺は王城の騎士が訓練をする場に連れてかれ、彼と出会った。

風は何を思ったか、ふわりと彼がつけていた眼帯を上手く外し、俺の方へと飛ばしてきたものだから条件反射でその眼帯を掴み取る。

隣には七緒さんがいて、小声で、

「あの子が僕の弟だよ」

と、そう教えてくれた。

それと同時に眼帯をつけていた彼は振り返り、俺のことを睫毛が長く、大きな目がただただ何も言わず見つめていた。

翡翠色の綺麗な瞳。

ふわふわした癖毛な銀髪。

まるで女の子のような容姿をし、小柄で俺と頭一個分違う身長で小柄な体格をした彼は、にこりと綺麗に微笑んでまるで宙を歩くようにこちらへと来た。

「七緒お兄様、ご友人ですか?」

にっこりと笑ってそう言う彼は、俺と同性とは思えないなと思った。

ふよふよと浮いたままでいる彼に、七緒さんもにっこりと微笑んで、

「そうだね、友人だよ。僕の後輩でね、雪未と同じ年で永丘静夜くん。来年、あの学園に編入するでしょう? 少しでも君の理解者がいた方が良いと思って、信頼出来る子を連れて来たんだ。夏休みいっぱい、雪未と過ごしてもらうから仲良くしてね?

静夜くん、この子がさっきも言った通り僕の弟、翡翠雪未だよ」

そんな七緒さんの言葉に、雪未と呼ばれた彼は呆然としていたから、

「もしかして、七緒さん。説明をしていなかったのですか?」

そう聞いてみれば、

「サプライズしたくて!」

そう七緒さんはそう言った。

七緒さんは、そう言うお茶目な部分があるからなあと遠い目をしながらそう考えていれば、肩に少し重みを感じ、少し上を顔を向ければ……。

にっこりと笑う、雪未と呼ばれた彼の顔が目の前にあった。

「よろしくお願いしますね、静夜くん」

同性だと言うのに、目の前で見た彼の笑顔は綺麗だとまたそう思った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


九歳と四ヶ月になった時、七緒お兄様は静夜くんと言う男の子を連れてきた。

身長が僕と、頭一個分違って。将来は男前になるだろう顔つきをした男の子だった。

しかも、優しそうだから将来モテそうだなともそう思った。




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