表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

6.ネコ彼女、レジに並ぶ

 レジに並ぶ列の中、僕とイハは前の前の前の前の前の前の前の人がレジを通過するのをぼんやり見ていました。

「だーりん、愛をささやいてください」

 そして、イハは今日だっていつもどおりおかしい。

「……イハ、ここはどこですか?」

「スーパーの中?」

「スーパーの中です、間違いないです。僕が言いたいことはわかりますか?」

「ん」

 理解を示された。

「だーりん、愛してる。イハちゃん、身も心も捧げたの。身も。身も」

「おいそこの露出狂、なんで身ばっか強調した」

「女性の愛はカネの愛、男性の愛はニクの愛と聞いた」

「誰ですか、そんなモテない童貞みたいな愛を説いたのは……」

 それはさておいて。

「表で言うことではないので自重してください、ということです。先に言えという意味ではないですよ」

「そうなの?」

「そうです。街中で愛を説かれても周りの人は困るでしょう?」

「ベッドでささやくもの?」

「……まあ、そうですね」

「でも、遊園地や公園でささやいてる人もいる」

「迷惑とも言いがたいですが……」

「ベッドと遊園地と公園の共通点。つまり、スる場所なら――」

「おいそこの露出狂、だから表でそういうこと言うんじゃねえつってんだよ」

 ぺち、と軽くはたく。

 レジに並ぶ列はまだまだ先が長い。

「きちんと、ニクの愛で間違ってないと思うの」

「話を広げるんじゃありません」

 そして、表情は一切変わらない。

「たまに不安になるの」

「何がですか?」

「女性の愛と男性の愛が違うなら、私の愛はあなたに届いていないんじゃないかって」

「そんなのは僕も同じですよ。男性の愛と女性の愛が違うのなら、僕の愛はイハに届いていないんじゃないかと不安になります」

「だーりんは、愛が違うと思う?」

「わかりません」

 嘘はふさわしくない。だから、迷いなく首を横に振ります。

「ただ、僕はイハのことが好きです。もし、僕の愛とイハの愛が違ったとしても、僕は僕なりにイハを愛しています」

「私も愛してる。あなたの愛がたとえ私と違うものだとしても、それでもこの気持ちは『愛』だと思うの」

 ぽんぽん、とイハの頭を撫でる。

 すっかりクセになったこのしぐさも、きっと愛の一部なのだろうと思います。

「だーりん、私の愛をあなたの愛で満たしてくれますか?」

「ええ、安心してください。それを保証するのが男の愛ですから」

 少々クサいかな、と思いながら微笑んでみせた。

「ん」

 声はいつもどおり。

 抑揚も薄く、発音も一字。

 けれども――珍しく、珍しく、イハは小さく微笑んでいました。そして、

「え?」

 イハがたたたっと走り去っていく。

「え?」

 なんか両手いっぱいにアイスのハコを持って来ました。

「だーりん、愛してる。イハちゃん、身も心も捧げたの。心も。心も」

「おいそこの露出狂、心、強調すりゃ何しても許されるってわけじゃねえぞ。なんだこれ」

「私、だーりんの甲斐性という愛にとても期待している。保証するのが男の愛と言ってくれたから」

「意味が違います」

 カネの愛。なるほど、少しだけ理解できました。

「……お願い聞いてくれたら、夜にイハを好きにしていいの」

 ニクの愛。なるほど、少しだけ理解できてしまいました。

「……絶対ですよ?」

ひとまず二人の物語はここでおしまいです。

あとは、暇を見てもう1話くらい書けたらいいな、という感じでしょうか。


読了ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ